小坂流加(2017)『余命10年』文芸社文庫NEO

余命が10年と言われた女性の、その死までの心の移り様を描いた物語。特筆すべきは、筆者がまさに死を目前にして本作に取り組んできたということであろう。そうした背景を分かった上での読書体験となることで、一層言葉の重みが増すように感じる。

「死」という感覚の描写が書中に登場するが、この世の誰にも分からない感覚であるにもかかわらず、どこか描写が現実的で、真剣な気持ちになってしまう。また、主人公を傷つける友人の言葉などの描写から、"特別"な人の置かれた一筋縄ではいかない状況をまざまざと浮かび上がらせる。映画化が楽しみである。

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