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保護者向けセミナー「今の子ども達の学びの最前線と 小学校低学年で育みたい8つの姿勢 」実施レポート

2021年の年末に、地域のある保育園の保護者を対象にしたオンラインセミナーを開催しました。
保育園に通う子を持つ保護者にとって、お子さんが小学校に進級することは大きな喜びであると同時に、大きな不安も伴うものです。そういった思いを抱える保護者の悩みに対し、小学校の現状を少しでも知ってもらうことでその不安を解消したいという思いと、これから子どもたちがどんな世界を生きていくことになるのか、未来を見据えて、親として何をしてあげることができるのかを考えるきっかけになれば、との思いで実施したこのセミナー。その園長先生とこれからの学びについて話をする中で生まれた今回のセミナーの内容を、一人でも多くの人に知っていただきたく、簡単にレポートしたいと思います。

まず、最初に紹介したいのは、オックスフォード大学のマイケル・A・オズボーン准教授が2013年に発表したこの言葉です。

”10~20年以内に(アメリカの)労働人口の47%が機械に代替されるリスクがある”

この衝撃的な数字は世界で話題となりました。日本でもこの研究をもとに試算が行われ、49%の人の仕事がロボットやAIに代替できる可能性があるという発表がなされました。

この数字だけを見ると、職を失うのではないかという不安が先行してしまいますが、ここで伝えたいことはそうではありません。これまでも社会の変化によって、求められる仕事や人材は大きく変わってきました。この研究の真の意味は、これまでと同じ変化は今も起こり続けているということ、そしてそのスピードがものすごい勢いで早まっているということにあります。

一昔前のように、どんな大学を出たのか、大学で何を学んできたのかが大きな基準となって仕事をしていた時代はとうに終わっています。今何ができるのか、どんな価値を生み出せるのかが問われる時代であり、世の中が大きく変化する中では、その変化に私たち自身が素早く対応していくことがとても重要になってきます。

そして、今の教育はまさにそういう世界の中で柔軟に対応し、自分らしく生きる力を身に着けられるものに変化しているのです。

では、実際のところ、今の教育はどのようになっているのか、保護者の方が子どものころ受けていた教育と比較してみたいと思います。

図4

今の幼児~児童のいる家庭の保護者世代が受けてきた教育はいわゆる”ゆとり教育”というものでした。それまでの詰込み型、受験至上主義で、より多くのことを知っていて、より早く物事を処理できることを良しとする教育は、受験戦争やいじめといった様々な社会問題の温床になっていると考えられました。ゆとり教育の中では学校の授業時間は大きく減り、学ぶ内容も減らし、そこで生まれた時間は休みになったり、総合学習といった異なる学びをする時間に置き換わっていきました。学校でも土曜日が休みになったはまさにこの時期です。

このゆとり教育はその後、日本人の学力低下の原因と言われるようになり、再度見直されることになったのです。しかし実はこのゆとり教育の中では、今の教育にも繋がる大切な視点も生まれていました。

それが受動的な学習から能動的な学習への転換でした。

それまでの教育といえば、たくさんの子どもたちが机に座り、先生の板書を一斉に聞くというのが一般的な学習スタイルでした。しかしゆとり教育の中では、そういった形ではない、実験や観察、調査や討論など、様々な活動を通じて自ら学んでいくスタイルが作られていったのです。

そして2020年。今の新学習指導要領が施行されました。この指導要領では、最初に紹介したような急激な世の中の変化の中でも、自分らしく生きていく人物を育てていくことを目指して作られています。

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政府広報オンラインより引用

今回の指導要領においては様々な変化がありました。世間では、プログラミング教育の導入や、英語の必修化、道徳の教科化などが大きな話題になっていますが、注目したいのは学び方の変化にあります。指導要領の中では「主体的・対話的で深い学び」の視点からの授業改善を重要視するとされています。これはアクティブラーニングともいわれる学び方で、今の教育においては特に注目を集める学び方となっています。

このアクティブラーニングで重要視されるのは、自ら体験したり、人に教えたりするといった、より学習が定着する学びの形です。このアクティブラーニングを実践する手法は様々ですが、私たちはその中でもPBL(project based learning)をもとにした学びのスタイルを大切にしています。

このPBLですが、すでに様々な教育の場面、特に高等学校などで実践されています。それらを踏まえ、小学生の、特に低学年の時期はにどのような学びをするべきなのか。この1つの答えとして、commonでは姿勢に注目して、様々な学びの環境を作っています。

図2

実際、commonの子どもたちは、日々の試行錯誤を通じた活動の中で、これら8つの姿勢を日々経験しながら学んでいます。commonのものがなくってしまうことに課題を感じたある子は、commonのコミュニケーターの応援を受けながら、落とし物を分類して集める棚を作りました。この子は、自分の周辺環境に対して不思議に思う姿勢や、一歩踏み出す姿勢を育んでいます。commonの中をより華やかに彩ろうと思ったある子は、得意な折り紙で様々な花を折り、部屋の中に飾りました。この子は自分の好きを深め、それを相手に伝えようとする姿勢を育んでいます。こういった1つ1つの活動を通じて、子どもたちは未来を力強く生きていく力を身に着けていっているのです。

多くの保護者が、子どもの一生を左右するかもしれないというプレッシャーを抱え、教育に対して漠然と不安を持っています。今回のセミナーを通じて、そういった不安の源はどこにあって、その不安を解消するために何をすればいいのか、そのヒントが得られていればと思い、今回のお話をさせていただきました。

commonでは実際に未来につながる力を日々身に着けている子ども達がいます。その答えは今すぐは分かりませんが、10年後、20年後、彼らが自分らしく、生き生きとした生活を送っているであろう未来に近づいていることに確信を持っています。

commonひばりが丘 施設長 山下

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