新井和宏・高橋博之(2019)『共感資本社会を生きる:共感がお金になる時代の新しい生き方』ダイヤモンド社

今を犠牲にして蓄財することを良しとするこれまでの資本主義社会ではなく、満ち足りた今を他者と繋がることで実現し幸福に生きる共感資本社会を構想する対談本。特に、食と金という2分野でそれぞれ実践をしている著者2人の語ることであるから現実感があり地に足がついていると思える。

成熟社会にあって、無条件に追い求めればよいものが無くなった現代人に共通する心の病が生きる意味の喪失であろう。本書は今を幸せに生きることをその意味として定義し、その方策を示している。この点はまだ異論もあろうが、一定数の人の支持を得られる議論でもあろう。本書の示す、他者との共同体感覚に組み込まれる生活という方策が持つ効果は侮れない。浮遊する原子たる都会人を、共同体の網に組み込む装置はまだまだ足りない。理念を共有する実践が更に多く産み出されることを目指したい。

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