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シーズン強制終了に寄せて

室蘭スティーラーズの、北海道社会人アイスホッケーの2019-2020シーズンが、突如、終わってしまいました。

中国・武漢に端を発し、今や世界中に飛び火した新型コロナウイルス禍。相次ぐスポーツイベントの中止・延期。アイスホッケーも当然、例外ではありませんでした。

この記事は、半径3メートルの出来事を記し、私個人の気持ちを整理するための備忘録です。
新型コロナウイルスの現状や対策については、各自で、厚生労働省など信頼できる機関から最新の情報を得てくださいますよう、お願いいたします。

全国大会2つを残して

日本製鉄室蘭アイスホッケー部・室蘭スティーラーズのシーズンスケジュールは、おおむね9月に始まり、J-Ice North Division(北海道内の社会人アイスホッケーリーグ戦)をこなしながら、2月まで道内大会を戦います。その戦績次第で、3月に行われる2つの全国大会への扉が開きます。

ひとつは、全日本アイスホッケー選手権大会(B)
もうひとつは、J-Iceプレーオフ

前者の全日本アイスホッケー選手権大会(B)は、2019年12月下旬に北海道地区予選がありました。5チーム中4チームに出場権が与えられる椅子取りゲーム、室蘭スティーラーズは初戦で出場権を獲得

後者のJ-Ice North Divisionは、9月から2月までの約半年をかけて、6チームが総当りで順位を競います。室蘭スティーラーズは創部以来の初優勝を決め、全国の勝者が集うプレーオフへと駒を進めていました。
その最終戦が2020年2月16日。

11日後の、2月27日。
日本アイスホッケー連盟は、新型コロナウイルスの流行状況及び政府が25日に発表した「新型コロナウイルス感染症対策の基本方針」を鑑み、全日本アイスホッケー選手権大会(B)を含む、3月に予定していた主催大会の中止を決定しました。

翌28日、愛知県アイスホッケー連盟がJ-Iceプレーオフ2019-2020の中止を発表。

これを受けて、室蘭スティーラーズは、3月の直前合宿とアイスホッケースクール、後援会向けアイスホッケー体験会の中止を発表しました。

3月の予定がまるごとなくなるということは、すなわち、そのシーズンの活動終了を意味します。

北海道アイスホッケー競技選手権大会47年ぶりの優勝、道新杯3連覇、J-Ice North Division初優勝を全勝で飾るなど、道内大会をかつてない好成績で走り抜けた室蘭スティーラーズ。
昨季は決勝で涙した全日本選手権B、連覇がかかるJ-Iceプレーオフ。
いざ全国!と意気込んでいた矢先、その道は突然に途絶えてしまったのです。

率直に思ったこと

無観客でいいから大会を開催してほしかった。
室蘭スティーラーズ、DYNAX、釧路厚生社、タダノ、まだ見ぬチームの数々…出場を予定していたすべての選手に、プレーをさせてあげたかった。

前述の通り室蘭スティーラーズは絶好調を維持していました。堅い守りと、劣勢でも土壇場で覆す強さがあり、個人的には、全日本選手権Bも、J-Iceプレーオフも頂点に行けると信じていました。
過去最高のシーズン途中でその機会を失った選手達のショック、悲しみ、無力感は察するに余りある。
全日本選手権Bは冬の選手権A予選を兼ねますので、秋に代替大会を開催する旨が発表されましたが、そのときにはチーム編成も状態も変わっていることでしょう。

私が観られるか観られないかとか、キャンセル料とか、そんなもんはどうだっていい。最高の状態で最高の舞台に立たせてあげたかった。無念でなりません。

ですが、今回の大会中止決定は、WHOが最高レベルの感染拡大リスクを警告している新型ウイルスの、これ以上の蔓延を防ぐための措置。ひいては、選手や運営に携わる人達の安全を守るためでもある。

そう考えて、私は主催連盟と各チームの決断を尊重します。
今はウイルス禍が収束して、一日も早く、選手の皆さんが心置きなくプレーできる日が戻ってくることを祈るばかりです。
そしてどのチームのどの選手も、できる限り、競技を続けてほしい。(全ては叶いっこないと分かっています。)逆境を乗り越え、翌シーズンに思いの丈をぶつけてほしいと願っています。

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見えない災害の中で

全日本選手権Bの中止が発表された翌日も、いつもと同じ朝がやってきました。満員電車に乗り、席に着き、業務に勤しむ。何の変哲もない1日をてきぱき過ごしながら、目の前に虚空が開けたような気分でした。

皆が全国大会へ行けなくなったことを私が辛く思う以上に、当事者たる選手や身近で支援する人達はもっと心を痛めているだろうという悲歎。
誰のせいでもなく、やむを得ない事態なのだと己に言い聞かせるやるせなさ。
ピンチこそ発想転換や新たな発見のチャンス!なんて前向きな気持ちには、とても切り替えられそうにない。
目に映る日常の手前、フラットな悲しみが透明な壁のように広がっている。

それだけ、アイスホッケーは私の心をがっちり掴んでいたことに気づきました。たった一年で。
何とも言えない幕切れになりましたが、ひとシーズン応援できてよかった。ぼんやりと球春(4月)を待ちわびていた社会人野球オタクの寒候期は、見違えるほど充実したものになりました。
アイスホッケーに導いてくれて、こんなに楽しませてくれてありがとう。
今は胸が痛いけど、わたしは幸せです。

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2月25日に潮目が変わった

今振り返れば、2月16日の室蘭スティーラーズ対DYNAX580名の観客を集め、数多くのイベントを打ったホーム最終戦を無事完遂できたことは、ギリギリのタイミング、奇跡のようなものに思えてなりません。

スポーツ界隈では、既に、不特定多数の接触を避けるためのファンサービス縮小・イベント中止の動きが広がっていました。
また、国内では経路不明の感染者がじわじわと増え始め、2月14日には北海道在住で渡航歴がない方の感染を確認。2月20日には政府から集会・集客イベントの必要性検討の要請が始まります。

このとき、プロ野球オープン戦やJリーグといった大規模集客競技は無観客試合になるかもしれないなーとぼんやり眺めていましたが、思ったより早く、アイスホッケーにもその波がやってきました。

2月21日。3月上旬に新横浜で開催予定だった「アメリカ・カナダ選抜 対 スマイルジャパン国際マッチ」の中止決定
2月23日。アジアリーグアイスホッケーのプレーオフ・アニャンハルラ対王子イーグルス第3戦(25日)を無観客開催にするとの発表。

ここまでは無観客になったとしても、試合そのものは行えるだろうと期待を抱いていました。
プロ野球・広島東洋カープのチケット前売り整理券配布で「2m以上の間隔を空けて並ぶことの推奨」が話題となったとき、こっちは全員2m離れて座っても余裕だから大丈夫じゃね?と思ったり。(やめなさい)

2月25日。
政府が「新型コロナウイルス感染症対策の基本方針」を発表。国内感染拡大防止を重点し、イベント等の開催について、改めて必要性の検討を呼びかけます。
翌26日に、より具体的に国内の文化・スポーツイベントの2週間の自粛(中止、延期、規模縮小)を要請すると首相と文部科学大臣が会見。(2月26日から2週間=3月12日)
同日、北海道教育委員会および札幌市教育委員会が小中学校に1週間の休校を要請

ここから堰を切ったように、各スポーツ団体が大会の中止や延期を表明しました。
アイスホッケーにおいては、アジアリーグがプレーオフファイナル・サハリン対アニャンハルラの開催中止、両チームの同時優勝を決定。
日本アイスホッケー連盟が27日に3月主催大会の中止を発表したのは先のとおり。その中には、全日本女子アイスホッケー選手権大会(A)といった、各カテゴリーにおける国内最高峰の大会も含まれていました。

地方のアイスホッケー連盟も同様の対応をとり、無数の大会が、規模の大小を問わず中止となっています。
また、遠征・合宿の中止が相次いだため、連動した練習試合・交流戦もできなくなりました。

東洋大学の遠征中止に伴い、沼ノ端で予定されていたDYNAXとの交流戦も中止。この試合、とても楽しみにしていました…。

2月27日夕方。
首相が全国の小中高校及び特別支援学校に対し、3月2日から春休みまでの臨時休校を要請。ほぼ一ヶ月の休み。
児童生徒や教員が長時間集まることによる感染リスクの低減が目的ですから、部活動も自粛要請の対象になります。

2月28日夜。北海道知事が新型コロナウイルス緊急事態を宣言2月29日と3月1日の外出自粛を要請するに至りました。

現在、私も家に引きこもってこの記事を書いています。正直、こんな事態になるとは思っていなかったですね。

4月になれば、多くのリンクは解氷されて整備期間に入ります。自粛期間をやり過ごしてから代替日程を組むのは極めて難しい、故に、3月の殆どのアイスホッケー大会は中止にせざるを得ないでしょう。

無観客にすればいいじゃない?残念ながら、そういう段階ではなくなってしまいました。
集団行動する選手や運営者そのものに感染の脅威があり、学校には預かる生徒学生の安全確保が、企業には感染拡大防止に資する姿勢が求められています。それはもちろん、競技を統括する団体にも。

「万が一感染者を出したときの責任を回避したくて、安易に中止にしたんだろ?」なんて冗談でも言えません。予算をつけて、時間をかけて準備してきた催しを中止するのは、どんな組織でも痛手にほかなりません。

やり場のない悲しみをどうしようか

スポーツ・文化イベントの中止。公共施設や行楽地の閉鎖。
楽しみにしていた催しがなくなって、心に穴が空いた人、悲しみに暮れている人をこれまで何度も見てきて、今回、私もその側になりました。

これまでの自然災害による中止の時は、有事冷徹モードになっていたので、野球のことは脇に置いていました。

私は神でも石油王でもないので、今起きている事象に対してどうすることもできません。
もう一つの趣味、社会人野球は、まもなくスポニチ大会から開幕します。こちらは無観客で開催するかもしれない望みがありますが、この先どうなるかは分かりません。

さてこのずっしりじゃないけどどんよりした気持ち、どうしたものか。

皆が全国大会へいけなくなったことを私が辛く思う以上に、当事者たる選手や身近で支援する人達はもっと心を痛めているだろうという悲歎。
誰のせいでもなく、やむを得ない事態なのだと己に言い聞かせるやるせなさ。

シーズン強制終了を受けて私が感じたこと。
書き出してみて、自分の感情を他人と比較するのはよくないなと、自分自身で思いました。上も下も見始めたらキリがありません。

私は悲しいのだ。まずはそれを素直に認めよう。
私の感情は私のもの。自分より辛い人がいるのだからと痩せ我慢してたら、いずれ心はパンクしてしぬ。自分を認めた上で、誰のせいでもない、抗えぬことだと事実を受け入れよう。

実際私にできることは来季も応援を続けること、それに備えて黙々と日常に勤しむことぐらいでしょう。じゃあそれを精一杯やろう。といっても、2倍働くと3倍お賃金が出るおトクな仕事ではないので、いつもどおり働けばよしとする。

全日本選手権B(八戸)の新幹線パック、J-Iceプレーオフ(名古屋)の航空券を解約するとき、少しの後ろめたさがありました。
その地には観光を糧に生きている人がいて、いま、大変な苦境に立たされている。でも大会がなくなった今、私には始発から最終便までまる3日間を過ごす術がありません。ごめんなさい。

浮いたお金は地元で使おう。馴染みの店に呑みに行って、予定してた冬休みは道内の温泉に行こう。今はそれでいい。

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ここまで想いを紡ぎ出したところで、特に何も起きません。
やっぱり心は晴れない。それでいいんじゃないかな。だって仕方ねえもん。

不完全燃焼の悲しみは、次のシーズンが始まればきっと癒えるでしょう。
今と同じチームじゃなくなったとしても、それは、新しい楽しみが待っているということだから。室蘭スティーラーズも、ライバルたちも。

全日本選手権BとJ-Iceプレーオフを観られなくなったのは、本当に無念ですし悔しいです。でも、同時に、2020-2021シーズンを楽しみにしています。
そう思えるのは、熱いプレーといい試合を見せてくれた人達のおかげ。

過ぎ去ったシーズンに、今一度。ありがとう!

本記事の試合写真はおなじみ みつる(@k_mitsuru_n )さんからご提供いただきました。ありがとうございます。