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私が伝える、半径5キロの子育て

昨年、noteでひっそり立ち上げた「まいにちママ」は、ひとりの新聞記者が、子育てを通じて得た気づきや、我が子の変化を、言葉にする場でした。新聞からこぼれおちる日常を、活字で伝えたかったのです。でも、ひとりでは伝えられる量に、限界がありました。

ぱそこん

今日からは、仲間とともに、仲間を増やしながら、記事を更新していきます。書き手が暮らす地域を取材した記事や、我が子の「根っこ」と向き合い感じたこと、気づいたこと。地域で活動している人の思い。そんな言葉を、文章にして、少しずつお届けします。親になって、母になって、地域や社会に目が開く人たちのストーリーも伝えていくつもりです。

「コマロン」と名乗ります

一緒に(co-)作る、子育てメディア・サロン。「こまったな」と気軽に声を上げられる世の中を。子どもが真ん中の社会を。そんな願いを込めました。「マロン」の花言葉は、「公平」です。子どもを育てるように、コマロンという場を育てていきます

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困っていた私を、救ってくれたのは

私は、小学生と園児を育てる母です。仕事の都合もあり、産後も何度か転勤し、茨城、東京、宮城、千葉、東京、と各地で暮らしました。

数年前、東日本大震災後の仙台で暮らしていました。東京からの引っ越しと同時に、娘は幼稚園に入園。地縁がまったくなかったけれど、気にかけてくれる方が多く、救われることがたびたびありました。私は、周りの人たちのさりげない優しさに支えられて、子育てをすることができました。

東北は、地域全体が「人とのゆるやかなつながりが、命を救うこともある」ということを身にしみて感じていたかのようでした。街で暮らす母たちの、大人たちの、地域や、子どもへの日常のまなざしが、深く、温かく感じられました。

親になること

仙台で暮らす前に1年間住んでいた東京都心では、家と認可外保育園と職場を行き来するだけの生活を送りました。夫は単身赴任中。ママ友はいませんでした。頑張っているはずなのに、思いっきり働けないし、自由な時間がないし、辛いし、眠いし、謝ってばかりだし、保育園に行きたがらない我が子との攻防だけで1日分の体力を使い切るし、寝かしつけもうまくいかないし――。( ↓ 地面にへばりついて動かない息子   あきらめて写真に残した記憶 )

寝る

10年前、親になったばかりの私は、その現実と日常を、どこか受け止められずにいたのかもしれません。そして、あふれる育児情報を前に、知らない誰かと自分を比較し、勝手に追い詰められていたのかもしれません。

でも、茨城、東京、宮城、千葉、と各地で暮らし、さまざまな人と知り合い、言葉を交わし、感じとる中で、「ああ、親になるってこういうことなんだ」と言葉にならない思いがわき上がるようになりました。その先に広がっていたのは、見たことのなかった世界でした。(↓保育園の連絡帳。各地の先生方の素敵な文章に、励まされてばかりでした。子どもたちと丁寧に向き合ってくださり、ありがとうございました)

保育

効率重視の世の中で

「家事育児を効率良くこなす方法」「自分時間の生み出し方」「子育て中も、会社でキャリアアップするために」「夫と育児家事をシェアにするための工夫」「育児スキルは、仕事にも役に立つ」――。「効率よく生きる」「効率よく成長する」ためのノウハウが、世の中にあふれかえっています。

だけど、目の前の子どもはそんなに「効率」を求めていなかったりする。ただ信頼できる大人や親に見守ってもらったり、話を聞いてもらったり、大泣きしている自分を受け止めてもらったり、保育園から遠回りして帰ったり。そういう無駄にも思える時間がないと、「待つ」時間がないと、子どもは強くなれない――。

そんな当たり前のことに気がつくのに、私は時間がかかりました

山

待機児童数を、伝えること?

気がついてからは、新聞記者として、今までのように「子育て」ニュースを報道することに、迷いが生じるようになりました。

例えば、自治体や国が発表する待機児童数を報道すること。さらには「保育所を増やして、利用しやすい保育サービスも増やして、『待機児童ゼロ』になればOK」という捉え方や、「子育てしやすい自治体ランキング」という「良さ」を単純に数値化して評価する価値観に、疑問を持つようになったのです。( ↓ 私がかつて書いた新聞記事です)

たいきじどう

コマロンは、子育ての本質とは何か、子どもにとって過ごしやすい場とは何か、を結論を急がずにゆっくり考える場にもします。

遠くにいかなくても

「日常」が変わった今、子育てのありかたも、必要な情報も、変化しているように感じています。

例えば公園。遠くの観光地的な公園がどれだけ立派か、子どもを受け入れる「施設」が整っているか、より、自宅から歩いて行ける素朴な公園が、子どもにとって過ごしやすいか、が生活の中でさらに気になるようになりました。

幼い我が子と何度も行ってみて、しろつめ草がたくさん生えていることを知ったり、砂場が荒れていて子どもが遊びにくいことを知ったり――――。

しろつめコマロン

「半径5キロのちいさな暮らし」を続けるうちに、平凡な公園に生えた雑草や石ころでも、延々と楽しみ、遊び続ける我が子と何度も出会いました。そう、無理して遠くに行かなくても、楽しめるのです。

公園に限らず、家の近くに広がる「日常」にも、子どもと一緒にでかける場所はあるのです。地元の図書館や、住宅街の中にたたずむギャラリー、小さな美術館、本屋さん――。そこへたどり着く過程で、親子で歩いて時間を共有することもまた、今しか味わえない時間です。

遠くの子ども向け商業地に行けないから「困った」「つまらない」だけではなく、「大人目線で便利で楽しいか」だけではなく、「大人が与えるだけのお膳立てした学びや楽しみ」だけではなく、「身近な楽しさに自分で気がつく強さ」「子ども自らが育つ力」を大切にする――――。

「コマロン」は、そんな新しいメディアを目指します。

いしあそび

まずは、noteでちいさな一歩を

最後に、「コマロン」は新聞社の社員数人と、信頼できる社外の先輩・仲間で運営していきますが、お金と、立ち上げた私の技術がないため、自前のサイトを作ることができず、noteを使ってはじめることになりました。

コマロンの企画は、何年も前からあたためてきたものです。ただの新聞記者である私が、社内で慣れないプレゼンもしました。

紆余曲折をへて、このnoteというプラットホームで、発信を積み重ねていくことになりました。アナログな私でも記事を更新することができる、包容力のあるこの場に感謝しています。

今のところ、フォロワーさん1000人、が目標です(社内的には)。でも、そのような数値目標を設定することが正しいのか、1000人になったら大きくなにかが変わるのか、今の私にはわかりません。きっと、正解はないのだと思います。だから、まずは、記事を積み重ねていくことからはじめます。

いまのコマロンは、完成されたメディアのように、毎日決まった時間に何本も記事を更新することも、まだ難しいです。だけど、3人めの子育てのつもりで、少しずつ、育てていきます。

2人

「工場は絵になるでしょ。観光も目立って、マスコミも取り上げやすい。でも、教育や子育ては『見えない』」。

東北で記者をしていた時に取材した、引退した政治家が言っていました。言葉のあちこちに、静かな怒りが、込められていました。

コマロンでは、見えにくい、数値化できない子育てを、「くらしの当事者」である私たちが、伝えていきます。コマロン編集部/毎日新聞社  山内真弓


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