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上司のトリセツ#7

話しかけるひとと話しかけられるひと,みんなどっちにもなったことあると思うけれど,聴く気がないひとに話しかけるのが(そして話しかけ続けなくてはいけないのが)一番心折れますよね。


試しに二人一組になって「石の人work」してみましょう。

石の人work
1.一方が話して,一方が聴き手になります。
2.話し手は,好きなテーマで3分間,聴き手に対して話をします。
3.聴き手は,話し手の話に一切の反応をしません。じっと目を見つめて話を聴きますが,あらゆる反応をしてはいけません。相槌してもいけません。おどろいたり,笑顔をつくったりしてもいけません。無表情でただ音声を耳から取り入れるだけに徹します。


鬼の3分間を終えたあと,同じ話を,今度は聴き手は相槌いれたり,表情を変えたり,とにかく一生懸命聞いてあげてください。


聴くことって大切ですよね。


コーチングにしても,カウンセリングにしても概論の講義では,こんなworkを必ず入れるのですが(企業研修でもよくあるので,みなさんも一度は体験したことがあるかもしれませんね),たまにこれをやってみると,コミュニケーションというのは,聴き手の技術に多く依存しているのだなぁと改めて感じさせられます。


上司のトリセツでも,原則として上司の話を一生懸命聴いてみようというスタンスをとっています。一方でこれは「上司の指示をきちんときいて,漏れなくダブリなく遂行するのだ」というような優等生的な振る舞いを身に付けようということを意味していません。

上司のトリセツは最終的に「上司の育て方」へ昇華させる予定なので(そもそもそれがここ「上司のアップグレード検討委員会」の主たる目的でもあります),グレードの低い上司に合わせて優秀な部下のみんなが120%出力でフォローすることで全体をうまく廻すような方策はあんまりうまい作戦とは考えていないからです。

たとえそうしたとしても,根本的な解決にはなりませんし,総合的に生産性があがるかどうかは疑問ですし。




ところで,僕は上司ですから


優等生な部下が増えればそれはラクチンです。けれども望ましい状況かというとそうでもありません。できれば部下を含めたチーム全員が少しずつグレードアップして,相互に影響を与え,相互に補完し,全体が底上げされることを期待しています。

そのためには,上司が自らを律し,厳しい条件下に身をさらして鍛錬を怠らない姿をぜひともみんなに見せて欲しいとそう思いますが,歳を重ねるといろいろとずるい技を覚えてしまってついつい優秀な部下に甘えてしまうこともあります。
また,別の見方をすれば,役職があがってステージが変わると必ずしも部下と同じことをすることが厳しい条件下に身をさらすことや,鍛錬を怠らないことにはならないことから,上司と部下の間には齟齬が生まれてしまうのだなぁとも思っています。



上司のトリセツがとるスタンスは,上司に都合のいい部下になるのではなく,上司とともに考え,上司とともに成長し,そして組織や社会へ貢献して欲しい。そのためには場合によっては主導権は部下にあっていいのでは,というスタンスです。

しかしこれは唯一無二の考え方ではありません。

僕もこのあたりが理解するのにすごく苦労したところなのですが,上司と部下の違いというか,役割が,そういう一側面を持っているというに過ぎないという意味です。

場合よっては,あるいは場面によっては,
役割が逆転することがあってもかまわないし,立ち位置が入れ替わる瞬間があってもよいでしょうし,しかし一方で上司の役割と部下の役割はあって,互いがそれを忠実にこなすという主軸があるものです。この矛盾を同時に抱えることがチームという有機体を活かすのに極めて重要なのです。


僕がなんとしてでもチームのみんなに伝えたいのは


上司と部下の役割は必ずしも教科書どおりである必要はなく,変幻自在な生き物のようであっていいのではないでしょうか,という提案です。
役割に固執して柔軟性を失えば,適応力は間違いなくダウンします。それはある方面から見れば致命的であり,時間の無駄遣いです。

しかし役割は定義づけられ,それを守ることが一方では重要です。この塩梅をどう理解し,腹落ちさせるか(この話題は極めて難解でコタエは出ないでしょう),そういうことのうちのひとつとして上司の取り扱いを部下の視点でどう考えていくか。
これが上司のトリセツのメインテーマだったりします。



部下の話をじっくり聴くこと,対話を重ね成長を促すこと,これは上司の重要な仕事です。もしもこれが十分に達成されておらず自浄もされないようであれば,組織においてはこの上司が浄化される仕掛けが必要です。しかしそのような仕掛けが常に機能していれば,誰にも相談できず心を痛める若い世代などいるはずがないのです。そのことが示唆するのはただひとつ,組織にそのような機能は一般的に備わっていないということです。

上司のトリセツは,そうだとすれば,組織にそういった上司を浄化させる機能をいかに実装させるかという問題を「部下視点」で解決するほうがスマートだと考えました(なぜなら上司目線にはこれらは問題とすら認識されないからです)。

その意味でも,上司のトリセツは,ミッション遂行のために重要な情報収集と円滑なコミュニケーションを自在に行うための職場空気を醸成するために「上司の話を一生懸命聴こう!」というスキルを重視したいなぁと,そう考えているのです。




聴く気がないひとに対して,話し続けるのは心が折れるなぁという話。


これは本当にたいへんなミッションなのですが,みなさんならきっとクリアできると信じます。そもそも職場において,上司に対して相談や進言をするのはきわめて当然のことなのですから,聴く気がないことに対して,気遣いをする必要は元よりありません。

石の人のworkをしているつもりで
ぜひとも石の上司に負けずに話しかけてください。



—— おまけ ——
あるいは,意図的に「相談にのらない」という選択肢を選んでいて,そこに崇高な哲学がもしも上司にあるとすれば,それはいかなる相談にものらないのではなく,あなたがまだ隠された条件をクリアされておらず相談にのるタイミングではないという可能性はあります。
その場合は,単に相談にのらないのではなく,なにかしらヒントがその態度や言葉に隠されているはずなので,じっくり話を聴いてみることが新たな一歩になるかもしれません。

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