GFT 5th 「正しい」理想とはなんだろう
前回はグループ戦術の理想を作るために「真似る」「体験する」「映像で振り返る」という3つのステップを提案致しました。今回はその理想に「正しい」ということがあるのかということについて考えてみたいと思います。
「正しい」は1つではない
私自身感じていることでもありますが、「正しい」は自分たちや対戦相手によって変わります。例えば皆さんは下図のような状況で「正しい」ディフェンスとはどう考えますか?
おそらく一般的な日本のチームにおいては下図のようにx5がヘルプにでてx1, x3がカバーダウンするというのが「正しい」ディフェンスだと考えられているのではないでしょうか。
私も大学コーチの時はこれが「正しい」と思っていました。実際にほとんどのカテゴリーでは、こうやって守ることでシュートを打たせないようにすることができると思います。
ただこれが5とx5が210cmで2とx1が170cmであった場合でも「正しい」のでしょうか。2が5に対してx5を越えるような高いパスを出した場合、どんなにx1が良いローテーションをしたとしてもカットすることはできないでしょう。したがって5にダンクシュートをはじめとする確率の高いシュートを許す可能性が高くなります。
逆にx5がヘルプに出ずゴール下にステイした場合、2は5にパスを出すか自分でシュートを打つかの選択になると思います。ただし、5にパスを出すのはx5がヘルプに出た場合と比べて難易度が高くなるでしょう(x5が5の方に下がってパスカットを狙うこともできるため)。
またレイアップシュートを打つ場合も40cm自分より高いx5のブロックショットを避けながら打つため、難易度の高いシチュエーションだといえます。x5がブロックショットにこれない位置でジャンプシュートを打つということもできますが、ドライブからストップしてのジャンプシュートも5のゴール下のシュートよりは難易度の高いショットです。
つまり、この状況ではx5はヘルプに出ない方が難易度の高いショットを打たせることができるのではないかということになります。
このようにプレーする選手や状況によって、「正しい」は1つではないといえます。
「正しい」は1つではないが「間違い」はある
ということで「正しい」は選手や状況によって変わるという話になりましたが、「間違い」はどうでしょうか。例えば先ほどの状況でドライブが始まる前からx5が5に近い位置でボールハンドラーを全く見ず5の方ばかり見ていたらどうでしょうか。
ドライブが来ていることを認識できなければ、先ほど述べたようなヘルプにいくかいかないかといった判断をすることがそもそもできません。ですのでこれは「間違い」といって良いと思います(5がスーパースターでx5がフェイスガードで守るという戦術をとっている場合は別ですが)。
このように「正しい」は変化しますがそれでも高い確率で「間違い」だろうと言えることはあると思います。
私の考えとしては上述の例のように認知の部分ができていない場合は「間違い」といって良いかと思います。逆に選手が状況を認識できていて判断した場合は全てを「間違い」と言い切るのは難しいのではないかと思います。
ではどうやって「正しい」チームの理想を作れば良いのでしょうか?
チームコンセプト
私は「正しい」理想を追い求めるだけではなく、チームコンセプトをチームに共有することも大事なのではないかと考えています。チームコンセプトはチームとしての正解や理想と言い換えても良いかと思います。
コーチの頭の中で「正しい」理想を追い求めることは重要ですが、長い時間や経験を積むことで熟成していくものだと思います。
コーチがいなかったり学生コーチのように年々変わっていく場合は全てを理想で語るよりも、大まかなチームコンセプトを共有してそれに沿って個々の事象の振り返りを行なっていく方が良いのではないかと思います。私個人もコーチングとしてそのような形を目指しています。
例えば上の例であれば少し極端ですがチームコンセプトが「シュートを打たれないようにする」のであればヘルプに出る、「難しいシュートを打たせる」ならばブロックショットを狙う方がフィットする守り方なのかなと思います。
そしてヘルプに出て5にパスが通ってシュートを打たれたのであればx5やx2がパスを出させないディフェンスをする方向で改善していくと良いと思いますし、ブロックショットを狙ってシュートを決められたのであればコンセプトのリスクなので仕方ないと考えるか、ブロックショットの練習をすることになるかと思います。
ここまで述べたように対戦相手によってチームコンセプトも変わって当たり前だと思います。またシーズンを通して自分たちの状況によって変化することもあって良いと思います。
大事なことは「自分たちがこれでやられても納得できるか」だと思います。
まとめ
今回は「正しい」は1つではなく選手や状況によって変わるということ、理想だけではなくチームコンセプト(チームとしての正解・理想)を持つことについて書きました。理想とチームコンセプトのどちらかが重要なのではなく、理想を踏まえてチームコンセプトを持てると良いのではないかと思います。
次回はチームコンセプトの作り方について考えていきたいと思います。今回も最後までお読みくださり本当にありがとうございました。
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