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未経験の僕が仕事を辞めて学習塾を開校する話その34―学校に行かないという選択肢

学校に行かないという選択肢


不登校のお子さんを持つお父さんお母さんからのご相談が増えているような気がします。



不登校とヒトクチに言っても,これはもう本当に様々です。

そもそも不登校というのは,学校に行っていないという状態だけを指していて,病気で行けない子どももいるし,学校に価値を感じていない子どももいます。学校には行きたいのだけれど,朝起きることができない子どももいるし,友だちとは会いたいけれど,授業には出たくない子どももいます。

学校に行っていない理由はそれぞれ異なっていて,これらをひとくくりにして,我々大人はどのような対応をとるべきか?といった議論はできないでしょうね。



いずれにしても学校に行くことを前提として話を始めるとややこしいことになります。

また,学校に行きたくない子どもたちを大人は基本的に学校へ行かせたがっているという前提で話し始めてもややこしくなる一方です。

一般論はどの個別ケースにもあてはまらず,こちらで前提条件を決めてかかろうものなら,実際とのギャップに聴き手である私たちが困惑してしまうのです。



セラピストとしての関わり


先日お話したお母さんは,学校に行かせようとしていた初期の頃の自分をとても責めていて,あの頃の自分が恥ずかしいとまで言っていました。理解をしてやろうともせずにただひたすらに学校へ行かせたかったのだそうです。

今は学校へ行かなくてもいいと思っている一方で,娘の将来が心配でもある。


こういった複雑な心持ちをどのようにして受け入れるのか,心穏やかに今在ることをあるがままに受け止めるのかはとても難しい問題です。

カウンセリングに訪れることは,実はそれだけで相当な勇気が必要です。カウンセリングを受けても仕方が無いと思っていたり,カウンセリングを受けるのは精神疾患を持った者だと考えていたりして,そもそもカウンセリングを受けるという選択肢が見えていないことはまだまだ普通です。

したがって僕らのところに来て少しお話をするといったタイミングをつくってくれただけでも十分に勇気をもってくださったのだと思います。

そのうえで,先に述べたような複雑な心境をいかに腹落ちさせるのかというのはさらに辛い想いをなさっているのではないかと心中お察しいたします。


しかし,矛盾した気持ちに気が付いて,あぁそうした気持ちがあって,いずれの想いも本当なんだなとまずは感じることが大切だと僕は思っています。矛盾しているかもしれないけれど,その一つ一つが私にとって大切で,それはお子さんに対する愛情から来ているのだから間違ってはいないのだと感じることです。

そのうえでその課題がお父さんお母さんのものか,あるいはお子さん自身のものかをしっかりと見極め,必要なら家族全体の課題に格上げすることも視野にいれます。もしもそうでないと判断するならお子さん自身にその課題を預けることが必要かもしれません。

お子さん自身がきっと自分のチカラで解決するだろう。そのためには今は時間が必要なのだと信頼してあげることが大切かもしれないですね。

たとえば「学校に行かなければ,ダメになってしまう」と感じたとしたら,それが事実かどうかを切り分けることも大切です。客観的な視点を持って眺めることです。

また,その問題を抱えているのは誰なのかを考えることも重要です。

家族なのだから,自分の子どもなのだから面倒をみるのは当たり前だと感じることでしょう。しかし同時にそのことの意味をゆっくりと考えてもいいのではないでしょうか。親にとっての子育ての終着を僕は「子どもの自立」と考えています。
その目的に照らして,親としてのフォローアップを検討するのです。

簡単に判断できることではありませんし,その意味でカウンセラーはきっと決断や判断を促すことはしないでしょう。安易なアドバイスも控えるでしょう。その答えは家庭の数だけあり,人の数だけありますから,カウンセラーとて(たとえば子育ての専門家だったとしても),決断に関わることはできません。
そして決断を左右する場面では,何よりお父さんお母さん,あるいは本人が自立的に課題に向かえる勇気を持てるような関わりに専念するでしょう。



学習塾での関わり


学習塾での保護者面談はこのようなケースで大いに役に立つと考えています。カウンセリングに訪れることにハードルがあっても,学習塾の保護者面談であればそのハードルは低くなると思うからです。

誰かに話をすることがこれらの課題に向かうためのスタートであることに違いはなく,その一歩目になるうるという意味で学習塾は役に立てるのではないかと考えているのです。

しかしそこには一つ問題があります。
僕たちがセラピストではないということです。先に述べたとおりこの問題に上手に関わるための訓練をしてきていないのが一般的な学習塾の塾長でしょうから,容易に踏み込まないことも大切である一方で,貢献できる可能性がある以上,学習塾を起こす者の責任として,こういった課題にも挑戦していきたいものです。

もしも不登校のような課題に関わりたいと考えるのであれば,セラピーに関する訓練を受けて欲しいと思っています。対人支援のためのスキルとマインドセットを身につけて臨んで欲しいと思っています。


学校に行っても良い,行かなくても良い,その先に何を観るのか。

学校へ行くことの意義,行かないことの意義。

考えた方がいいことと,考えなくてもいいこと。

学校へ行かないことを肯定する意味,学校へ行くことを否定する意味。

ひとの心は複雑です。
解決に導く道筋は決して一つではありませんし,正解のルートもわかりません。

しかし,学習塾がそれをフォローアップしていく道はきっとあります。


サポートいただけると燃えます。サポートしすぎると燃え尽きてしまうので,ほどほどにしてください。