応援されているのは栗原陵矢だけじゃない

コブ山田です。

ようこそいらっしゃいました。

今回は、プロ野球福岡ソフトバンクホークス栗原陵矢選手の応援歌について、記します。

2024年06月。今年もやってきましたプロ野球セ・パ交流戦!
そのうち、バンテリンドームナゴヤで開催された試合はradikoで聞いていたことが多かったのですが、その時に思ったことがあります。

04日(火)、福岡ソフトバンクホークス戦。鳴り物応援は2018年以来であり、楽しみにしていました。
そんな中で引っかかった点がありました。

「こんな曲だったか?」

と思ってしまったのでした。

バッターは栗原陵矢。福岡ソフトバンクで背番号24を着用しています。
と言っても、ルーキーイヤーの2015年からは31を着用していて、2022年から24に変更していました。

福岡ソフトバンクは支配下登録の選手には早期から専用の応援歌を作成することが多く、栗原もその通り専用曲が当てられました。
応援歌メドレー動画には入っているので、聞いているうちに自然と覚えます。

ただ、実は2023年に02回、福岡PayPayドームに観に行っていて、かつ両方の試合で栗原はスタメン起用されていたのに、同年から応援歌が変わっていたことに気づきませんでした。
改めて落ち着いてラジオで聞き、その変化に気づいたのでした。

もともとの歌詞は、

「溢れる闘志を さあ見せてやれ 鮮烈な打球を 打ち飛ばせ」

というものでした。盛り上がりにくい印象はあります。よく言うと落ち着いた曲調です。
そもそもこの曲は、2002年ドラフト5巡目指名で福岡ダイエーに入団した大野隆治に演奏されていた曲を栗原に当てたものでした。
そのイメージが残っていただけに、違ったメロディが流れてきて気づいたときにはいろいろな考えが頭の中を巡りました。

前述の曲は2022年シーズンをもってお蔵入りし(鳴り物応援はできなかったので実質2019年まで)、2023年から新しい日々が始まる、というタイミングでこの曲が発表され、使用開始となったのでした。

「輝く時だ 後世に語り継がれる 伝説を今から 作れよ栗原」

私はこう思いました。

「これは栗原陵矢だけに収まる曲じゃない、一大決心した人に対しての応援歌でもある」

と。2023年、中日石川昂弥の応援歌に対しても目標に向かって頑張る人に向けられると思ったのですが、それと似ています。

ただ、似てはいますが、石川昂弥の応援歌を聞いて抱いた感情とは異なる点はあります。

福岡ソフトバンク栗原陵矢。2021年には侍ジャパンに選出され東京オリンピックに出場。
2022年、背番号を24に変更して開幕戦に5番レフトで出場します。
その後連勝が続いていく好調なチーム状況にありながら、03月30日(水)ZOZOマリンスタジアムでの守備中に交錯し、左ひざを負傷し、同年のシーズンは入院・リハビリで月日が過ぎ、試合の出場ができませんでした。
手術も複数回あったようで、本当に壮絶な日々だったことが読み取れます。

とりわけ選手層が厚い福岡ソフトバンクホークスです。少々のできごとですぐに自分のポジションを奪われかねません。
高卒プロ入りとは言えもう08年過ごしており、徐々に若手から中堅に足を踏み入れていく時期です。
それでも不安になったダメだと言っても簡単な話でもありません。

そんな状況下で、年が明けた2023年。栗原の復帰が実現しました。これを受け、福岡ソフトバンクホークス応援団(全国に支部があり、名称も多様なので以下応援団で統一します)は栗原の応援歌を新曲に変更することを決めたのでした。
そうして、まさにこの負傷からの復帰を後押しする歌詞の曲ができたのでした。

私は、特に、

「今から」

という一節が大好きです。

前述したように、栗原は若手選手だと思ってもらえなくなりつつあります。同学年の選手でも、徐々にプロ野球選手を続けることができなくなる例が増えてきます。
それでも、応援団は今からという言葉を盛り込み、大合唱される光景を巻き起こしました。確かに何もできなかった時期はあったけど、これからは栗原次第でどうにでもできる、というメッセージです。

「過去は変えられないが、未来は変えられる(正確には他人と自分の概念も入りますが省略します)」
「今日の自分が最も若い」

という言葉がありますが、それを端的に示しています。

「後世に語り継がれる伝説」

という大きいスケールの言葉もインパクトはありますが、私はこの"今から"が深みを増していると感じます。

一方で、これは私たちの人生に重ねることができるとも思っています。
栗原の場合は試合中の負傷という悲劇でしたが、私たちの人生においても仕事で失敗した、試験に合格できなかったというミスの類や、休職・休学という空白期間ができてしまうこともあります。

その後戻れる状態になり、一大決心して再度歩き始めようとする状況において今から結果出そうとすればいいんだとエールを送られる。今までは今まで。今からの方が大切だ。

プロ野球選手・栗原陵矢に限らず、人生の応援歌とも言えると私は思っています。

一方で、これは私たちが栗原に対して言うことではなく、本人が思うなら、という前提条件は付きますが、同時に感じたこともあります。
もし本当に嫌な思い出という捉え方をしていないのであれば、そのできごとから学び取ったことを活かしてもらえればさらによくなるということです。

栗原の負傷からさかのぼること19年前の2003年03月、福岡ドームでの西武戦(オープン戦)で負傷事故が発生します。
福岡ダイエー小久保裕紀が捕手と交錯した結果、右ひざ十字靱帯断裂という重傷を負い、同年のレギュラーシーズン以降は出場なしに終わりました。

左右は違いますが、ひざの十字靱帯断裂により同年の出場は不可になりリハビリに励まないといけなくなったのは、小久保も栗原も同じです。
小久保はすぐに栗原に言葉をかけています。

その小久保は、後年にそのことを振り返り、何とも思っていないと発言しています。
実際には激痛とつらい感情が発生したのに、無駄なことではなかったというのです。

読書が好きな小久保は、この言葉が好きなようです。

"必要・必然・ベスト"

これは、船井幸雄著『エヴァへの道』に記されています。

栗原にとって、これまではこれまでであり、後世に語り継がれる今から作ればいい。
ただ、そのこれまでも無にするところは無にしていいし、可能ならそれらがあっての今からを作り上げてほしい。
栗原に関しては、本人が感じていることがその答えです。

何かを始めようとしても、過去の苦い経験が邪魔をすることもあります。また、応援とは対極の言葉を発する人がいる場合もあります。
そんな時に前向きな気持ちになれるこの曲。私も時折自分自身の頭の中においても再生して前進していきたいです。

ありがとうございました。

サポートいただければ、本当に幸いです。創作活動に有効活用させていただきたいと存じます。