僕たちと“会計の未来”を語ろう[前編]
日本を取り巻く環境は目まぐるしい変化を遂げています。AIの台頭、5Gによる通信高速化、少子高齢化社会、生産性向上の取組……。これから日本経済、そしてFintech、会計業界はどう進化していくのでしょうか。
すぐそこまで来ている未来に目を向け、当社の提供する価値について議論すべく、マネーフォワード代表の辻、クラウド事業責任者の竹田、グループ会社であるクラビス代表の菅藤、ナレッジラボ代表の国見4名で「会計の未来」をテーマに対談を行いました。
自動化で「会計」という概念が変わる
辻:
昨日ちょうど新しいプロジェクトメンバーとの合宿で素晴らしい話をしていたんだよね。菅藤さんは誘ったのに来てくれなかったんだけど。
(一同笑)
辻:
お金の流れが全て自動化したら「会計」という概念が変わるのでは、という話をしていて。
辻:
例えば僕と国見さんとで取引が発生したとして、「あの案件、500万円でお願いします」と国見さんにメールかチャットで送ったら、国見さんからは自動的に契約書が送られてきて、それをOKしたら請求書のデータがそのまま僕の会計ソフトに入って、「支払いボタン」を僕がピッて押したら銀行のAPI経由で500万円を支払って、国見さんはそれを記帳して終わり、みたいな流れ。
記帳も参照APIでデータを取り込んで、例えば僕から500万円払われてなかったら、自動で僕にメールとか電話がきて「早く払ってよ」と言われる。
(辻)
辻:
そういう商取引が発生した瞬間に後ろの作業がすべて自動で終わる世界が、おそらく3年とか5年で実現するんじゃないか、という話をしていました。
菅藤:
僕は昨年オランダとロンドンに出張に行ったときに、東インド会社の話を聞いてすごく感銘を受けたんですよ。取引がわかるように「簿記」という概念が生まれて、見えないものを見える化する・定義する専門の仕事が生まれて、記録しやすいように紙に残して、脈々と現在に至るまで受け継がれているんですよね。
(菅藤)
菅藤:
基本は辻さんの言ったとおり、「取引を明確に記録する」ということ以外にない。だから取引がデジタル上で瞬間的に行われるようになったら、取引の記録もデジタル化されて当然だと思うんですよね。
そうすると、「記録すること」自体には価値が無くなっていき、「取引の結果を会計という形に変換する」ところが次の課題になっていく。課題に対して国という単位できちっと整えようという動きは、例えば韓国のホームタックスのようにインフラから整えるという手法もある。
じゃあ日本でも国がインフラから会計システムまで完璧に作れるかというと、ビジネスのフローに合わせたサービスじゃないとそこはフィットしない。国がつくるインフラとビジネスをつなぐ、そこがマネーフォワードの役割なのかなと思っています。
国見:
私も中小企業の経営者と話す中ですごく課題に感じている点があって、経営にデータを活用するまでに3つぐらいステップがあるんですが、その1つ目でつまづいていることなんですよね。
「経営にデータを活用する」が最後のステップになるとしたら、その前のステップが先ほど菅藤さんがおっしゃったように「データを会計に変換する」という問題がある。さらにもうひとつ前の段階の「紙からデータ化する」というところで既につまづいているんです。
(国見)
国見:
結局そこでつまづいているから会計もできないし、経営活用が難しくなってくる。最初のステップのデータ化が一番クラウドとの親和性がいいので、ここに注力することが一番大事なのかなと思っています。そこができれば、会計業界の仕事もガラッと変わる。
今はデータ化する仕事でパンパンになっちゃって、経営のサポートができていない。会計事務所もサポートしたくないわけじゃないんですけど、物理的に無理なんです。
辻:
そこはSTREAMED(※クラビスが提供する自動記帳ソフト)を利用したり、金融機関等とAPIで連携していけば良さそうですよね。いま僕たちがやっていること以外だと、あと何をすれば進められるんでしょう?
国見:
僕はマネーフォワードのソリューションでかなり解決すると思うんですけどね。
ーーー それがなかなか導入されていかない背景は何なのですか?
国見:
まず日本のクラウド化がまだまだこれからだということが大きいんじゃないかなと思います。あとはやっぱり日本は紙の文化なので、そのあたり腰が重いところはあるかもしれませんね。
辻:
5Gの時代がきたらそれも変わると思うんですよね。スマホで全部のデータを見られるだろうし、VR・ARが発展してリモートで会議をしてもリアルで会うのと変わらない感じになると思う。
菅藤:
例えば、韓国みたいにクレカを使ったら宝くじがもらえるとか、控除があるとか、あるいは小売にクレカの端末を置いておくことを義務化してペナルティを課すとか、そういう強烈なインセンティブがあると変わるかもしれないですけど、日本はそこまではやっていないですよね。もしかしたら今は、変革が起こる前夜ってことなのかもしれないですね。
今はあの「インターネット前夜」に似ている
(竹田)
竹田:
10〜15年前にいわゆる「IT化」が起きたんですけど、いまってそのIT化が起きた前夜に状況としては似ているのかなと思ってます。
僕が前にいた調査会社も、以前は街中で女性が「あなたタバコ吸ってる?」とか声をかけてアンケートに回答してもらって、それをExcelに打ち込んで集計して……それに2ヶ月もかかってたけど、それが全部オンライン上で完結して24時間で終わる、という環境に変わった。
最初のうちは「インターネットを使っている人なんて特殊だから、バイアスがかかっていて信用できない」なんて言われていたけど、1年経ったら「インターネットを使っていない人のほうがむしろ特殊だよね」という流れに変わっていったんです。
菅藤:
辻さんは当時証券会社でデジタル化を見てきたと思いますけど、キャズムを超えたタイミングがありましたよね?
辻:
僕がソニーからマネックスに行ったとき、株取引といえば電話か対面だったのが90%以上ネット経由に変わって、「オンライン化することでこんなに業界が変わるんだ」というのを体感しました。
オンライン化で変わる業界と変わりにくい業界が世の中にはあると思うけど、変わることに成功した業界は「10倍効率がよくなった」か「手数料が1/10以下になった」かなんですよ。ネットの株取引なんかはコストが1/10以下になりましたよね。一方で生命保険は1/10までにはなっていなかったりする。そういう意味では、バックオフィスのクラウド化はコストが1/10以下になるぐらいのポテンシャルはありますよね。
菅藤:
竹田さんの言っていたネットリサーチも、劇的にコストが安くなりましたね。
竹田:
一つ違うのは、ネットリサーチの場合モニターとアンケート会社と調査データを欲しい人が全部オンラインでつながってたんですよね。会計の場合、手元のツールでクローズだったのでつながっていなかった。これがクラウドになることによって初めてつながる世界になるから、実は前回のIT化のときにITだけでは変化できなかった領域が会計だったりするんだろうね。
「楽しいトランザクション」をいかに多くつくるか
辻:
もう一つ気になっているのは、同じ取引にも様々な意味合いがあるということ。
例えば、仕事で同じ10万円をもらうケースでも「楽しい仕事」と「楽しくない仕事」があるじゃないですか。取引に対して良い・良くないの評価をつけていくと、「満足度が高い取引」が可視化されていく。取引の価値がお金だけじゃなく、エモーション的な満足にもなっていくのかなと僕は思っていて、それをマネーフォワード MEでずっとやりたいと思ってるんだよね。
例えば市川さん(※当社のCISO)が「バイクにお金使い過ぎです」とかをマネーフォワード MEに言われたらたぶん嫌がるじゃないですか。「俺はそのために生きてるんだから良いんだ!」って。
竹田:
僕、MEに毎回言われるもん。「一般的な家庭よりも使いすぎています」って。
(一同笑)
(毎月マネーフォワード MEに怒られている竹田)
菅藤:
毎日暗い顔してソシャゲしながら通勤している社会人を見ると「みんな仕事が楽しければゲームする時間を惜しく感じるだろうに」と思ったりする。仕事してお金を稼ぐことは本来楽しいことなので、その楽しさを作っていけるといいなと思いますよね。
辻:
必要なのは数字だけじゃなくて、「今月は頑張ったね」「売上立ててえらいじゃん」「先月より増えたね」とか褒める要素。みんな毎日一生懸命生きているから、それを肯定してくれるようなコミュニケーションがもっとあったほうが、世の中明るくなる気がするんですよね。
菅藤:
すごくわかります。さっき打ち合わせをしていて、営業にSTREAMEDをめっちゃ褒めてもらえたんですよ。すごいうれしくて。
ーーーそういう意味では、マネーフォワード MEの「給料が振り込まれました、お疲れさまでした!」ってすごい良いコミュニケーションですよね。
辻:
「節約しろ」ばかりいわれたら、正論だとしても嫌ですよね。使っていて楽しいことを提案したいよね。
菅藤:
楽しさって、例えばHondaが行ったビジュアライゼーション(※)みたいに、お金の流れを可視化するってことなのかもしれないですね。経済を活性化するにはタンス貯金してちゃダメで、お金が循環しなきゃいけない。右から左にお金が移動してトランザクションが増えると光が増えたり、ビジュアルで楽しい要素があると、もっとお金を動かそうと思ってもらえるのかもしれない。
辻:
「あなたは経済にお金をいくら回しましたよ」というのを可視化をしていくということだよね。たしかにそういう楽しさは必要なのかもしれないね。
(つづく)
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対談の続きは、後編にてご覧ください。
[photo by 鈴木智哉]