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産qレース 第十二話

 やすこが徳川から告白を受けてから、数日後に徳川から東京スカイツリーへデートの誘いの連絡がきた。東京スカイツリーは、恋人達がいくものだと思い、なかなか行く機会がなかったので、やすこは楽しみで仕方なかった。

 待ちあわせの時は、前回よりも更に心臓が口から出そうなくらい緊張したが、すでに待っていた徳川はやすこを見つけると、近づいてすぐに手を握ってエスコートしてくれた。すみだ水族館を見学後に、展望台へ向かった。

 スカイツリーの展望台で都内を一望し、富士山まで見ることができた。展望台で一休みすると徳川は鞄から紙袋を取り出し、

「やすこちゃん、誕生日はまだ遠いからハーフバースデープレゼントです。どれもやすこちゃんに似合いそうで迷ったから、ネックレスを2種類買ってみました。」

「2つも!うれしいです。ありがとうございます。」
早速、徳川が手伝って、ネックレスをつけてみた。

その時、やすこは、ふと昔のことを思い出した。

 小さい頃、お姫様になりたいと言って、「馬鹿じゃないの、うちは貧乏だし、あんたじゃ無理に決まってる」と姉たちに馬鹿にされたこと。

 母から、中学時代に夏服を着ていたら、まじまじと見られ、「やすこは白い服にあわないね」と言われ、姉妹から「やすこは、白が似合わないなら、ウェディングドレスとか絶望的だね。」と笑われたこたがあった。思春期の時期で深く傷ついたっけ。

 その時の自分は、数十年後に自分をこんなふうに、まるでお姫様のように扱ってくれる人と出会えるとは夢にも思っていなかった。徳川と出会えたことに心から感謝した。

 その後も、徳川とのデートはとても楽しいものだった。

 ディズニーランドでは、登山用の大荷物とスーツケースを持ってきたため、驚いたやすこが「この大荷物はどうしたんですか?」と尋ねると、

「ディズニーの3大マウンテンに登りにきたんですよ。なんちゃって。もしもの時を考えて、時分とやすこさんの傘と着替え(男物)、絆創膏などもってきたら、大荷物になってしまって。」

 やすこは、呆気にとられたが、自分のことだけでなくやすこの分まで準備してくれたことが嬉しかった。

 また、徳川はピロリ菌の検査をしたことがないというやすこに、自分の病院で予約をとり、徳川が自らピロリ菌の検査をしてくれた。やすこは、幸い陰性だった。すると、ご家族も調べようと、後日両親の分まで予約をとり検査をしてくれた。そこで、初めてやすこの両親と顔合わせとなった。

「今川家はみんな陰性でよかったです。親世代は、井戸水とかを飲んでいた時期もあったので、陽性の人も多いんですよ。」と教えてくれた。

 まさえに、徳川とのデートを話すと「大事にされてるね。安心したよ。」と大笑いしていた。そして、「やすこもそろそろ結婚だね。結婚式よんでね。」と加えた。

やすこも、「そうだといいんだけどね。まさえは是非、主賓で来て下さい。」と笑った。

 そして、何回かのデートを重ね、いつしか知らずしらずに結婚式場めぐりが始まった。徳川の薦めもあって、徳川の両親のコネクションがある式場に目星をつけた。

 また、徳川の両親との顔合わせも無事に済ませた。両親と会う前に、徳川から釣書を提出してほしいと言われ、徳川の釣書を渡された。要は、結婚用の履歴書だ。
『世の中には、こんなものがあるのね。。お見合いとかしっかりした家柄の人と結婚するのは大変なのか。』
 やすこは驚きながら、家族の協力も得て何とか書き上げ、事なきを得た。
 
 やすこにとって、徳川との結婚という言葉が現実味を増してきた。

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