VS日大三高_002

初心者が1から学ぶバスケットボールのディフェンス ”常に攻撃的であれ”

こんにちは、三原学です。
お読みくださり、感謝しています。

わたしは小学校5年生のときからバスケットボールを始めました。
大学生まで現役を続けて、将来はバスケットボールを自分の仕事にして人生をかけようと決意し、今は指導者をしています。
主に高校の男子を指導していて、指導歴は15年になります。
今まで色々なことがありました。
多くの試合に勝ちましたし、負けました。
楽しいこともありましたし、そうでないこともありました。
でも、わたしがバスケットボールを愛する気持ちは変わりません。
むしろ年々、高まるばかりです。

中学生や高校生など、若い世代を指導するわたしたちには責任があります。
彼らの青春の1ページを、白にも黒にもしてしまうという責任です。
だからこそ指導者は、常に謙虚に学ばなければなりません。
出会った若い世代の選手たちに上達する楽しさ、勝つことの喜びを与えるために、わたしたち指導者はバスケットボールの本質とは何かを、学び続けるのです。本書では、ディフェンスに関して、「初心者が1から始める」という視点から、順を追って解説しています。

これを読んでいただいているあなたが指導者ならば、本書をディフェンスのチェックリストにして、あなたのバスケット観に生かしてください。また、これを読んでいただいているあなたが選手ならば、本書を説明書がわりにして、一生懸命に練習してほしいです。

バスケットボールは「習慣のゲーム」と呼ばれています。

 試合の展開が早いので、その瞬間に考えている暇がなく、日頃の習慣がそのまま表れる、という意味です。つまり、日頃の練習に真剣に取り組んでいるならば、それは習慣化され、試合では裏切らない、というのもまたバスケットボールなのです。
 必ずや良い成果は出るはずです。根気強く、良い習慣を身につけるべく、練習してください。わたしは今までの指導者経験で、確信していることがあります。それは、「基本に忠実なチームが必ず勝つ」ということです。

2020年1月 三原学

目次
1章 ディフェンスを学ぶ理由 
2章 “常に攻撃的であれ” ディフェンスの心構え 
3章 プレッシャーとは? 
4章 ボールマンディフェンスの構え 
5章 ドリブルに対するディフェンス 
6章 ドリブルが止まった瞬間のディフェンス 
7章 ハンズアップの重要性 
8章 オフボールの重要性 
9章 ボールの隣のディフェンス『ディナイ』 
10章 ヘルプサイドの『ピストル』ディフェンス 
11章 ポジション・ビジョン・トーク 
12章 集中力を高める方法 
13章 最強のディフェンス理論『ボックス理論』 
14章 リバウンド、ブロックショット、ルーズボール 
15章 ジャンプ・トゥ・ザ・ボール 
16章 クローズアウト 
17章 ヘルプ・フィル・リカバー 
18章 ローポストのディフェンス 
19章 ハイポストのディフェンス 
20章 ポストつぶしのカバーダウン 
21章 スクリーン・ディフェンス 
22章 プレス・ディフェンスの原則 
23章 フルコート・プレス・ディフェンス 
最終章 攻撃は最大の防御(まとめ) 

1章 ディフェンスを学ぶ理由


 バスケットボールで上達したい、勝ちたいと思った時、すべての選手はディフェンスを学ぶべきです。ディフェンスはオフェンスに比べて地味ですが、以下のような理由で、必ず取り組むべきなのです。
・ディフェンスはオフェンスと違い、好不調の波がない。
・ディフェンスはオフェンスより、練習量に比例して上達が早い。
・予定通りにプレイすることができる。
・チームワークを高めることができる。

ひとつずつ、見ていきましょう。

(1) ディフェンスはオフェンスと違い、好不調の波がない。
 試合の時に「今日は調子が良い、悪い」という言葉を聞くことが良くあります。この意味はほとんどがオフェンスのことを意味していると思います。シュートが良く入ったとか、良く入らなかったとか。たしかに、オフェンスは「調子が良い、悪い」というものが存在するのです。でも、ディフェンスには「調子が良い、悪い」がありません。努力したものが必ず試合で発揮できます。なぜならば、ボールを扱うほど細かいタッチが必要でないので、日頃と同じプレイが再現しやすいからです。この意味から「2点取るより、2点止める方が簡単」と私は考えています。多くのコーチが、勝ちを目指すうえで、ディフェンスを重視する理由です。


(2) ディフェンスはオフェンスより、練習量に比例して上達が早い。
 オフェンスには細かいボールタッチの「センス」がどうしても必要です。それは練習によって身につくものが多いですが、「先天性」のものも多いです。つまり、生まれながらにしてオフェンスがうまい、へたというのは決まっています。そして年齢が上がれば上がるほど、オフェンスの能力は固定されてしまいます。例えば、高校生の場合、入学当初から3点シュートが得意な選手は、シューターとして育てれば良いと思いますが、入学したときには3点シュートが全く打てなかった選手を、シューターとして育てるのはやめた方がいいです。限られた時間の中でオフェンスは上達するのにとても時間がかかるからです。
 一方、ディフェンスは違います。やればやるだけ、上達します。極端に言えば、自分の気持ちひとつで「やろう」と思えば、良いディフェンスができます。動きそのものは単純だからです。能力に劣るチームが、試合に勝ちたければ、ディフェンスを鍛えるのが最短です。能力に劣る選手が、試合で活躍したければ、ディフェンスを鍛えるのが最短です。

(3) 予定通りにプレイすることができる。
 これはオフェンスと比べて考えると、単純にわかります。あるチームがマンツーマンに対する攻撃法を一生懸命練習したとします。しかし、試合が始まったら相手がゾーンディフェンスだった。マンツーマンの攻撃法は試合で使えず、無駄になるわけです。あるチームがプレスに対するボール運びを一生懸命に練習したとします。しかし、試合が始まったら相手がプレスしてこなかった。プレスのボール運びは試合で使えず、無駄になるわけです。このようなことはオフェンスでよくあります。しかし、ディフェンスではこれがありません。「今日はマンツーマンで行くぞ」と思えば、マンツーマンができます。「練習通り、プレスをしかけるぞ」と思えば、プレスができます。バスケットボールの試合の流れは、実はディフェンスが主導権を握っているのです。

(4) チームワークを高める
 「オフェンスは”私”でやるもの、ディフェンスは”私たち”でやるもの」伝説のコーチ、ボブ・ナイトの言葉です。オフェンスは極論、ボールを他の人に渡して、休んでいることもできます。しかし、ディフェンスは休めません。休んだらそこから攻められるからです。このことから、ディフェンスは「常に、全員で」ということが前提になります。常に、全員でプレイするわけですから、チームとしての協力する心や、共に頑張ろうとする前向きな雰囲気が、ディフェンスを通じて芽生えます。洗練されたディフェンスは、オフェンスでは味わえない「チームワーク」を体験できるのです。


2章 “常に攻撃的であれ” ディフェンスの心構え

 強いチームを作りたければ、指導者はディフェンスを作らなければなりません。では、まず何からやればいいのか?それは「心構え」を指導することです。
 バスケットボールはたった1つのボールを争うゲームです。ボールを持っているチームが主導権を握り、持っていない相手チームがボールを追いかける。そのような関係でとらえることができます。
確かにそれは間違っていませんが、この考え方では結局どこまでいっても「ディフェンスはオフェンスに操られる立場」ということになってしまいます。


・オフェンスが右に行けば、右についていく。
・左に行けば、左についていく。

 ずっと追いかけていく。それがディフェンス。確かにそう見ることもできますが、そのような捉え方では決して良いディフェンスにならないと思います。

 受け身の気持ちではなく、むしろ「攻める」
・絶対にボールを取ってやる。
・絶対に抜かれない。
・絶対にボールをもらわせない。

 このような攻める気持ちがあって、はじめて相手に圧力を与えることができます。「攻撃は最大の防御」という言葉がよく言われます。これをバスケットボールにおきかえると「ディフェンスは最大の攻め」ということになります。

オフェンスについていくのではなく、

・自分から相手を「誘導する」。
・待つのではなく、自ら「仕掛ける」。

 このような心構えを持つことが、良いディフェンスを行う第一条件です。指導者はディフェンスの練習方法を考案して、選手に行わせるわけですが、大前提として、「常に攻撃的であれ」という合言葉をまず選手に根づかせましょう。具体的な方法論に入る前に、心構えを指導するのです。良いフットワークや、ディフェンスの戦術を指導したとしても、選手自身が「ディフェンスはオフェンスをおいかける受け身の立場」と思っているのであれば、相手を圧倒することができません。
 強いチームと試合をすると、なかなか簡単にボールを運べず、パスミスが多くなり、どんどん点差が離れることがよくあります。相手にディフェンスで圧倒されるパターンです。なぜこうなるのかと言えば、強いチームは「常に攻撃的であれ」という心構えでディフェンスしているからです。まずこの第1歩を踏み出して、強いチームになるためのスタートを切りましょう。

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