見出し画像

日向正宗に心奪われた日【どうする家康展】

現在放送されている大河ドラマ『どうする家康』。今回はその特別展で、家康に関する絵や文書、手紙、芸術品……などさまざまな物が集められました。
ということで、今回は刀剣がメインの展示ではありませんが、刀剣乱舞にも登場する日向正宗とソハヤノツルキの展示があり、さらには刀剣乱舞コラボもあるとのことで気にならずにはいられません。

なかでも私が行こうと決めた一番の理由は、SNSで日向正宗の輝きが絶賛されていたのを見たから。それを見て「きらきらしている刀ってたくさんあると思うけど、なにが違うんだろう」と思いました。それを確かめるべく、私は三井記念美術館へと足を運んだのであります……!

三井記念美術館

展示が開かれたのは日本橋にある三井記念美術館。私は今回が初めての来館でした。
三井記念美術館は、建物自体が重要文化財に指定されている歴史のある建造物です。重厚感があり洋風な外観がかっこよくて、心がときめきました……! 現代ではもうあまり見られない建築様式ですよね。古いものなのに、どうしてこんなにかっこいいんだろう。素敵だなぁ。
美術館は本館(重要文化財)に入っていますが、入り口は本館に隣接した高層ビル(日本橋三井タワー)にあります。これ、最初はどんな構造になっているのか分からなかったのですが、本館とビルがくっついているみたいです。ビルのほうはカフェやお店が入っていてお洒落な雰囲気。

展示に行く前に、気になっていたカフェに入ってみることにしました。それがこちら、『マンダリン オリエンタル 東京』。

フォロワーさんがこちらの『KUMO』ケーキを紹介していたのを見て、三井記念美術館に来たら覗いてみようと思っていたのです。
KUMOケーキはその名の如く、雲の形をしたケーキ。かなり人気のようなので完売を覚悟していきましたが、平日の午前中だったおかげか食べることが出来ました。KUMOケーキは写真で見るよりも大きくてボリュームがあります。味は季節によって変わるみたいですが、私はピスタチオベリーを頂きました。上品な味で、まさに自分へのご褒美にぴったりです。

『KUMO』ケーキ

お腹の空腹を満たして心を落ち着かせたら、刀に会う準備は万端です……!それでは、美術館へ向かいましょう!

刀剣乱舞コラボのパネル
エレベーターに続く階段の手前にありました

美術館のフロアへはエレベーターを使って行きます。ここからビルの雰囲気とは変わって、ちょっと洋風レトロな内装になっていきます。フロアに着いて美術館へと入っていくと、落ち着いていて上品な空間! なんと表現したらいいのか、、、アンティークっぽいといえば何となく伝わるのでしょうか。さすが重要文化財の美術館、内装も本当に素晴らしい建物です。建築のことはさっぱりな私ですが、壁とかがかっこよくてきょろきょろしてしまいました。空間が良いと展示物の良さがより際立ちますね。


脇指 無銘貞宗

トップバッターは貞宗。入って目の前です! 誰も彼を避けては通らないでしょうってくらいの場所にいました。笑 私としては一番初めに刀剣が迎えてくれるのはとても嬉しいです。
こちらは『身幅広く、浅く反りのついた大振りな姿(キャプションより引用)』の脇差。これは南北朝時代の脇指の典型的な姿らしいです。私はまだ、脇指の時代による姿の変遷を覚えられていないのでこの説明は速攻メモしました。
太刀と刀は時代ごとの変化が分かりやすいですけど、脇指と短刀って分かりにくいなぁって私は思います。脇指はサイズが色々ありすぎるし、逆に短刀は長さも反りもそこまでバリエーションが無いですよね。(私にそう見えているだけ?)
脇指と短刀も時代ごとの変化、知りたい……。勉強しよう。


短刀 無銘正宗(名物 日向正宗)

日向正宗はなんと展示室を一室設けられていました。小さい部屋とはいえ、一振りのために一部屋使うというのはすごい待遇ですね。

日向正宗は石田三成が所持していたことで知られていますが、来歴を簡単にまとめるとこんな感じです。

豊臣秀吉
石田三成(下賜)
福原長堯(石田三成の娘婿)
水野勝成(大垣城の戦いにて福原長堯より奪い取る)
徳川頼宣(献上)
→以降同家に伝来
(参考:https://www.touken-world.jp/search-noted-sword/tengasansaku/54638/

歴史にあまり詳しくない私でも知っているレベルの人物の名前があり、個人的にはかなり想像しやすい来歴です。さすがは正宗の刀、有名どころを通ってきていますね。

そして今回私が一番楽しみにしていた日向正宗の「輝き」。その輝きとはどんなものなのか、とどきどきしながら展示ケースに歩み寄りました。
するともう…………、すっっごかった……!!!!本当に肌がきらきらと輝いていて、吸い込まれそうになりました。
この「きらきら」というのは、詳しくいうと沸(にえ)の輝きになります。沸とは鉄の粒子のこと。肉眼で捉えることが出来るものを「沸」、肉眼では見えないほど細かいものを「匂い」と表現します。
沸は光に当てる反射してきらきらと輝くのですが、日向正宗はそれが地鉄全体に厚く出ているため輝いて見えるのですね。
日向正宗の地鉄があまりに綺麗で、(刀はどれも美しいと思っているけれども)こんなに綺麗な刀があるんだなぁと感動しました。日向正宗から先の展示になかなか進めず、何回も日向正宗の元へ戻ってしまうくらいに心を掴まれてしまいました。

刀 銘国広(号 加藤国広)

加藤国広の「加藤」は、加藤清正のこと。こちらの刀は加藤清正の指料だったため、加藤国広の名がつけられたようです。
この刀、刃文が面白くて!鋒側と茎側で刃文が全然違うんです。

刃文(刃取り)のメモ
そこまで正確では無いですが、雰囲気だけでも手元に残しておきたくて書き残しました。ご参考までに。


茎側~刀身半ばまでは割と大人しい刃文なのに対して、刀身半ば~鋒手前は刃文が大きく動いています。特に物打ち付近の刃文の存在感が大きいですね。これは刃文の種類でいうと何になるでしょうか。。おそらく複数の刃文が混ざっているような気がしますが、私にはよく分かりませんでした……。

姿は大きくてどっしりがっしりという感じで、個人的には「まさに堀川国広ぽい」という印象です。

太刀 無銘光世 切付銘 妙純伝持ソハヤノツルキウツスナリ

普段は静岡の久能山東照宮にあるソハヤノツルキウツスナリ。以前静岡に行く機会があったのですが、久能山東照宮まで足を伸ばせなかったので、今回東京に来てくれたのはかなり嬉しかったです。

さて、この「ソハヤノツルキ」とは坂上田村麻呂が所持していたとされる「楚葉矢(そはや)の剣」のこと。本作はそれを写した刀と言われています。
作者は、あの天下五剣に数えられる「大典太光世」を作刀した光世と伝えられています。が、その真相は定かではありません。今回の展示でも『古来作者は筑後国三池の典太光世と極められてきたが、作風から鎌倉時代の後代の作と見られる』とありました。つまり現代では、この刀は光世の作では無いという説の方が強いということなんでしょうね。鑑定って難しいんだなぁ……。

姿はとても堂々としていて、大きいです。身幅が広くて反りも深いですが、鋒は小さめでつまっている感じがします。磨上されているせいあるのでしょうが、想像していたよりも短いという印象を受けました。
日向正宗の地鉄と比べると、それぞれの特徴がよく分かります。ソハヤノツルキウツスナリは日向正宗のような地沸は無いのでぴかぴかきらきら輝いてる美しさとは少し違います。きらびやかというよりも、もっと男らしいというか質朴な感じのかっこよさを感じました。
この場合どちらが良いという話ではなくて「違う」ということが「良い」んですよね。それが刀剣の面白さ、だと思います…!

そしてこの刀を見たとき、すごく家康っぽいな~!と思いました。家康の持ち物って一見地味に見えるけどよく見るとすごく凝っている、みたいな物が多い気がします。言うなれば「わびさび」系? ソハヤノツルキウツスナリもそれに通じるところがある気がするんです。
ソハヤノツルキウツスナリは刃文も落ち着いていますし割とシンプルな刀ですよね。決して派手ではないんだけど、ちゃんと芯が通った強さがある刀だと私は感じます。それがとても家康らしいなって。
この刀を観ると家康の嗜好が想像できる気がします。


おわりに

ここでは刀剣に絞って書かせて頂きましたが、他にも面白い物や素晴らしい物がたくさんありました。家康ってやっぱりすごい人なんだなぁ。

今回の展示で一番印象に残ったのは、私としてはやはり日向正宗です。あの地沸の衝撃がとんでもなかったですね。
あまりに良くて、家に帰ってからもしばらくぼーっとしてしまうくらいでした。笑 数日経っても心を奪われたままで、日向正宗ロスが酷かったです……。ここまでロスになった刀はあまり無いので、私はかなり日向正宗に魅せられてしまったんだと思います。本当に綺麗だった……。また会いに行きたいです。
そしていつかソハヤノツルキウツスナリも久能山東照宮で会えたらいいな、と思います。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?