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#32 生地胴=ジーンズ論 vol.8

■13 ネットで防具を買う時代が来た

剣道愛好家のなかには、特に防具好きな人がいるもので、インターネットが普及するようになると全国の愛好家と画面の上で談議を繰り広げるという新たな楽しみも生まれてきた。内容は多岐に及ぶものの、その中に生地胴に憧れる人はほんの僅かながらも存在し、情報交換がされていくのは自然の流れであったと言える。見た目の良さ、安価で購入できるメリット、そしてそれをどこで購入できるのかという情報は共有され、少しずつではあるが、ユーザーの輪は広がっていくことになる。
ご存じのとおり、インターネットは、ユーザーに選ぶ権利を広く持たせるようになり、結果的に防具の価格をはじめ、扱う業界の在り方を一変させた。これには良し悪しはあり、筆者にも思うところはあるが、それは別稿に譲ることとする。

※防具=剣道具

■14 順列の変化

インターネットの普及に比例するかのように、生地胴の認知度は少しずつ高まっていった。序盤で述べたように生地胴は、本来稽古用のものであり、防具を入手する際の入口にあるもののはずであった。しかしこの頃、一般にはすでに黒胴が基準となっており、必ずしも上級者が革貼りの竹胴を使うことにステータスを求めなくなった。その結果、押しあげられるかのように生地胴のほうが順列が上だと誤解されることとなった。

■15 再び市民権を得る

この時点では、ユーザーが入手しやすい「生地胴」は綺麗に拭き漆で仕上げられたものであったことは先に触れたとおりである。
本漆塗よりもローコストの拭き漆とはいえ、本格的な竹と革で仕立てられた胴。その上どれだけ使っても傷や汚れが気にならない、稽古にもってこいの道具であるという本旨は大きくは揺るがないまま、ネットの力も借りながら少しずつ生地胴が市民権を得るようになっていく。これが2000年代半ば頃のことである。

■今回のあとがき

生地胴倶楽部稽古会より

自惚れたような書き方で恐縮ですが、ネット上でスタートした生地胴倶楽部の存在は、昨今の生地胴ブームに大きな影響をもたらしていると私自身は見ています。
生地胴倶楽部をFacebook版として立ち上げたのは2015年のことですが、さらにその10年ほど前からインターネット上の掲示板やコミュニティ、そのオフ会などで生地胴が小さな盛り上がりを見せ始めました。
さらに10年遡ると山中武道具さんの広告の生地胴企画があり…
というように、それなりに時間をかけて生地胴の輪が広まってきていることが感じられます。

また、今回の冒頭にあるようにインターネットの普及により、剣道具の在り方は大きく変わりました。
そして剣道具談義も盛んになってくると「本来の正しい情報」があちこちで主張されるようになりました。
正しさを主張する声は方々からあり、解釈も複数存在しています。

この連載も、どうしても私が知りうる世界のことを書くことになるので、全く違う見解が存在するかもしれません。もしそのような違う見解があればぜひお聞かせください。
そこからさらに新たな発見につながることになれば嬉しく思います。

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