GFT 4th 自分たちの理想を作ろう
前回グループ戦術を練習する際にはまず「状況設定」を、そしてその中で「位置関係」「タイミング」といった要素をイメージして共有することが重要であると書きました(前回コンビネーションプレーと表現していましたが、グループ戦術という表現に修正しました。)。今回は「正しい」と考えられる「状況設定」「位置関係」「タイミング」についてもう少し詳しく考えてみたいと思います。
前回同様下図のようなハイポストフラッシュ→バックカットというグループ戦術を例として考えていきます。「正しい」このプレーとは一体どうやったら見つかるでしょうか?
1. NBA, WNBA, NCAA, ユーロリーグ, 国際試合などのプレー動画を真似る
真似るところからスタートするというのは、学びの基本です。どうせ真似るのならできるだけ最新のトレンドを反映した高いレベルのものを真似る方がいいと私は考えています。ただし海外リーグでは少しルール等が違う場合があるのでその辺りは考慮する必要があります。また高いレベルだとシュート力が桁違いなので自分たちの場合ディフェンスが同じくらいアウトサイドシュートを守ってこない可能性があることや、サイズやパワーがあるからこそ成り立つ場合もあることにも注意しなくてはなりません。ですが日本の育成年代でもよく使われるようなプレーも多用されているので、そういった動画から彼ら・彼女らの「状況設定」「位置関係」「タイミング」を学ぶことは大切だと思っています。
2. 自分たちの練習だけでなく、練習試合などでたくさん試してみる
グループ戦術を練習するときに2on2や3on3といった分解練習を行なったあと、5on5の試合形式で使ってみるというのがよくある流れかと思います。そういった練習で形を覚えたり精度を高めることはもちろん重要ですが、それと同じくらい練習試合など自分たち以外のチームとの対戦で使ってみることが重要です。なぜならチーム練習では自分たちのチームディフェンスの中でしかプレーを使うことができないからです。
例えば自分たちのディフェンスではパスを出せたとしても実際にやってみたらボールマンへのプレッシャーが強くパスが練習していた「タイミング」で出せない、ウイングのディフェンスが上手くてバックカットができる「位置関係」を作れない、といったことが起きると思います。そういったことを経験して「じゃこうしてみようか」というアイデアを生み出したり試したりすることが練習試合の大きな意義だと思います。そしてこういった経験はグループ戦術が完成してからするよりも作り上げる過程で経験すべきものです。
ですので、自分たちの練習でまだ完璧じゃないから使わないでおこうというのは、とてももったいないことではないかと思います。いろんなディフェンスに対し使ってみることで戦術は磨かれていくものです。
つまり理想は頭の中で考えるだけでなく、実際に体験していく中でまとまっていくものではないかと私は考えています。
3. うまくいったときといかなかったときの差を映像で振り返る
いろんな経験を生かすために重要なのは「映像で」振り返るということです。プレーをしている時は自分の視点や感覚でしか「状況設定」や「位置関係」を把握することができません。そうすると自分ではまっすぐハイポストにフラッシュしているつもりでもマークマンにコンタクトされてかなり外側でボールをもらってしまっていて、パスの角度が悪くなってしまっていることに気づかない、といったことが起こり得ます(下図参照)。
コーチがいればそういったことをコート外からの視点で確認してゲーム中に修正することができますが、選手だけで気づくことは困難な場合が多いと思います。特にボールマンへのプレッシャーが激しいとそれに対処するだけで一杯一杯になってしまい、オフボールのスペーシングまで確認することは難しいと思います。映像を試合中に確認することは難しいかと思いますが、振り返りの時でも活用することができれば理想とのズレを認識して次の練習で修正していくことができるでしょう。
またプレッシャーが激しくなかったとしても、複数のプレーヤーが連動して動かないといけなかったりディフェンスの動きに対してタイミングを取る場合などは外からの視点が重要な場合が多くあります。バックカットでいえばディフェンスの重心が動いた瞬間などは映像で見ればひと目でわかる場合でも、実際にプレーすると上手く判断できないということはよくあることです。
こういった映像での認知と実際の体感を擦り合わせていくことで選手は成長していくし、それを言語化していくことでチームとして理想を作りあげることができるのではないかと私は考えています。
まとめ
今回は理想を作るために「真似る」「試す」「映像で振り返る」という3つのステップを提案致しました。一見戦術というのはコーチの頭の中で作られていると考えられがちですが、そのチームにフィットさせるための修正というのはどんな良いコーチでも実戦で使用してフィードバックを得ることでしかできないと私は考えています。
ですので失敗を恐れず色々なアイデアを対外試合で試して経験を積んでいって欲しいと思います。
次回は今回触れられなかった、そもそも「正しい」とは何かについてもう少し考えていく予定です。
ここまでお読み頂き本当にありがとうございました。
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