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FRUITPUNCH AUDIOMIDNIGHT 10;夢芝居

 おばんでございます、カクテルです。今夜も土足で恐縮です。#010、

ポッドキャストFRUITPUNCH AUDIO MIDNIGHTは不定期週末更新です。


 ウチの近所はですね、一般の方の交通マナーが悪いんでございます。中でも大きな通りに合流する際に必ず停止線を越えて横断歩道上をクルマで遮る女性がいらっしゃるんですね。

この方ふつうに誠実そうといいますかご立派ないでたちではありますが、歩行者を止めてしまっておきながら『スン』という表情をお作りになるんですね、毎回。迷惑アピールをするおばさまおじさまたちが視線アピールしているのに対し、彼らがそこにいないかのような顔を作るのです。

 それはわたくしにあるご老人を思い出させました。わたくしが若い頃住んでおりましたところには近くに放棄され使われなくなった高速の出入口がありまして、その下に住んでいたご老人がいたのですね。高速道路の下に簡易的な小屋を作り、石油ストーブや発電機、テレビまで持ち込んでいらっしゃいました。

ご老人の瞳はいつも宙を見つめ澱んでおり、無感情に見えました。髭は伸び放題で仙人のようでもあります。わたくし思ったものです、子供時代はどんなふうだったのだろう?ストーブを手に入れた時はある意志のもとに動いたはず、テレビを見て笑うことはあるのでしょうかーーなどなど…

ある日徘徊するご老人に街で出会いました。いつものように死んだ魚のような目をして歩いていらっしゃるーー。

と、わたくしの停めた自転車のハンドルにかけていたスーパーの買い物袋をヒョイっと手に取って行かれたのですね。豚バラやら、大好きなロッテのチョコパイが入っていたと記憶しています。

その瞬間ーー買い物袋を引っ掛ける刹那、(フンフンフ~ン♪、ワタシは何にも存じません)と、可愛らしく目をクリッと、一瞬だけ上に向けたトボけた表情をお作りになったのです!そこには確実に『意志』があったーー。

なんとも愛らしく、且つ深みある年輪を感じさせるその仕草ーー。一瞬です、すでに元の無表情に戻って去って行かれます。ゲームセンターの中から一部始終を見ていたのですが、わたくしのような若輩者は敬服し、見送ることしかできませんでした…

 ーー考えてみますれば、わたくしたちも日々、シレッと演技をしておるのだな、と自問するばかりでございます。

何年か前の事になりますが、山の麓の古神社にて手を合わせた際、境内にバックパッカーっぽいアメリカ人女性がおられました。わたくしその視線を意識して、普段よりも日本人らしく、洗練されたスタイルを意識して拝んだのです。鳥居をくぐって出て行く時なども礼のあとに上を見上げてタメを作ったりなんかしてーー。正直多少ハンサムげな気分でいたかと記憶していますーー。

ーー嗚呼情けない!しょせんこの世は夢芝居、わたくしカクテル、小さな一人の人間でございます。

という事で今夜も土足で失礼致します。ポッドキャストFRUITPUNCH AUDIO MIDNIGHT、どうぞよろしくお願い致します。■

とにかくやらないので、何でもいいから雑多に積んで行こうじゃないかと決めました。天赦日に。