キャプチャ

相談ファイル① NPOとかボランティアより本業を頑張ったほうがよくないですか?

はい。ということで、唐突に始まりましたこちらのコーナー。

本日は下記のようなお悩み相談メッセージを頂戴しましたのでやり取りを共有していきます。


【相談者:Hさん 鹿児島県 奄美大島より】

実はだいぶ前から悩んでいます。

『ボランティア』についてですボランティアとは一体、何なのでしょうか?
NPOとはどのように違うのでしょうか?

Corporate Social Responsibilityを組織の一員として果たす事との自分の中での配分の問題など色々考えてしまいます。
これらを考える上で気になっているのは以下のような点です

#ボランティアやNPOであれば 、具体的な成果を設定してそれを協働者に求めにくい。(プロ野球選手に草野球に無償もしくはそれに近い対価で参加してもらい、プロの試合と同じエネルギーで試合に望んで下さいとは求めにくい。ましてや悪天候の日に試合を強行する際も参加してほしいなどとは言いにくい。)

#活動自体が善意に依存しているので 、継続性の観点で不安。(本当に現在行っているボランティア活動やNPO活動が社会貢献になっていると思うのであれば、CSRの一環として行う方が継続性の観点では良いのではないか?もちろん株主になんらかの利益をもたらすような活動に誘導されてしまうのは良くないですが。。。)(NPO団体が資金集めに行うイベントなどは正直そのイベント自体がチャリティー的な要素が強く、寄付としての要素が強い印象を受けます。多くのクラウドファンディングなども同様です。立ち上げの時は盛り上がりますが、山ほどある寄付型のクラウドファンディングの一体どれらくが継続的にうまく行っているのかと思うと疑問も多いです)

#本業が社会や地域のために真に貢献していると思えているのであれば 、ボランティアやNPO活動に費やす時間を本業に費やすべきなのではないか?(今、自分の本業がまだ行き届いていない人たちを開拓し、本業の対象とする活動の方を優先すべきなのではないか)→永山さんが無償でファシリテーション講座などを開いているのはこのような要素があるのかなと個人的には考えています。(ボランティアとも言えなくもないが実際は本業の延長上にある)


総括しますと
目標設定と継続性に不安と曖昧さが残るので、NPOやボランティアではなく、本業で得た利益の社会への還元として行う活動の方が、目標達成や活動継続の観点からは優れているのではないかと考えているという事です。還元すべき活動に目標を設定してそれに届かなそうであれば、プロとして本業を頑張れば良いわけなので、考え方としてもシンプルに思えます。

極めて公共性の高い職業、しかも公的機関に勤めている私がこのような疑問を抱く事自体、思想に問題があるのかもしれませんが。

もし、お時間が許すようでしたら、永山さんのお考えをご教授願えればと思います。ご検討の程よろしくお願いいたします。


…というご質問でした。

 こちらに対して、私は下記のように返信いたしました。

こんばんわ。
返信遅くなりました。
つらつらと、私が普段考えていることをお話しますね。

1)NPOという概念は、もう古いというか、あまり意味がなくなっている。
NPO=Non Profit Orgnizationという概念は、「非営利組織」と訳すことができ、利益を株主に分配することを目的としない組織すべてを広義には捉えることができます。例えば、医療法人や社会福祉法人、学校法人は、実は広義でのNPOと捉えることができるのです。世間一般的にはNPO法人のみをもってNPOと考えていますが、実はその捉え方は狭い見方です。
また、「NPOだから稼がなくていい」「NPOだから目標設定はあいまいでいい」なんてこともなく、NPOだろうが営利企業だろうが、継続するためには稼ぐ必要がありますし、目標を達成するためには目標を明確に設定する必要があります。

2)企業も社会課題や地域課題を無視できなくなっている
CSRを一歩進めた考え方に、CSVという考え方があります。Create Shared Value。本業の中に社会課題の解決を組み込み、社会的な公共善を事業の中で達成するという考え方です。あたりまえと言えば当たり前なのですが、昨今のコンプライアンス重視の意識から、反社会的な事業や、人間の幸福を害する事業で利益を上げることを良くないものとする風潮が高まっており、いかに本業の社会的な価値を高めるか、を民間企業も意識せざるを得ない時代が来つつあると思います

3)ボランティアは、社会的な価値創造の仕組みのボトムライン
Hさんご指摘の、ボランティアやNPO活動に費やす時間を本業に充てるべきでは?の問いですが、個人的には大賛成です。本業が社会課題の解決を実感できるものであれば、そこにまい進したほうがよいですよね。ただ、2)で申し上げたように、企業が社会的な責任や地域課題に目を向けるべき段階にありながら、どうしても本業が社会課題の解決につながっているように思えない(と個人レベルで感じてしますようなポジションの)人もいます。そういう人にとっては、副業的に、ボランティアや2枚目の名刺としてNPO活動に従事するというのはスタイルとしてあり得るのではないかなと思っております。また、すでに年齢や健康上の理由でフルタイムで働くのが難しいという人が、それでも社会と繋がりたい、社会課題を解決したい、と思う場合もボランティアやNPO活動などが有効かなと。
以上が、答えになっているかどうかわかりませんが、私の考えです。

なお、2)の「企業が本業のなかに社会課題の解決を組み込む」という文脈で考えると、「本業から少し離れてボランティアやNPOに関わることで、逆に本業の今後の事業展開のヒントが得られる」といったこともあります。副業として地域活動に従事することが本業の価値を高める事例は、実は少なくありません。

Ten-Labは、今専業禁止にしていまして、全員がそれぞれ自分で社会と繋がる現場をもち、そこでの知見をTen-Labでの業務に活かしています。私にとっては、無料のファシリテーション講座もその位置づけですね。研究開発を地域でやらせてもらい、それを企業コンサルなどに活かしている、という感じかな。


うーん、我ながら暑苦しい返信。。。

これに対して、Hさんからの返信も来ましたので、添付します。

ご多忙の中、とてつもなく丁寧にお返事を頂きありがとうございました。
とても参考になりました。
永山さんにメッセージを送った後、自分の文章を読み返して、読み方によっては善意でボランティア活動している人を否定するような内容に見えてしまわないかと心配しておりましたが、少なくともきちんと私が伺いたかった事が伝わったようで安心しました。私の拙い文章の本意を組んでくださりありがとうございます。

CSV、マイケル・E・ポーターの論文から生まれた言葉なのですね。
元論文を購入し読んでみます。ありがとうございます。
2011年の論文であり,それを知らない自分の不勉強を痛感します。反省します。
まずは日本語ですぐ手に入りそうな2011年のcreate shared valueという論文を読んでみます。面白そうであれば2012年のpricing to create shared valueという文献も読んでみようと思いますが、パッと探した感じでは日本語版は見当たらなかったので、辞書と格闘しながら頑張ります。

1)2)の説明とてもわかりやすく、私でも理解することができました。ありがとうございます。

そして3)こそが私が伺ったことに対するお返事そのもののように思いました。そして、これまたとても理解しやすく納得にいくものでした。勉強になりました。ありがとございます。

私が表現したかった事は、ボランティア活動として行われている事は本来未然にそれを行う必要がある状態にならないようにすることが大切であるし、公共サービスや条例などの整備で改善する部分もあるかと思います。住民が意識付けの機会としてボランティア活動をするのはとても良いことだと思いますが、行政や企業の側からすると本来、行政や企業が取り組まないといけない問題をボランティアの人の善意に頼って問題の解決を先送りにしているようにも見えるのが気になって、今回の質問にいたりました。

しかし、永山さんのご意見を伺い、ボランティア活動などで得たものがゆくゆくは行政や企業の中に取り込まれていくことを考えていくのであれば、非常に素敵なものだと思いました。マイケル・サンデルがい言うようにインセンティブ(特に金銭的な)をつけることでその行動の本当の価値が下がってしまう場面もあると思いますので、それとのバランスももちろん必要だと思います。

ご多忙の中、私のような不勉強な者のために貴重なお時間と労力を注いでいただいて本当にありがとうざいます。それを無駄にしないよう自分なりにもう少し勉強してみようと思います。


・・・というやりとりで無事に相談完了。

いやー、濃厚なやりとりでした。

「せっかくなので、このやりとり、noteで公開していいですか?」と聞いたところ、「全然OKです!」との回答をいただいたので、ご参考まで、掲載しますね。Hさん、貴重な思考の機会を賜り、ありがとうございました。

プロボノ、2枚目の名刺、副業、などなどいろんな言い方はありますが、個人的には本業こそが最も重要、という考え方にもかなり共感するところはあります。本業がすでに社会を大きく支えていて、その価値を高めるために副業をする、または本業では見えないものを見るために副業をする、といったスタイルもアリなのではないかなと。

今回はご質問をいただいたことで、自分自身の考えがよりクリアになった感じがあります。Hさん、ありがとございました!

さてさて、こういうディープな内容にニーズはあるのか?と思いながら、せっかくなのでココラボnoteに掲載いたしまっす。

こんな感じで、「これについて悩んでます!」というお悩み相談もお受けしていきたいと思いますので、皆様よろしければココラボ(かごしま県民交流センター 1F)にお越しくださいませ。

※永山の出勤情報もこちらのnoteでおいおい公開していきまーす。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?