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手記「いいから、イイカラー!!」

<イラスト集「魔法」収録作品「いいから、イイカラー!!」に関する考察ノートです。>
※この文章は作品と共に収録予定であるため、途中より販売する形式を取らせて頂いております。ご了承下さい。
※収録時、文章の改変を行う可能性がございます。ご了承下さい。
※本記事内に実際のイラスト作品の掲載はございません。ご了承の上ご購入をご検討下さい。


ようやく一枚、収録作品を描き上げることができました。
最近は「イラスト作品」を描く時間が極端に減ってしまっているためこの企画も進捗が芳しくなくいけないです。

「鮮やかな絵」「カラフルな絵」を描こう、と出発したこの絵は一番最初のイメージラフを2013年の1月に描いています。
当時淡い色調や暗いテーマが自分の作品のアイデンティティになっているのを自分でもあまり良いことではないかな、と自負しているくらいで、なのでこの絵を描こうと立ち上がったのを思い出します。
「もっと明るい絵描けばいいのに」というセリフを一体何人の方から言われたことか(笑)
でもおっしゃる通りだったりして、「ドラゴンとゴンドラ」や「ファイア・ウォールでフェア・ウォーを」のようなハートブレイクで始まった僕と絵のお付き合いが「じゅうたん」のようなハッピーエンドを迎えるためには「インストール」のように心を進化させ変化させて“プラス”にする必要があったのですが、それにはやはりどこかのタイミングで好転して上向きや前向きになるタイミングがあったはずで、それはどこなんだろうと深く思い返さなかったことが僕の絵を物悲しく、暗くしていた原因だったように思います。
で、そんな風に人に言われ始めたことをきっかけに“明るい”とか“元気”、”笑顔”のことについてすごく考えました。
元々とても好きなことですし、僕はどちらかと言えば笑っていたい人間だということも思い出しました。
そしてなにより“笑顔”に人が集まることを忘れていたことを思い出し、さらにそれを受け入れられない時期があった時のことを思い出すことができました。
ただ、その両極を繋ぐ瞬間がどうしても思い出せず、もやもやと時間を費やすのです。
いつもと変わらない時間が過ぎました。
とにかく仕事を沢山したくて沢山宣伝しました。
頭がいっぱいになった時は寝て、絵が描きたくなったら描いて、周りに出来るだけ心配をかけないように過ごす。
普通に泣いたり笑ったりして過ごす。
明るい時もあって、暗い時もある。
嫌なことを言われて凹んじゃう時も、嫌われちゃうこともある。
でも褒められることも、好きだと言ってもらえる相手もいる。
しばらくそういう自分を俯瞰で見る時間が続きました。

で、そんな中で何となくこれかな?と思えるその移り変わりの鍵が見つかるのですが、これがまたしょうもないもので、



“まあいいや”という感情だったのです。


人がものを忘れてしまうメカニズムは詳しく知りませんが、僕は事故や病気でない限り“まあいいや”と脳が判断した記憶から順に奥底へ追いやられ忘れ去られていくのかな、と何となく考えています。
悲しい記憶も嬉しかったことも“まあいいや”と判断できた事柄から“昔”の引き出しに入って“今”の陰になっていく。
僕が暗かったり悲しかったりする絵を描く要因になっていた事柄も当時は僕にとって悲しかった出来事で絶対に忘れることは出来ない自分の一部だと思い込んでいたのですが、絵として発散し、新しく全く関係のない人や物事と出会い時間が経つことで“まあいいや”と判断され“昔”に追いやらる。
そうやって空っぽになったところで人は泣くのか笑うのか、僕は“まあいいや”と笑顔になれたのだと分かりました。
こんなちょっとしたことが出来なかったから長い間俺は苦しかったのか、とこの“まあいいや”をちょっと軽視していたのですが、それからだんだんと“まあいいや”が大好きになり凄いことにも感じられてきて、結果この絵のテーマは“まあいいや”だ!ということになるです。

“まあいいや”のおかげで空っぽになれた時、とても心は軽く、鮮やかになりました。
前向きになれました。
そういう鮮やかな感覚を何で表現しようか考えた時、苦しんでいた頃に趣味なんかで撮り溜めていた当時の写真群を見返すと家の周りや出先で撮った風景写真が多くあって、そこにはとにかく花が沢山写っているのです。
これは取り入れろ、ということだろうと判断するのは早く、この絵は鮮やかな花も丁寧に描こうというように決まってきたため制作が進み始めます。
ラフも構図も何となく定まってきました。

しかし当時の忙しさに紛れてこの絵もここでしばらく眠らせてしまうことになります。
再び筆を入れるのは、そこから3年後のこの夏のことです。
雑誌社様からのお声が掛かった今年2016年はありがたくも漫画連載の仕事を請け負っています。
久しぶりの専門書への執筆案件、ぜひとも請け負わせて頂きたいけど…締め切り短い!
どんな絵を描こうか考える時間すらない…どうしよう…、


そうだ、“まあいいや”の絵があった(笑)


そうしてこの絵はそんなお仕事をきっかけに完成を迎えることが出来ました。
この「魔法」の企画において本当に重要な一枚になる絵なので、とにかく完成してよかったです。
お声かけ下さった編集者様、きっかけを下さってほんとうにありがとうございました。


制作は順調に進みました。
一つ手を加えたのは、ラフ段階では少年からハート型のダイヤモンドが発射されていますが、それを急きょとある話を思い出して“毛玉”っぽい表現に変えたことです。
「物事を受け入れやすいように、温かく柔らかく、弾力のあるハートでいることが大切」という話を、僕に影響を与えて下さった皆さんが口にしていたのでした。
この絵にもその要素必要かな、と思ったのです。


また一つ、変だけどいいかも!と思いえる絵が出来ました。
明るい絵と言っていいのか微妙なところですが…“まあいいや”(笑)


“まあいいや”って究極の魔法なのかもしれない。


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