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「気候危機解決のためにプライベートジェットを禁止せよ」トマ・ピケティ

Ban private jets to address climate crisis, says Thomas Piketty
“「気候危機解決のためにプライベートジェットを禁止せよ」とトマ・ピケティが述べた“
英ガーディアン紙の電子版にこのタイトルの記事が出た。

 原文のリンクは以下である。そして、一番上の写真は下記記事からの引用である。

 トマ・ピケティ氏はフランスの経済学者で、2013年に著書『21世紀の資本』の中で、膨大なデータから、格差と再分配の問題を考察した。この本は世界中でベストセラーになったことは多くの人が知るところである。この本の主張を不等式で表すと「r>g」である。「r」は資本収益率を示し、「g」は経済成長率を示す。「資本主義の富の不均衡は放置しておいても解決できず、格差解消のためには干渉を必要とする」というのがピケティの主張である。
 このピケティの関心は今や気候危機に広がっている。ピケティが注目するのは先進国・富裕国の内部の貧困層や中間層。気候政策が自分たちに不利益をもたらすという懸念の強い層だ。気候危機解決のためには、まず富裕国内の富裕層が大きな負担をする必要があるというのが要旨。その象徴がタイトルの「プライベートジェット」となっている。

 以下、同紙の内容の訳を示しておく。なお、時間の関係上、Google翻訳の内容を私が適宜修正する形をとった。

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 経済学者のトマ・ピケティ氏は、富裕層・貧困層間での二酸化炭素排出量の大きな不均衡に対処し、気候政策への反発を防ぐために、気候危機への対応の中心に社会的・経済的階級の問題を据えるべきだと述べた。

 同氏はガーディアン紙とのインタビューで、プライベートジェット、大型車両、短距離フライトといった、不要な温室効果ガスを大量に排出する商品やサービスを合法化しないための規制が必要になるだろうと述べた。

 現在の政策が人々の真のニーズに適合できないことが多い中、富裕国は所得や排出削減能力を考慮した累進的な炭素税を導入する必要がある。

 「階級と社会階級間の不平等に関する研究を、環境問題全般の分析の中心にしなければならない」とピケティ氏は述べた。 「そうしなければ、(強力な行動を支持する人々が)過半数に達することができず、うまくいかないだろう。」

 この著名なフランスの経済学者は、影響力の大きな著作『21世紀の資本』の著者であり、不平等に関する世界有数の思想家の一人である。彼の業績は 2008 年の金融危機後に大きな影響を与え、世界不平等研究所の共同所長として、気候危機への関心をさらに高めている。

 ピケティ氏によると、これまで環境活動家たちは先進国をターゲットにし、その排出量の高さと発展途上国の窮状を対比させてきた一方で、豊かな国における貧困層の懸念に取り組む階級分析はほとんど行われてこなかったという。 「これまでの環境運動の大きな失敗の一つは、階級的側面と社会的不平等を無視する傾向があることだ。これがとても顕著だとわかった。」
同氏は、排出の不平等の問題は、今や、世界で最も差し迫った問題の一つであると述べた。排出の不平等の格差は「現在、19世紀以降に比べ拡大している」と同氏は述べた。これが、一部の方面から気候政策に向けられている批判の主要因である。

 世界中でエネルギーに焦点を当てた政策が不十分なことが、エネルギー・食料・住宅の家計支出割合が富裕層より高い貧しい人々に大きな負担となっている。ピケティ氏によれば、これが反発を引き起こしているという。

 気候変動政策が不公平で、低所得層に影響を及ぼし、贅沢な生活を送る人々はそのままにしていると捉えられれば、5年前にフランスを停滞させた「ジョーヌ・ジレ」のような抗議運動が発生するだろうと同氏は述べた。

 「今や、(排出削減のために)何らかの取り組みを必要とすること、これが富裕層だけではないことは、誰もが理解している。しかし、この取り組みは国民に受け入れられる形で広げる必要がある。これに対処しなければ、至る所で巨大な黄色いベスト運動が起こるだろう。そしてそれは私たちが持っているもののほんの少しである。」

 ピケティ氏は、最も不必要な排出を抑制するための規制と同様に、「累進炭素税」を提案している。これにより、誰もが通常のニーズをカバーする無料の排出枠を獲得できる一方、それを超える活動(頻繁な休日のフライト、大きな家や大型車両など)に対してはより大きな課税がなされる。そのため、最も汚染を引き起こす活動には「莫大な税率」が適用されることになる。

 同氏は、こうしたアプローチが受け入れられるはずだと確信している。 現在、多くのそれほど裕福でない人々は、自分たちが排出抑制策の影響をもろに受けるのではないかと懸念している。

 「多くの人々、より多くの社会経済的に恵まれない人々が、すべてが自分たちに不利となり、全員のために支出しなければならないと感じている。特に地方部の人々はそうだ。これが、今日私たちの直面している政治的困難の大きな部分を占めている」と彼は述べた。 「私たちは、トップの人々が正当な負担をしていることをこれらのグループに納得させるために、できる限りのことをしなければなりません。まさに最上階層にいるプライベートジェットに乗るような人たちから始めなければならない。」

 気候危機は、いわゆるグローバル・ノースと呼ばれる先進国と、グローバル・サウスの発展途上国の対立として捉えられることが多い。しかし、裕福な国内の多くの貧しい人々は、気候変動対策に反対する国家主義的またはポピュリストの政治家に心を奪われる危険にさらされている。

 ピケティ氏は、そのような人々に対し自分たちの利益も守られていると安心させねばならないと主張する。 「この種の国家主義的、国家対国家の感情から逃れたいなら、国家の枠を超えた新しい形での階級の連帯を広げる必要がある」と彼は語った。 「私たちは、最裕福層の貢献度を上げそのライフスタイルを簡素化させることによって[グローバル]ノースの中間層と低所得層を納得させる必要がある。これが[グローバル]サウスの課題解決にもつながると考えられる一方、同時に解決可能なノースの問題もある。」

 ピケティ氏は、こうした改革がなければ、現在の政策は機能せず、「巨大な気候惨事を目の当たりにするだろう」と述べた。

 ガーディアン紙は15人の主要な経済学者と気候専門家に意見を求めたところ、世界中の富裕層と貧困層の排出量の大きな格差は、現在よりもさらに練り上げられた政策を通じて対処する必要があるということで、高度の意見の一致を見た。

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