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満天の星

今日も親に無視される。
姉は、もう成人して家を離れ
年子の兄を母は溺愛していた。

私は、ある程度なんでも出来た。
勉強もスポーツも……。
兄が出来ないことを私が簡単にやるから
気に食わなかったみたいで
母はいつも私を無視した。
父は仕事でほとんど家に帰らなかった。

死にたかった。
公立進学校のトップになっても
成績表で良い結果を出しても
馬鹿な兄の事を褒める母。
私は、産まれて一度も褒められたことがなかった。

家には居場所がなかった。
今日も夜になると空を見る。

「あ、居た。」
家の外で煙草を吸いながら空を見る私を見て
幼なじみはそう呟いた。
「おいで。」
そういうと、私を自転車の後ろに乗せて
どこかに向かった。

家からだいぶ離れた私の高校の近所の
最近出来たばかりのアパートの前に着き
降りるように言われた。

「ここは?」
「俺とお前の家。」

そっと手を引いて歩く幼なじみ。

アパートの3階の角に着くと
鍵を開け中に入ることを促された。

携帯を耳にあてた幼なじみを横目に
部屋に入ると
「はい。代わって。」
携帯を渡された私は電話に出た。
「もしもし」
「朝陽か?」
「おとうさん……」
なんでという顔で幼なじみを見ると耳から父の声が
「朔から言われてな。お前が母さんから無視され
ご飯も食べず学校も行かず公園かバイトばかりしてるって」
「母さんは、今もあいつのことばかりか?」
「うん。」
「朔がな、お前が夜になると一人で
外に居ることを心配して部屋を借りてくれたんだ。
父さんはな、お前に笑ってて欲しい。
父さんと暮らすのは多分難しい。見捨てるように
見えてしまったらすまない。
だがな、朔の優しさに甘えなさい。
お前を一人にはしたくない。」

ああ、父は母との関係も修復するのが難しいから
私を外に出すのか。

「わかった。」
電話が切れ幼なじみに携帯を返した。
「付き合ってもない女のためによくここまでするね?」
笑いながら言うと
「付き合ってないからこそしてやりたかったんだよ。」

そう言われパジャマを渡され
その日は寝た。
子供の頃以来一緒に寝た。
でも、嫌な気はしなかった。

次の日の朝鍵を渡され
バイト終わったら帰ってこいよ。
行ってらっしゃい。と言われ
すごく嬉しかった。

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