【次世代人材の育成3️⃣】 キャリア・パスとは歩んで来た道筋
次世代人材にとってのWant-toとは?
まず、未来を担っていく次世代人材にとってWant-toとは何でしょうか?企業で働く人は、何を期待しているのでしょうか?
そこで、ChatGPTに「若手社員にとってキャリアとは何か?どんな要素が含まれるのか?」と尋ねてみたところ、次のような回答が返ってきました。若手社員とは、25歳から35歳くらいの人を指しています。
スキル磨きと成長
プロフェッショナルネットワークの構築
挑戦的なプロジェクトへの関与
キャリアパスの明確化
ワーク・ライフ・バランスの維持
このようにキャリアから連想するものとして、単なる仕事の遂行だけでなく、自己成長やスキルの向上、自己実現、人生の満足感を追求する長期的な視点などがあるようです。
企業が社員に期待するのは、しっかり仕事をこなしてもらうことなのでしょうが、社員にとっては仕事の内容はもちろん大事ですが、それ以外にもワークライフバランスや自己成長が感じられることを期待しているのです。でも、それらは仕事以外の要素が大きく作用するので、企業がコントロールできるのはごく限られた範囲だけでしょう。
明確なキャリア・パスを描くべき?
さらにもう一つ指摘しておかなければならないのは、少なくない若手社員がキャリア・パスは明確であるべきと思っている事です。自分が描いたキャリア・パスを着実に進んで行きたいという気持ちは分かりますが、実際には非常に難しいと思います。
それには理由があるのですが、まず心理的な盲点である「スコトマ」というキーワードを使って説明してみましょう。
「スコトマがある」とは、目の前にあっても認識出来ていないものがある、ということ。
普段人は目を開けていれば、目の前にあるものは当然見えていると思い込んでいます。でも人の認知とはいい加減なもので、たとえ光の信号は目から網膜まで到達していたとしても、実際にはほんの限られた情報しか認識に上がりません。
自分にとっていま価値あるものしか認識に上がって来ないのです。
それは脳の仕組みに関係しています。実は網膜に届く光のほか、他の感覚器官が受け取った情報を全て脳に送っても、脳が処理し切れないらしいのです。脳は情報処理にかなりエネルギーを使うので、もし全ての情報を処理して認識に上げられたとすると、人が食べることを通じて摂取出来るエネルギーでは足らないといいます。つまり、餓死してしまうのです。
世界は、あなたが重要だと思うもので出来ている
だから、脳の中のR.A.S(Reticular Activating System、網様体賦活系)が、本人にとって重要なものだけが認識に上がるように働くフィルターの役目をしています。
ということは、あなたが見ているこの世界は、あなたが重要だと思うもので成り立っているということです。あなたが重要ではないと思っていることは認識に上がって来ないので、存在していないのと同じです。
これまで自分に見えている世界が本当の世界だと思っていても、実は身近な自分の周りでさえ、認識出来ていないことばかりだということです!
見えない中を進んで来た道がキャリア・パス
さてここで、次世代人材としてこれから育成する若手社員の話に戻しましょう。
重要なものしか認識に上がってこないなら、経験の浅い若手社員が認識できていることに限りがあると思いませんか?
もちろんすべての若手とは言いません。けれども、まだこの世界に対する知識が少なく、自分と自分の周りの限られた空間だけが重要だと思っているとしたら、その人が見ていると思っている企業やその企業を取り巻く環境については、ほんの限られた情報しか認識に上がっていないことになります。それがスコトマの原理です。
そんな状態で描いた未来のキャリアと、もっとより良く世界を認識できるようになってから描くキャリアは大きく違っているはずです。
結局、キャリア・パスというのはキャリアを歩み始めた時にはぼんやりとしていて、歩んで行った後に振り返ると何か道筋がついていたということなのだと思います。
でもこれは、何も行き先を定めず成り行きに任せてキャリアを歩めと言っているのではありません。実はその逆なのですが、その辺りはもう少し先でお話しします。
(『次世代人材の育成4️⃣』にづく)