見出し画像

「まちのほんだな」のこと、続き。そしてブック券のこと。

 これが🔲ブック券です。四角ブックと読みます。これ以外に三角ブック、丸ブックがあります。本が育てる街・高円寺という活動の一環で地域通貨として考えたものです。たった一度の実験で終わった、幻の地域通貨ですが、前回書いたnoteを読んでメンバーだった有志舎の永滝さんが、このブック券を使ってのまちのほんだなの運営方法を助言してくれました。それをヒントに、私なりにブック復活の道を探ってみました。

 海外の先行事例を受け、日本でも多くの地域通貨の発行が行われましたが、その多くが失敗したと言って好いかと思います。失敗の原因を探るうちに、本と本の交換の難しさと同じような理由がそこにはあるように思いました。

 本の交換は、対面で行う「本の交換市」が始まりでした。「高円寺フェス」のイベントの一環として行った初回は多くの人でにぎわい、手ごたえを感じましたが、二回目以降は宣伝力の弱さとともに新味も薄れていき、賑わいが初回を超えることはありませんでした。メンバー総出で什器を設営し、2000冊以上の本を並べ、店番もして撤収を行う、というの身体的にはなかなかハードで、交換という結果の見えにくいロンドは心にも負担となり、そこで一箱古本市ならぬ、一箱交換市にやり方を変えてみました。知り合いに声をかけ一箱店主になってもらい、角田光代さんにもお願いし、蔵書を送っていただきました。箱を開けると労いの手紙とお菓子があり、さらに全ての本に本の紹介が書かれた自筆の短冊まで入っており「えらくなる人は違うは!」と感嘆の言葉が思わず漏れました。角田作品が多くの人の心を打つ秘訣を教えていただきました。

 回を重ねてわかってきたのは、モノとモノとの交換は、その人の力量によって、得られるモノの質や量が違ってくる、ということです。たとえ悪意はなくとも、言葉が巧みで、声の大きい、または腕力のありそうな、力の強い人が、多くの場合有利なのです。「まあ、いいか」と心の中でつぶやき、心優しい人はあまり読みたくない本でも、笑顔で大切な本を手渡してしまう、そんな場面を何度か見ました。取引きというのがある時代までは、命のやりとりにも似ていた、というのが納得できました。お金は、それを得る力はともかく、売買の場に置いては、人を平等にするのだな、と感じました。そこで、本のやりとりに限定した地域通貨を作ってみようと、話は最初に戻り、ブック券誕生に至ります。

 受付で持って来た本をブック券に交換します。本が1冊なら四角ブック、3冊で丸ブック、5冊で三角ブック、10冊以上で缶バッジ型ブック。会場でそのブックを使い、好きな本を手に入れます。丸ブックなら三冊ゲット、というように。本と本の間にブック券を挟むことで、平等な交換を目指しました。

 地域通貨は限られた地域で、コミュニティをつくる目的や、ボランティア活動の推進など、その多くは人の善意を前提に発行されます。しかし、使える場所が少なかったり、貰える手段がわかりにくかったり、という理由で、使い勝手の良い日本銀行券に負けて行ったのだと思われます。ブック券はそこに行くはるか前の、実験段階で力尽きてしまいました。そこでブック券を復活させる方法を考えています。まずは当店を実験場にして模索していきます。

以下が新しいブック券の使い方になります。

ブックの目的 ・本を通したコミュニティの形成 ・お金を介さないで本を手に入れる仕組みを作る 

ブックを手に入れるには ・コクテイルに来店する(来店1度で四角ブック) ・コクテイルから本を購入(通販可) ・コクテイルが発行した読書カードに読んだ本を書き込んでくる(本は図書館で借りても、新刊書店や他の古書店で購入したものでも、なんでも良い。読んだ本を記入し、それを店の人間に見せてくれれば一冊につき四角ブックを) ・まちのほんだなボランティア(棚の掃除など。1時間働いて四角ブック) ・本を寄贈する(一冊で四角ブック。上限を設けるかも)

ブックの使い方 ・コクテイル横と二階にある「まちのほんだな」で使えます。本の後ろに「四角ブック」「丸ブック」「三角ブック」などブックの単位が書いてあり、同じ価値のブックで交換できます。交換するさいは店主もしくはボランティアの方に本とブックを渡してください。

・コクテイルの負担 ・ブックの発行量が増えるほど、棚の本が交換されるので、本を供給し続けなくてはいけない。 ・ストック用の倉庫を近所に借りる費用 ・寄贈してくださる本が多いと輸送量がかかる ・ブック券の発行の印刷費など

・コクテイルのメリット ・負担分は寄贈本のなかから売れる本を販売し充当する ・本を読む人が増える(結果的に本が売れるかも) ・店に足を運んでもらう切っ掛けになる ・なんか面白いことやっていると思ってもらえる(たぶん)

本と交換出来る地域通貨というのは、新しいようで、私としてはかつてあった兌換紙幣(いつでも金と交換できる)のようなイメージで、古臭くてとても好きです。至らないところも沢山あると思うので、前回のようのご意見をいただければ幸いです。皆様のご意見には全て目を通しております。個々にお答えするのではなく、実際に参考にさせていただくことでお返事とさせていただきます。

また、私が想定しているのは、紙ベースですが、たぶん電子の技術を使うことで、スマートかつ簡単に行くことも多いかと思います。そのような知恵もいただければ幸いです。 cocktaikbooks@live.jp  までメールをください。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?