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GW最後の大雨から考えるこの夏、今後の気候危機

 ゴールデンウィーク最後の土日は、大雨続き。最後の楽しみの機会が台無しにされたとがっかりする人も多いだろう。
 このゴールデンウィーク最後の大雨、ただ「レジャーの機会が奪われた」だけならまだましだ。実は、気候変動のほんの一例であり、さらに引き続く気候危機の前兆であるような気がしてならないのだ。
 2023年5月6日、7日の天気図は、梅雨末期のようにしか見えない。「梅雨前線」に相当するものが中国大陸奥地まで伸びている感じだ。

2023年5月6日の天気図例(資料:気象庁)
2023年5月6日の天気図例(資料:気象庁)

 私の住む福岡の5月6日の降水量は52.5㎜、5月7日は0~14時までで38㎜と、5月にはあまりない大きな数値だ。7日も大雨が降り続いており、佐賀県全域と大分県での一部では大雨警報が発令されている。
 レーダーを見ても梅雨末期のような感じだ。

福岡県の雨雲レーダー(2023年5月7日、ウェザーニューズより)

 そして、そもそもなぜ今頃梅雨末期のような天気、天気図になるのか。私が1つ考えたのが、海水温の高さが影響しているのではないか、ということだ。
 前の記事にも類似のグラフを載せたが、毎日の世界(南緯60度~北緯60度)、北半球の平均海水温の推移。4月中旬以降下がり始めたとは言え、依然過去と比較して顕著に高い状態が続いている。

世界(北緯60度~南緯60度)の平均海水温の推移(資料:Climate Reanalyzer)
北半球の平均海水温の推移(資料:Climate Reanalyzer)

 平年と比較した分布。赤が濃いほど1971~2000年平均からのプラス幅が大きく、青が濃いほどそのマイナス幅が大きい。日本の本州の東側の北太平洋が異常に高い状況が続いているほか、東南アジア~フィリピン南東部も高い状況が続いている。その状況は、4月の方がさらに顕著だった。
 こうした高い海水温が太平洋高気圧の発達を速め、日本南西からの水蒸気の量の流れ込みを増やし、梅雨末期のような天候の形成に寄与したと考えられる。

海水温の平年(1971~2000年平均)比(2023.4.25 資料:Climate Reanalyzer)
海水温の平年(1971~2000年平均)比(2023.5.5 資料:Climate Reanalyzer)

 とは言いながら、現在の海水温は日本の南側の太平洋で20℃台前半と、高まり切っている状況ではない。

日本周辺の海水温分布(2023.5.6 資料:気象庁)

 これが30℃度近く、ないしは30℃を超える状況になればどうなるか。蛇行することが多くなった偏西風の状況次第で、もしこれが北上すれば40℃すら超過し得る猛暑に、南下して北から上空の寒気が下りてくれば特別警報級の大雨やゲリラ豪雨が頻発する、ということになるだろう。このいい例が、6月に梅雨明けしたと思ったらまた戻り梅雨が来て日本海側を中心に豪雨を引き起こし、一部地域では「梅雨明けなし」となった去年の夏だ。
 この天気の兆候が表れたのが前半は暑い晴天が続く一方、最後の土日は梅雨末期のような天気になった、今年のゴールデンウィークともいえる。
 この夏の天候への備えとともに、平均気温上昇を抑制し気候危機を防ぐために、脱炭素への取り組みが緊迫化していることを考えさせられる。

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