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2023年春の異常に暖かい世界の海-驚きのグラフが語るもの

 最近見つけたこのグラフ。実に衝撃的だ。

世界(北緯60度~南緯60度)の海域の平均表面温度の推移

 世界(北緯60度~南緯60度)の海域の平均表面温度の毎日の推移をグラフにしたものだ。期間は1981年以降の毎日。各年のグラフが積みあがっている。
 元サイトは以下。メイン大学の「Climate Reanalyzer」のサイトだ。グラフの線が何年のものか、特定の日の平均温度は何度かが、以下のサイトのグラフをなぞるとわかる。特定の年のグラフだけを表示することも可能だ。

 これをみると、2023年を示す黒の実線が極めて高い位置にある。特に着目すべきは3月中旬~4月中旬の推移だ。例年なら3月中旬から低下に向かいだすのに、2023年はなかなか低下しない。3月中旬~下旬にかけて逆に上昇すらしており、4月下旬にならないと本格的に低下しない。
 4月1日に関して言えば以下の数字だ。年による上下はあるが概して上昇傾向にある。2023年は、初めて21℃を上回った。
  1995年:20.2℃ 1995年:20.4℃ 2005年:20.6℃ 
  2015年:20.8℃ 2022年:20.8℃ 2023年:21.1℃

 北大西洋(北緯0度~北緯60度、西経0度~西経80度)に限れば以下の通り。グラフの目盛の設定上一見大したことないように見えてしまうが、これも大変なグラフだ。2023年は、3月以降過去最高が続いており、4月に入って上昇幅が加速しているように見える。4月27日の平均表面温度は20.8℃で、過去最高の20.5℃(2017年)を0.3℃も上回っている。

北大西洋の海域の平均表面温度の推移

 2023年4月27日の世界の海域の表面温度の分布は以下の通り。東南アジア~インドにかけて異常に高いのが目につく。

2023年4月27日の世界の海域の表面温度の分布

 ちなみに、これは同じメイン大学「Climate Analyzer」の世界平均気温(地表2m地点)の各年の推移だが、2023年は過去最高の水準で推移している。

世界平均気温(地表2m地点)

https://climatereanalyzer.org/clim/t2_daily/

 2023年4月28日時点の世界の気温分布は以下の通り。

 こうした海域をはじめとする高温の影響を最近最も大きく受けたと言える地域の一つが、東南アジアである。東南アジアでは、4月中旬以降、連日のように40℃を超える猛暑が継続している。4月22日では、タイ・バンコクで暑さ指数が「54℃」に達したよう。ちなみに、暑さ指数とは、湿度・日射や輻射(ふくしゃ)など周辺の熱環境・気温の3つを取り入れた指標で、WBGTとも表される。

 こうした猛暑は、いよいよ教育面にも影響を及ぼし始めているようだ。最近では、「ベトナムでは、気候温暖化が学生たちの数学テストの成績にマイナスの影響を及ぼしている」という結果が発表された。この問題の重要なところは、農村部の女性が最も受けやすいという点だ。気候危機が教育機会の喪失、格差拡大につながる危険が示されている。

 最近の異常な海の高温、これからどんな影響が及ぼされるのか気になる点だ。未来の活動機会も守るためにも、これを警鐘と捉え早急に対策をとる必要がある。「産業革命前と比較した気温上昇を+1.5℃に抑制」これが大きな目標となり、その実現のために重要なのは、2030年までの温室効果ガス排出量の半減、2050年までのカーボンニュートラルの実現だ。

(追記)
 この「Climate Reanalyzer」のサイトはいろいろな使い方ができそうだ。地域別の様々な気象データの現況のほか、地域の気温や降水量が過去の標準的水準(1979~2010年平均)と比べてどうなっているかも地図で表現できる。

世界各地の気温の標準的水準(1979~2010年平均)との差異の分布
(2023年4月28日、Climate Reanalyzerより)

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