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市子のことではなく北秀和のことをずっと考えている

12月8日金曜日から全国公開された映画『市子』。

市子(杉咲 花)は、恋人の長谷川義則(若葉竜也)からプロポーズを受けた翌日に、突然失踪。
長谷川が行方を追い、これまで彼女と関わりがあった人々から証言を得ていくと、
切なくも衝撃的な事実が次々と浮かび上がる…。
市子の人生を狂わせた悲しき宿命。
名前を変え、人を欺き、社会から逃れるように生きてきた。
なぜ、彼女はこのような人生を歩まなければならなかったのか ——。

市子公式ウェブサイトより

鑑賞後に「市子のことをずっと考えてしまう」という人が続出しているようなのだが、私は違った。
市子の高校の同級生である北秀和のことを、鑑賞から1日経った今もずっと考えてしまっている。

※ここから先は本編のネタバレを多分に含むので、閲覧注意


北秀和という男は、市子に恋愛感情を抱いている。
市子の後をつけたり、家での様子をのぞき見したり、音信不通になった市子を血眼になって見つけ出しだりと、まあ文字に書き起こすまでもなく完全に市子をストーキングしている気持ち悪い男である。

そんな北くんに、私は強く惹かれてしまった。
そして、私以外の人間はストーカー・北くんにさぞドン引きしているだろうと思いきや、意外と同じような感想を抱いている女性がいたり、北くんに共感、感情移入してしまう男性がいたりするようである。

そんな北秀和の魅力とは一体なんなのか。
100%完全なる私の主観で、以下に書き記していきたいと思う。


外見

この場面写真のシーンの北くんを見て、「顔がどタイプ過ぎる~~~!」と心中叫んだ。
このシーンで、市子と北くんは二人でガリガリ君的なアイスを食べるのだけれども、アイスを食べる北くんはすごくかっこ良かったし、当たり棒が5本そろったことを市子に自慢する北くんはめちゃくちゃかわいかった
男は黙って黒髪黒縁眼鏡なんですわ……。
……本当にそういう映画ではないのは、重々理解している。

その後、大人になったシーンで眼鏡を外し、眼鏡フェチの私の許可なく勝手にコンタクトになっていたのはめちゃくちゃショックだった。※冗談
でも、コンタクト姿もそれはそれでかっこ良かった。

奥手

北くんが一部の男性の共感を呼んでいる要因の一つに、その奥手さがあると思う。

「うち、花火好きや。みんなが上を見上げてると安心するんや」と話す市子を夏祭りに誘いたいのだが勇気が出ず、「なんで誘えへんのや!!!」と自分自身に怒りを向けるシーンが、森永悠希さんの素敵な演技も相まって本当に出色だった。

その数か月後、市子が夏祭りに行かなかったと知り、意を決して「一緒に花火を見よう。みんなが空を見上げているのを一緒に見よう」と誘うシーンでグッと来た。誘い方が最高
それなのに、市子に「いつかね」と軽くあしらわれてしまうところも良かった。
後述する予定だが、北くんの魅力は最期まで絶望的に報われないところにあると思う。

また、市子が母親の恋人・小泉と揉めているシーンで、止めなければと思いつつも勇気が出ず、窓の外からストーキングしているところも、北くんらしくてすごく良かった。
行動自体は全く褒められたものではないのだけれども、なんかすごく良かった。

その後、小泉を殺めてしまった市子を抱きしめ、「川辺は俺が守る」みたいなことを豪語しているのも良かった。
ただ事件を傍観しているだけで、取り返しのつかない過ちを犯してしまった後に、理解者ぶっているのがすごく北くんだった。好き。

市子が失踪した後、北くんの元にしばらく身を寄せていたことが物語の後半で明らかになる。
北くんは一時的に市子と同棲していたことになるのだが、恐らく北くんは市子に一切手を出していなかったであろう。
これはオタクの妄想でしかないが、多分そうに違いない。
北くんにそんな勇気はないだろうし、そのヘタレさを「守らなければいけない存在である川辺のことを、傷つけてはいけない」などと、正当化していそうだなと勝手に思っている。

そして極めつけは、市子のことを最後まで川辺と苗字呼びしていたところである。
市子が「月子」から「市子」に通称を変えたことも影響しているとは思うが、つまりところは好きな女性のことをどうしても下の名前で呼べなかったのだろうと推測している。

ヒーロー気取り

市子と一緒に小泉の死体を投棄し、共犯者になって以降、北くんは「川辺を守れるのは俺だけ」「川辺のヒーローになる」と、勝手に責任感を増幅させ、市子の彼氏である長谷川にはあからさまに敵対心を見せる
しかし、月子としての戸籍のある人生を捨て、市子として生きていくことを決心した市子にとって、月子時代を知る北くんの存在、およびその責任感は邪魔でしかなかった。

だが私は、その北くんの「ヒーロー気取り」の行動にとてもキュンキュンしてしまった
それは一体なぜなんだろうか。

※以下自分語りゾーン
私が邦画を見るのようになったのは、コロナ禍で時間に余裕ができたからで、それまではアニメ作品ばかり見てきたアニオタである。

これまで見てきたアニメの中で、一番好きな男性キャラクターは『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。』の比企谷八幡で、最近の作品だと『僕の心のヤバイやつ』と市川京太郎だと答えている。
この二人の共通点はざっくり言うと、「超利他的な陰キャ」であるところだと思う。

また、『結界師』の墨村良守が「時音は俺が守る」と言ったり、『緋弾のアリア』の遠山キンジが「アリアは俺が守る」と言ったりしているのに、ひそかに心を奪われてきた。
認めたくはないが、確実は私は「俺がお前のことを守る」みたいなことを言う男性が好きなんだろう。

つまり北くんは、「『俺が守る』が口癖な利他的陰キャ」という私の好きな要素のハッピーセットみたいな男性なのである。
これは好きにならざるを得ない……。

部屋の解像度が高い

「魅力」という点からは少し話がそれるが、北くんの部屋の解像度が高いのも印象に残った。
ゲーミングチェアに、本棚に大量の漫画……と、北くんの部屋はいかにもオタク独身男性っぽい部屋だった。

これは美術の塩川節子さんが用意したものなのだろうか……?
漫画のラインナップが気になったので、後々レンタル配信されたら一時停止して確認したいと思う。

終始報われずに悲しい最期を迎える

北くんは、自殺志願者の北見冬子と共に、市子に会いに行く。
そして冬子と共に、海に身を投じてしまう。
明示はされていないが、市子は冬子の戸籍を利用し、今後の人生を"冬子"として歩んでいくのだろう。

市子が"市子"として生きていくのにも、"冬子"として生きていくのにも邪魔な存在だった北くんは、恐らく市子の気持ちを尊重して自らの生涯を閉ざす決断をしたのであろう。
とても切ない、報われない最後であるが、「市子のヒーローになる」という本懐を遂げたとも言える。

北くんは、人生の最後まで北くんだった。
そんな北くんのことが、私は市子以上にやっぱり忘れられない。

森永悠希のオタクになりそう

そんな北くんを演じた森永悠希さんのことが、私は今すごく気になっている。

普段アニメばかり見ているということもあり、あまり俳優さんには詳しくなく、正直今回初めてお名前を知った。

しかし過去作をいろいろ調べていくと、『ちはやふる』で机くんを演じていたことが判明!
何を隠そう私は、『ちはやふる』メインキャラの中では一番机くんが好きなのである。(ちなみに一推しは坪口さん。)

小5から高2まで7年間競技かるたをやっていたので、「実写の『ちはやふる』はどうしても粗さがしをしてしまって、物語に集中できなそう」という理由で敬遠していたのだが(漫画は40巻手前まで、アニメは1,2期を視聴)、これを機に見てみるのもいいかもなと思った。

また直近だと、朝ドラの『ブギウギ』にも出演しているようである(東京に舞台を移してからはあまり出番がないようだが……)。

……「気弱でちょっと後ろ向きな」眼鏡男性……だと……。

私の年末年始の予定が、ブギウギ大阪編を視聴することで確定した瞬間であった。


ここまでこのnoteを読んだ人で、まさか市子未視聴の人はいないと思うので、「他にもあるよ、北くんの素敵なところ」「森永悠希の過去作だと、これがお薦め」などがあったら、コメントください。

終わり

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