うつつ夢

 私は夢から覚めることができる。

 生まれて初めて夢から覚めたのは十四歳の時だった。目を開けると私はベットに寝ている二十歳の大学生で、横には二年前から付き合っている彼女がまどろんでいた。
 それから私はそのまま大学を卒業。就職をしたことで遠距離になり数年後に彼女の浮気が発覚したことで、電話越しの彼女に思いつく限りの罵声を浴びせてから、その勢いのまま夢から覚めた。

 私の言っていることの意味がよく分からないのなら、漫画でたまにある二重の夢オチを想像してもらえればよい。「夢から覚めたと思ったらそれもまた夢だった」というあの感覚がとても近い。
 十四歳——つまり初めての十四歳という意味だが——に初めて夢から覚めてから今までに、数え切れないほどの夢から覚めてきた。

 そして夢から覚め出してからずいぶんと長い間は、他の人も同じようにして生きているのだろうと漠然と思っていたのだ。

【続く】

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