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ゲー選かけ流しvol.5 『アライアンス・アライブ HD Remastered』

ゲームの選評を気の向くままにチビチビとかけ流す、ぬるま湯スペース。
今回は『アライアンス・アライブ HD Remaster』(以降、アラアラ)。

アラアラを今になって取り上げた理由は、先日シナリオを担当した村山吉隆氏の訃報が飛び込んできたため。この場を借りて村山氏の冥福をお祈りすると共に、彼がシナリオを手掛けた本作の魅力について掘り下げていきたい。

村山氏の代表作と言えば『幻想水滸伝』に
なるだろうが、アラアラも名作であったと、
この場を借りて多くの人に伝えたい。

<『アライアンス・アライブ』プレイ歴>
・原作3DS版を3周クリア
・HD Remastered版はPS4版で3周クリア、プラチナトロフィー獲得済み


明確なヒエラルキーが存在する世界で生きる人々

アラアラの世界には、人間 < 妖魔 < 魔族 というヒエラルキーが存在する。
世界中に魔物が跋扈し、それらを統べる魔王が居るファンタジーRPGは良くあるが、その手の作品では人間と魔物がそれぞれの生活圏を持って共存するパターンが殆ど。一方、アラアラの世界では人間は妖魔に支配される立場にあり、その妖魔も魔族に支配されている、という珍しい世界設定で物語が描かれる。

バルバローザのように、人間に協力的な妖魔も居る。

魔王が玉座で鎮座あそばされていて、攻め込む気があるのかどうかわからないRPGや、黒幕がヤンチャし過ぎて人類が滅亡寸前まで荒廃した設定はしばしば見られるものの、人間全体が被支配階級として一定の秩序の中で生きているという世界設定は、筆者は初めて体験した。

そんな世界においても自分の価値観にまっすぐ生きる人間達。
人間と魔族の中間管理職的な立場をものともせず両者への理解を示す妖魔達。
人間に興味を示し、共にフラットに生きる関係性を求める魔族達。
彼ら多彩なキャラクター達の運命が交錯するストーリーが本作の見どころの一つとなっている。

軽いノリの性格が目立つレンツォ。決める時は決める。

キャラの個性が際立つ群像劇

村山氏は『幻想水滸伝』シリーズに代表される群像劇を描くシナリオメイキングに定評があった。アラアラでも彼の持ち味は如何なく発揮されており、メインとなるキャラクター達はそれぞれ個性豊か。

印術ギルドのジーンは思慮深い行動で、
魔族とも渡り合える人物。直情的な傭兵
レイチェルとの凸凹コンビ感が微笑ましい。

物語冒頭で視力を失ってしまうアーシェラと、彼女を支えるガリルのコンビは、妖魔に支配される人間達の中でも希望を捨てないたくましさを感じさせる。魔族でありながら人間に強い興味を持つビビアンに振り回される執事イグナスは、徐々にビビアンに感化されて人間への見方を変化していく。

淀んだ空に満ちた雨の世界に生きるアーシェラ。
ガリルは彼女に青い空を見せてあげる事ができるのか。

総勢12名のメインキャラクター達は一人一人個性が立っており、クセは有っても嫌みの無い性格の持ち主。シーンごとに操作するキャラが変化していく中、メインキャラクターへの好感が増していく作りになっていた。筆者が本作をクリアする頃には、どのキャラクターにも愛着が湧いていて、別れが名残惜しいと感じていた。本作を遊べば、群像劇の魅力を存分に味わう事ができる。

人間に興味を示す珍しい魔族、ビビアンと執事
イグナス。相手が魔族でも臆する事のない
ティギーは、少女でありながら教授である。

ハイテンポで遊びやすいバトルシステム

アラアラはフリューが3DSで最初に手掛けたRPG『レジェンドオブレガシー』の覚醒システムを踏襲しつつ、テンポの良さ・遊びやすさに強くフォーカスしたバトルシステムに仕上げている。

遊びやすいゲームバランスに派手めな演出が光る
戦闘シーン。4倍速戦闘と相まって非常に楽しい。

『レジェンドオブレガシー』は、ポジション(陣形)とロール(役割)が明確に分かれているゲームバランスであった。そのゲームデザインを無視してプレイヤーが自由にパーティ育成を行うとら後半クリアできずハマりかねない程にキツイ目に遭うという事を意味する。

一方のアラアラは、プレイヤーの育成方針の自由度が高く、全員をアタッカー寄りに育てても、ヒーラー・ジャマー等バランス良く編成しても割と何とかなるという塩梅に仕上がっている。

悪く言えば他のJRPGとの差別化に乏しい感じにはなったけれど、ラフに遊べる難易度に加え、4倍速戦闘のテンポの良さも相まって、戦闘を重ねてパーティーを少しずつ育成していく楽しさを存分に味わう事ができる。

サガシリーズの閃きに該当する「覚醒」は、
新技を閃いた時だけ倍速を止める事ができる設定も。
痒い所に手が届くオプションが嬉しい。

主にパッシブスキルでキャラクターを強化できるタレントシステムもあり、戦闘が苦にならない設計となっている。冒険が進む程にできる事が増えていく感覚はJRPGの特長そのもので、この辺りのツボを押さえたシステムが嬉しい。

プレイヤーによって十人十色のギルドタワーシステム

アラアラの世界には、ガリル達メインキャラクターの他にも様々な立場と境遇で懸命に生きているキャラクター達が多数存在する。
そういったキャラクター達と同盟(アライアンス)を結び、彼らの保有するスキルを反映したギルドタワーを建設する事で、ガリル達の冒険を強力にサポートする事ができる。

ギルドは印術・鍛冶・図書・諜報・戦術の5種に分かれており、ギルドの主要機能を司るギルドタワーを建設、近隣のタワーとリンクさせる事で、メインキャラ達の冒険や戦闘をサポートしてくれるようになる。

広い世界で様々な人物と「つながっている」という
実感を得られるギルドタワーシステム。
特に戦闘方面へのサポートが嬉しいし楽しい。

ガリル達と同盟を結び、ギルドに派遣できる人数には限りがあるため、どのギルドに人材を優先して派遣し、ギルドごとの恩恵を受けるかについてはプレイヤー自身の好みに委ねられる。

2周目以降ではギルドに勧誘できる人物が増える事もあり、さらにギルドタワーの派遣についてプレイヤーのポリシーが色濃く反映される事になる。

ガリル達の拠点となる方舟。様々な種族の
キャラクター達と協力関係を築く事で、
船内はとてもカオスな状態に。

おわりに

3DS時代にフリューから発売されたRPG、『アライアンスアライブ』が、HD Remasteredとしてよみがえった。村山氏が手掛けたアツいシナリオと、プレイヤーの自由度を反映できるRPG部分が丁度良く絡み合い、非常に遊びやすいゲームに仕上がっている。

元々が3DSのゲームで、高精細なポリゴンモデルでは無かったため、リマスターによる満足感は控えめ。とは言え、新しいハードでも遊べるようになったという環境面での恩恵はやはり大きい。

推しのマチルダさんをHD画質で見られただけで
筆者個人はHD Remasteredを評価します。しますとも。

本記事で興味を持った人がアラアラを遊んでくれるならこれ以上嬉しい事はないし、『百英雄伝』の発売間近で旅立ってしまった村山氏への何よりの手向けになると信じている。JRPG史に名を残す名作群を産み落とした偉大なるクリエイターに、いちゲーマーとしてこの記事を捧げたい。


本作の選評はここまで。
急遽予定を変えて仕上げたので後々手直ししたくなるかもしれないけれど、初期衝動に任せて書くのも悪くないと思った次第。

次回もよろしくお願いします。

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