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シャークスに来てくれて、ありがとう。

2020年10月19日、日本製鉄室蘭シャークスから、7名の選手の勇退が発表されました。

私自身は選手の勇退や移籍にあまり動じないタイプで、どんな選手にもいつか区切りは来るものと心してきましたが、今季の勇退者は一際思い入れのある選手が多く、一時代が暮れるような寂寥を覚えます。

たくさんのわくわくとタノシイへの感謝を込めて、勇退される方々の思い出を紹介したいと思います。

11 山口 綜投手

北海道尚志学園高-国士舘大、2014年入部

彼の横断幕に「Cool head, Hot heart」とあるとおり、冷静沈着なピッチャーで、私は「粛々と投げる仕事人」という印象を抱いています。
派手な戦績はなくとも、先発とロングリリーフでチームを長いこと支えてきた、縁の下の力持ち。

思い出深いのは私が初めて道外遠征した2016年のJABA東北大会、バイタルネット戦。
この日は非常に風が強く、どのチームの投手も苦労していましたが、先発した山口投手だけは涼しい顔で好投を重ねます。とてもかっこよかった。試合は磯部様ご乱心で危うくひっくり返るところでしたが。

来季からはアナライザーに就任されるとのことで、ご活躍を心から楽しみにしております。

16 鈴木 駿也 投手

山形中央高-福岡ソフトバンクホークス、2015年入部

入部が話題となった当初、私はNPBファーム事情など全然疎くて、縁もゆかりも無い元プロ選手が室蘭を選んだことの奇跡を分かっていませんでした。

初年度から先発の柱を担い、緻密なコントロールと大舞台での強心臓で結果を残し、また若手投手の手本として、投手陣を本当によく支えてくれた鈴木投手。
その中でも特筆すべきは、2019年社会人野球日本選手権1回戦・JFE東日本戦でしょう。リリーフで登板し、夏の都市対抗野球大会を制した強力打線を7回1安打無失点に抑える一世一代の快投。

高校で投手転向。NPBドラフト最下位指名から負傷のため育成選手へ、そして自由契約からの室蘭入り、何度も跳ね返されて掴んだ全国切符。
波乱万丈な野球人生の最後の6年間を応援できたこと、とても幸いに思います。

21 髙田 将太 投手

室蘭工業高 2017年入部

室蘭市生まれ室蘭市育ち。誰が呼んだかパリピのび太。
生粋の室蘭っ子がやってきた!それもねんがんの左腕となれば、夢は膨らむってもの。

細っこい体は年々たくましくなり、大学強豪校、社会人チーム相手に登板とステップアップし、今年こそ飛躍の年に…と願っていたのですが、どこか痛めたでしょうか、登板機会に恵まれませんでした。
まだ巻き返せる年齢と思っていただけに、勇退は驚きでしたが、シャークスで鍛えた4年間が長い人生の宝に、ときに標となることを願ってやみません。

高校同期の田邊正尊投手は四国アイランドリーグplus・愛媛マンダリンパイレーツに2年在籍し、WEEDしらおいに入団した後、ルートインBCリーグ・福島ホープスへ。
彼と髙田投手の投げ合いを見てみたかったですね。

8 井上 俊樹 内野手

札幌光星高-大阪体育大 2015年入部

私が意識して室蘭シャークスを観始めたのが2014年。
なんとなく瀬川隼郎投手の好投でドームへ連れて行ってもらって、なんとなく応援して、次はちゃんと選手覚えようと心した次の年に入団したのが、井上選手の代。
箱推しでも特に思い入れが深いのがこの6年生です。

2015年は新入部員が8人、その中の外野手は3人。井上選手と若松選手、飯田選手…そうか、同期の外野が一斉に辞めてしまうのか。

外野?そう、井上選手は外野手として入団しました。
初年度は比嘉選手(現監督)、高田選手、小山内選手と強力なレギュラー陣がおり、更に先に頭角を現した飯田選手と若松選手に挟まれ、スタメンでは起用してもらえませんでした。

そこで2年目は高校以来のショートに転向。3年目は内野手登録になるも、新人が加入したことから再び外野へ。
ただの便利屋ではなく、打撃も年々磨かれ、2017年日本選手権予選では1番バッターを務め敢闘賞の活躍。ただ、紙一重で代表を逃した敗戦に笑顔はなく、表彰式でずっと唇を噛んでいた姿が忘れられません。

その悔しさを胸に2018年秋の日本選手権予選を突破、そして2019年でついに手にした都市対抗代表権。全国を知らない代であった彼らが報われてよかったと、心底嬉しく思ったのでした。

なお、2019年から内野手不足のため再びショートへ転向し、同じく外野からショートに転向した銭谷選手とレギュラー争いという、内外野を流転するとても器用な選手でした。

9 若松 一吉 外野手

北海高-亜細亜大 2015年入部

長身で均整の取れた体格と端正な顔立ちの大砲。商社勤務。
ルーキーイヤー、2015年の結成記念大会決勝・TRANSYS戦で逆転2ランを放ったのが実に鮮やかでした。私が円山以外のシャークス戦を観たいと一念発起して初遠征した試合だったので、よく覚えています。

指名打者起用が多く、今季はよく長打を放っていましたが、ひょっとしたら足が万全ではないのかなとうかがう場面が度々あり、彼に限っては虫の知らせが的中した感があります。
(たぶん球場で保護した)猫ちゃんと末永くお幸せに。

24 飯田 篤史 外野手

駒大苫小牧高-苫小牧駒澤大 2015年入部

鈴木選手、井上選手、若松選手と同時に入部した飯田選手。
高校大学と名を鳴らし、男前な顔立ちもあってファン人気の高い選手でした。
ところで飯田選手、今ドライチ確実と話題沸騰の近所の大学生がそっくりでしてね、彼、影武者で入らないかな?同じ駒大苫小牧高-苫小牧駒澤大だし同じ胆振管内だしやきとりは美味いしアットホームなチームですよ???

やめなさい

さて、飯田選手の入部以来、室蘭シャークスはJRとの競り合いで代表権を逃し続けてきたのですが、2017年秋の日本選手権予選2日目、9回二死まで7-6とJRをリードしておりました。抑えきれば2014年以来の全国に王手をかける試合。
二死満塁で迎えるはJRきっての好打者・本間篤史選手(現TRANSYS)。
その打球は低い弾道でセンターへ、飛び込んだ飯田選手のグラブをかすめ芝を転々と、走者一掃の逆転3ベースに。その裏で追いつくこと叶わず、シャークスは痛恨の一敗を喫します。

このときのシャークスナインの、項垂れた飯田選手の悔しさはフェンス越しにもびりびりと伝わるほどで、私ももらい悔し泣きするほどでした。
そこから起死回生の試合を重ねて代表決定戦に持ち込み、そして敗れ、先の井上選手が敢闘賞を受賞する…そんな血を吐くような壮絶な予選でした。

だから、その後に彼らが自分たちの力で全国への道を切り開いたこと、全国大会を経験してキャリアを終えられたこと、(目標はもっと高いところにあったと思うのですが)本当によかったと思うんですね。

2015年入部の残るは今崎淳次郎投手、佐々木大樹捕手となりました。彼らには永く活躍してほしいと、勝手ながら願っています。

26 銭谷 恒毅 外野手

北海高-日本大 2017年入部

シャークスの宇宙人。
入部当初のweb記事がサーバごとなくなってしまったので、やんごとなき手段でアレですが…そのときの入団記念写真がこちら。

2016新人

左から佐藤峻一投手、髙田将太投手、田中貢大選手、大石悠介選手、一人だけてへぺろな銭谷恒毅選手。

ちょっと高めのだみ声で叫び、独特の雰囲気と独特のフォームを持ち、とても目立っていた銭谷選手。
入部時は外野手でしたが、内野手が手薄になった2019年からは昔取った杵柄でショートに挑戦。今季はさらにサードもこなし、井上選手同様チームを支えるスーパーサブに成りうるかと期待していた矢先の、勇退の報せでした。

何とも落ち着かなくてそわそわする(でもちゃんと守る)内野守備がもう観られないのは…きっと、来季を迎えたらじわじわ寂しくなるんだろうなと思います。

ありがとう、お達者で

いつだって私が贈るのはこの2つだけ。
室蘭シャークスに来てくれて、素晴らしいプレーで熱くさせてくれて、本当にありがとうございました。
皆様がこれから歩む道に、幸多からんことを祈ります。
いつまでもお元気で!