上杉隆(2011)『官邸崩壊:日本政治混迷の謎』幻冬舎文庫

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第一次安倍内閣の誕生から瓦解までを、実名の登場人物が織り成す権力闘争を中心に描く「小説みたいな」一冊。日本の報道では執筆記者名とともに匿名化されがちな権力中枢にいる者たちの思惑や判断内容を取材に基づいてしっかりと書き込んでいる。

そもそも署名記事・リソースの明確化が当然の諸外国のジャーナリズムでは恐らく当然のことであろうが、どんな公共機関でも中身は何人かの生臭い人間によって運営されている(しかも権力のレベルが上がっていくに従ってより属人的になる)のであるから、本書のような切り出し方はあって然るべき。

収録内容から得られることとしては、組織運営における人事と情報とタイミングの大切さ。崇高な理念も具体的に解説されなければ理解は広まらない。正しいことは「正しい」というだけの弁論では通らない。

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