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上司のトリセツ#5

上司と信頼関係を築く方法をまじめに考えてみる。


信頼関係を築く方法。

その前に,信頼関係が築かれている状態というのがどんなものか考えてみよう。


信頼関係が築かれていれば,おそらく話もツーカーだろう。
躊躇することなく,思ったことや感じたことを伝えることができるだろう。
きっと上司は僕が言った言葉を真摯に受け止め,一生懸命過ぎて,時に激しい意見のぶつかり合いだって起きるかもしれない。それでも,信頼関係は動じない,そういう関係だ。

たまに呑みに連れて行ってくれたり,逆に僕が少し相談したいことがあるんです,なんて誘ったりすることもあるかもしれない。家族のことや恋人のこと,キャリアパスのこと,今行き詰っているプロジェクトの話,たぶんその背景にあるさまざまな個人的なことだって,日ごろから少しずつ話をしているから,通じているんだろう。

不動の信頼関係ならば,いつでも僕の耳に優しい言葉ばかりではないだろう。本気の叱咤激励もあるだろうし,おまえ何やってんだ,おまえらしくないぞ,もっと本気みせろよ,みたいなアツい鉄拳が飛んでくるかもしれない。それで僕がひとりで難局を乗り越えたときなんかは,涙を流して喜んでくれるだろう。場合によってはひとりで胴上げとかしてくれるかもしれない。



僕が欲しいのは,それぐらいの強い信頼関係だ。
決して揺らぐことのない,信頼関係だ。

その時僕はきっと上司のために仕事をしたいと思っているに違いないし,上司は僕の成長のためなら,陰になり日向になり,あらゆる協力をしてくれるだろう。


上司は僕のことを必死で考えてくれるから,僕の少しの変化も見逃さない。今日は元気がなさそうだ。
先日の得意先でのミスをまだ気にしているのか。とか,今月はいつにも増して成績があがっているな,何が功を奏しているのか気が付いているのかな。とか,そういう細かいフォローをきっとしてくれているだろう。


そして,上司は僕に,僕は上司に対して敬意を忘れることはない。
だからより信頼関係も厚くなる。

上司は僕に期待を込め,僕の成果をある程度予想できるだろうし,僕は上司が必要なときに,必要なフォローをくれるだろうことをある程度予想できる。

予想に反したことが起きた時も,そこにはきっと何か理由があり,その理由を考えることを期待されているのだろうと感じることができる。



上司とのあふれるほど信頼関係,そんな状況をどう作り上げていくか。


さて,そんな状況。

そんな信頼関係が築かれている状況。


そんな状況をどのように作り上げていくかが,上司のトリセツとしては重要な話になるのですが,端的に言えば,この状況を逆説的に達成してしまえばいいことになります。

要するに,かような状況をカタチからこさえることで,逆に信頼関係が構築されると,そういうわけです。

とは言え,簡単にこの因果を逆転させることはできませんから,そこはちょっとできそうなところから仕掛けていかなくてはいけないのですが,先に述べた「信頼関係ができあがった状態でできていること」のうち,カタチから先につくれそうなこと。


率直な気持ちを伝えること。

このあたりいってみましょう。


先の信頼関係が築けた状況下においては,おそらく心配も不安もなく,率直な気持ちを伝えることができるでしょう。
でも今,信頼関係ができていない,率直な気持ちを伝えるなんて無理と感じているのなら,これを逆説的に達成してしまいましょう。

すなわち,試しに一度,率直に気持ちを伝えてみましょう。


これものすごい勇気が必要だと思います。
率直な気持ちを伝えて,なにか変わるんでしょうか。
率直な気持ちを伝えて,叱られたり,怒られたり,明日から仕事がしづらくなったりしないでしょうか。

わかりません。

わかりませんが,やってみる価値はあります。昨日と同じ今日ならば,今日と同じ明日を迎えますが,いつもと違う今日なら,明日は新しい未来です。

ポイントはいくつかあります。


第1のポイント


まずは,ワタシを主語にすることを忘れないでください。私の気持ちを伝えるのですから,主語はアナタではいけません。

「私は~思っている。」

を素直に伝えるのです。

アナタを主語にしてしまうと,「あなたが~だから~なのです。」とか「あなたの~なところが~なのです。」とか,およそろくなことが想像できません。たとえば私が辛いという気持ちを伝えるのであれば,「私は少し辛い気持ちです」と伝えれば十分です。
アナタがと言い始めれば,私が辛い原因がアナタにあるという責める気持ちが表に出てしまいやすくなり,上司には率直に「ツライ」ことが響かず,「おまえのせいで」だけが伝わってしまうのです。



第2のポイント


二つ目のポイントは,「気持ち」を伝えることです。
気持ちを伝えるのですから,たとえば上司の困ったところを指摘するとか,つまんないギャグをつまんないと評価するとか,そういうことではありません。事象や理由や原因や理屈ではなく,あなた自身の率直な気持ちだけを伝えてください。

気持ちは伝えなければ誰にもわかりません。表情や日頃のやりとりから伝わる気持ちももちろんありますが,率直に,素直に自分の気持ちを伝えることで,上司に対して心の扉を開いてみせるのです。

気持ちは感情です。
それ以外の事象を伝えるのは,いろいろと通じ合ってからにしましょう。
まずは心を開いて,感情をそのまま言葉にしましょう。

先に自身の心を開くのは実に勇気が必要な行為ですが,愛すべき部下が真剣なまなざしで扉を開いてみせれば,必ず上司は応えてくれます(少なくとも僕は応えます)。

あの綾波レイの名言「心を開かなければエヴァは動かないわ。」は,実に奥の深い言葉なのです。心を開かなければ上司は動かないのです。心を開いて,あなたの気持ちをストレートに伝えてください。



第3のポイント


三つ目のポイントは,「感じる」「思う」「考える」をきちんと使い分けることです。気持ちを率直に伝えるときは,とりわけ「感じる」を重んじてください。

感じることは決して誰にも否定できません。自分にすら否定できません。冷静に考え直したり,思ったことを自分で否定することはできても,感じなおしたり,感じてなかったことにすることはできないのです。

自分にできないことが,上司ごときにできるでしょうか。
いいえ,できません。
「私は今すごくひとりぼっちな気持ちを感じていてツライのです。」と勇気を振り絞って伝えてみましょう。だからお前が悪い,と帰結してはいけません。ひとりぼっちと感じているのは「私の勝手」です。
ツライと感じているのは「私が勝手に感じている」のです。誰のせいでもなく,結果としてそうあっただけです。
けれども同時に,ひとりぼっちと感じてしまっていること,さみしくてツライと感じてしまっていることも誰にも否定できません。


その時,上司は,ああこのひとはそんな風に感じていたのか。と初めて気が付くでしょう。初めて気が付いて,自身の行動を振り返るかもしれません。

その気持ちをなんとか埋めてあげたいと感じるかもしれません。
あるいはそれは自分の責任だと考えて,自分を責めることもあるかもしれません。


その時こそ,信頼関係が生まれつつある,その瞬間と言えるでしょう。



まとめ


上司との信頼関係は,簡単には心の扉を開けないオトナ(上司)をさておいて,先に部下であるあなたが扉を開くことに極意があります。

大人はメンツが重要ですから,なかなか先にカードを切ることはありません。
だから,まずはそういうツマラナイ理屈を持っていない,スマートな方が先手を打つことが肝要と言えます。

そして「率直に」。


万一,勇気を出して伝えたのに,無下にされてしまったらと不安に思う気持ち,すごくよくわかります。

でも,率直な想いを無下にできるのは,サイコ上司だけです。もしもサイコ上司にあたってしまったのなら,しばらくは息をひそめてやり過ごすほかありません。

ハズレを引いたツキのなさは残念ではありますが,技術的に回避できるものではないので,気持ちを切り替えた方が安全です。
そうでないフツーの上司ならあなたの率直な言葉に耳を傾け,あるいは心を痛めることもあるでしょう。


僕はもう上司と呼ばれる立場になって久しいのでよくわかるのですが,基本的に上司は部下を愛しています。
なので,上司は部下からの働きかけを安易に無視はできないのが普通です。これはもう普遍の原理というか,不変の法則というか,いつの世も同じ,そして,いつになっても変わらない,大事な大事な大前提です。


いずれにしてもあなたの上司がサイコ上司でない限り,真摯に受け止め,真摯に応えてくれるはずです。


タイミングを見計らって,冷静に,真摯に,率直に,勇気を振り絞って伝えてみてください。

がんばって!




追伸
なんなら練習台になるのでいつでも連絡ください。



サポートいただけると燃えます。サポートしすぎると燃え尽きてしまうので,ほどほどにしてください。