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5ヶ月15日

 あの頃もし、憧れたのが、漫画のくだらないパロディエロ同人誌即売会と、その作家さんなどでなかったら。もっと高尚な、文芸や、アートや、芸術、などであったならば。いやしかし、人間は、自分の内にあるものに惹かれ、出逢っていく。あれは、あの頃の自分には丁度よい、それ以外には上京の理由など見いだせない、ぴったりの出逢いだったのだ。

 いつでも絵が上手くなりたいと思っていた。絵さえ上手くなれば人生拓かれると単純に思っていた。目を背けたくなる恥ずかしくみっともない幼い自分の記憶が蘇る。普通の高校生よりも、その頃の自分は幼稚であったと思う。その片鱗はもう小学校の頃からあったけど。自分は自己愛性パーソナリティ障害とか、そういった類のものだったのではないかと、少し知識のある今になって感じることがある。もうあの頃の自分はほんとうにいなくなったのか?怪しいところではあるが、とにかく息子に同じ咎を背負わせてはならない。

 秋を告げる夜風が吹く。

 夏の祭りが終わればやませが吹き、秋が来て冬が来る。

 息子が私の母、彼の祖母の腕に抱かれながらウーウーと泣く。去年まで私のお腹の中に居たのに。毎日毎日大きくなって、毎日毎日可愛さを増す。嬉しいけれど、少し疲れている自分に吹く優しい風。私も疲れているけど、母も相当ではないか。親孝行のつもりで、父のいない子でも産んだけど、迷惑だったのではなかろうか。

 あと何回両親とともに、この幸せな夏を過ごせるのか。両親も自分も病気などではないけど、当たり前に我々は毎日年を重ねていく。そしてだんだんと、私は力をもっとつけて、社会の中で再び人の役に立とうとし、生きていかないといけないのだ。こどもを授かるとは、私にとっては、そういうことだ。私達の命は次世代が生きられる世の中を創るためにはたらいている。どの生き物もそうであるように。

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