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非現実的なストーリーにリアリティーを持たせる―「つましょー」キャストの演技のすごさとドラマの魅力

 こんにちは!

 久しぶりの記事投稿です。

 今回の僕が見ているドラマについての話です。宜しければ最後までお付き合いください。

 個人的に連続ドラマは,「良いドラマがたくさんあるクール」と,「良いドラマがほとんどないクール」というのが交互に来るものだと思っています。1月から始まった新クールはどちらかといえば後者に当たると個人的には思います。

 そんな中,僕が今のクールで1番好きなドラマがあります。

 それは毎週金曜日夜10時からTBS系列で放送されている「妻、小学生になる。」というドラマです。

 このドラマは,村田揶融さんの同名漫画を原作としたドラマで,10年前に妻を亡くし,失意の中,無気力に日々を送っていた愛妻家の夫とその娘が「妻の生まれ変わり」として彼らの前に現れた10歳の小学生との交流を通して,再び前を向いて歩き始める,「家族再生」の物語です。ドラマでは,主人公となる愛妻家の夫・新島圭介堤真一さん,不慮の事故で亡くなった妻・貴恵石田ゆり子さん,圭介と貴恵との間に生まれた一人娘・麻衣「万引き家族」など,是枝裕和監督映画の常連として知られる若手演技派女優の蒔田彩珠さん,「妻の生まれ変わり」として圭介と麻衣の前に現れる小学生・白石万理華をNHK朝の連続テレビ小説「おちょやん」で杉咲花さん演じるヒロインの幼少期役を演じて話題となった子役の毎田暖乃さんがそれぞれ演じています。

 このドラマの最大の魅力はなんといっても,「現実離れした設定にリアリティーを持たせる役者陣の演技」これに尽きると思います。

 以下,ネタバレを含む要素がありますので,ネタバレしたくない方は本作をTVerやParaviなどの見逃し配信サービスでご覧になってから読まれることをおすすめします。

 第1話では,冒頭で貴恵がいた頃の楽しい時間が描かれた後,事故によって貴恵が亡くなり,生活に張り合いがなくなってしまった今の新島家の様子に移り変わります。

 仕事場でも「役職定年」として,部署を異動させられ,年下の守屋好美(森田望智)の元で働くこととなった圭介と,専門学校卒業後,定職に就かずに引きこもってしまった麻衣。

 そんな2人を見かねてか,貴恵が亡くなってちょうど10年となったとある日の夕刻。新島家に来客が。

 その来客というのが,今世では小学生の白石万理華として生きる亡くなった妻の貴恵だったのです。見た目は小学生なのに,妙に大人びていたり,家の構造や気に入っている皿などを把握しているなどの点で「ひょっとして……」と思う圭介ですが,麻衣はその様子を訝んだまま。

 そうこうしているうちに圭介と万理華は連絡先を交換し,頻繁に会う仲に。

 そんな中,ある日,貴恵(万理華)から圭介と麻衣のもとにとある「贈り物」が。

 圭介には,食品会社に務める圭介が後の妻となる貴恵と新商品の開発をしている最中,居眠りしてしまった圭介を起こすために貴恵が作った特製の「ハバネロ入りミートボール」の入ったお弁当,麻衣には,毎年誕生日ケーキで誕生日を祝っていましたが,貴恵が亡くなった11歳から祝えていなかったため,11歳から20歳までの分の飾りつけがなされた誕生日ケーキがそれぞれ届きます。

 これをきっかけに「万理華は本当の貴恵の生まれ変わりだ」と信じるようになった2人。その後2人は,万理華の通う小学校へ向かいます。

 そして,貴恵と圭介がお互いの印象について語り合います。このシーンは,個人的に最近見たドラマの中でも屈指の名シーンだと思うので是非見て欲しいです。

 最後に圭介と貴恵(万理華)は抱き合いますが,何も知らない小学生たちは圭介を不審者だと思い込み,携帯している防犯ブザーを一斉に鳴らされますが,万理華が圭介のことを「親戚のおじさん」だと言い,圭介と麻衣の手を取り,走ります。

 第1話はこのような感じです。2話以降は書くと膨大な量になるので,割愛します。

 その後,話が進むにつれて,万理華の今世での家庭(母親の千嘉(吉田羊)にネグレクト気味に育てられている)と,貴恵としての新島家の家庭という「2つの家族」の間で揺れ動く心の葛藤や,会社内での圭介と守屋のやり取り(守屋が圭介に少し思いを寄せている?),ホームページ製作会社への就職が決まり,働き出した麻衣と取引先の工務店のお兄さん・愛川(杉野遥亮)との関係性などが描かれていきます。

 話の中心にいるのは,いつも貴恵(万理華)。この難役を演じる毎田さんの演技力が素晴らしい。「10歳の小学生」という子供らしい部分と,「アラフォーのおばさん」という大人びた部分の演じ分けが絶妙ですし,喋り方や仕草などの細かいところまで本当に上手いです。このドラマでの毎田さんの演技を見たとき,「家なき子」の安達祐実さんくらいの衝撃を感じました。今後,このような子役はしばらく出てこないと思います。期待の逸材ですし,このドラマを引っ張っていくのは間違いなく彼女と言っても過言ではありません。

 そんな貴恵の周りに圭介や,麻衣がいる。

 麻衣を演じる蒔田彩珠さん

 僕は,このドラマで初めて見たのですが,映画で磨かれた演技は流石でした。「妻の生まれ変わり」と名乗る万理華をどこか信じられず,相対したりしていく中で,徐々に万理華のことを「貴恵」として受け入れ,接していきながら,圭介と貴恵を温かく見守る様子と,どこか人見知りながらも仕事先で奮闘する姿を器用に演じています。

 ほかにも,どこか控えめながらも圭介のことが気になっている上司の守屋を演じる森田望智さんや,貴恵の実の弟である由利を演じる神木隆之介さん。神木さんは第1話では声だけの出演でタイトルバックに名前がクレジットされていなかっただけに第2話で登場した時には驚きの声と共に,毎田さんとの「新旧天才子役対決」などと言った声も飛び交いました。

 さらに,麻衣がよく訪れる「寺カフェ」のマスター役を演じる柳家喬太郎さん。話し方や性格はどこか中性的ですが,麻衣をはじめ,新島家の様子を温かく見守っています。その「寺カフェ」の常連客・中村役として,お笑いトリオ・東京03の飯塚悟志さんも出演。物語に花を添えています。なお,飯塚さんは「この恋,あたためますか」「この初恋はフィクションです」から立て続けにTBS系のドラマに出演しています。

 そして,今世で万理華が暮らしている白石家のシングルマザー・千嘉を演じる吉田羊さん。昼夜逆転でお弁当屋で働き,万理華と入れ替わりの生活を送るネグレクト気味でヒステリックな母親を「怪演」しています。

 万理華のことを大声で怒鳴ったりする反面,自分も母親からネグレクトされていた過去を持ち,万理華とどう接していいか,悩みながら母親として葛藤していく姿も同時に描かれています。

 第5話で万理華が「貴恵の生まれ変わり」であり,今世での記憶が無くなっていっていると告白した際には,同席していた圭介に詰め寄る場面もありましたが,戸惑いながらも受け入れることを決めました。

 実は,万理華は生まれ変わりの影響により,今世での「白石万理華」としての記憶が徐々に無くなっていくという設定でもあるのです。

 そんな実力派が揃ったこのドラマの主題歌は,優河さんの「灯火」。エンディング間際に流れるどこか悲哀漂うメロディは,同じくTBSの日曜劇場「テセウスの船」や,火曜ドラマ「中学聖日記」の主題歌を担当したUruさんを彷彿とさせます。

 なお,脚本は大島里美さん演出(監督)は坪井敏雄さんが務めています。

 監督の坪井さんは,同じくTBSの火曜ドラマ「私の家政夫ナギサさん」でも監督を務めました。オープニングで,ドラマのタイトルが「ランドセル」や「ドアの窓」といった所に表示されるなど,「ナギサさん」を踏襲した演出がいくつか見られます。

 最後に,最初トリッキーな設定で見る気がなかった人も1度見ればこのドラマの良さにハマって来週もまた見たいと思うこと,間違いなしのドラマですし,個人的には「1週間の癒し」となっているドラマです。

 金曜の夜10時にテレビの前に家族集まって是非見て欲しいし,今後の展開が気になる素敵な作品です。

 長くなってしまいましたが,今回も最後まで読んで下さり,誠にありがとうございました。

 春の足音ももうすぐそこまで近づいてきていますが,まだまだ気が緩めない季節です。朝晩は寒くなりますので,皆様,体調には充分お気をつけください。

 そして,次回の投稿もお楽しみに。


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