一木けい(2020)『全部ゆるせたらいいのに』新潮社

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別に望んでなんかいないのに、子どもは両親を選べなくて、しかもその家族の中で人間として自らが形作られていく。暴力を受けた覚えしかない父親でも、どうして死んだら悲しいのだろう。何を後悔しているというのだろう。

不可解な感情を呼び起こすのも、「家族」というものの魔力だ。体の奥底に染み付いた呪いのような、でも祝福されるべき絆。強すぎるゆえに、凶器にでもなり、宝物にでもなる。受け入れられるわけないのに、すがってしまう。そんなことも全部ゆるせたらいいのに。

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