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乳化を身近に!From Factory to Kitchen 小型乳化デバイス『CLOSER FINEMIX』の開発

要旨

乳化という技術は、私たちの生活にはあまり馴染みがないかもしれませんが、実は我々の身の回りの多くの商品で使われ、多くの機能を生み出しています。今やこれらの商品作りに必要不可欠であるとともに、今後も多くの可能性を秘めた技術だと言えます。しかし、現在の商品作りの現場の乳化プロセスでは乳化剤を用いることがほとんどで、乳化剤に頼らずに、より自然で健康的な方法で乳化を行うことは、今日の食品科学における新しい挑戦です。
 私たちの小型乳化デバイス『クローザー ファインミックス[CLOSER FINEMIX]』は、その挑戦を具現化したものであり、家庭でも簡単に乳化ができるように設計されています。この記事ではこのクローザー開発の想いと、クローザーが出来る事の事例として、チョコレートの調理用途の新しい可能性についてプレゼン形式で報告します。

プレゼンテーション動画

本文

皆様、こんにちは、オクテックの乳化ラボです。突然ですが、「乳化装置」とはどんなものかご存知ですか?乳化という言葉は聞いたことがあるけど、装置は知らないというかたがほとんどではないでしょうか?ましてや、乳化装置を使って家庭で調理した事のある人は、まずいないと思います。
しかし、もし身近に簡単に使える乳化装置があったらどうでしょう?
それが今日のテーマです。この『CLOSER FINEMIX』で、乳化の未来について一緒に考えさせ てください

1.乳化とは?

まず、乳化とは水と油のように本来混ざり合わないものを混ぜることですが、その目的は、まったく性質が違う物質を組み合わせて、新しい性質や性能を生み出すことにあります。 これにより、例えば、化粧水ですと、“しっとりして、さらさら”といったように水や油の性質だけでは生まれなかった性質を生み出します。

スライド1:乳化とは?

2.乳化技術を活用した商品

乳化技術を使った商品は、石油化学製品の多様化に伴い、新しい性能や機能を持つ商品が次々と開発され、現在では、化粧品分野や医薬品分野をはじめ、様々な分野で我々の生活の身近な商品として販売されています。では、どのように乳化されるのか一般的な製造プロセスを見ていきましょう!

スライド2:乳化技術を活用した商品

3.一般的な乳化のプロセス

水と油と水は容器に入れると完全に分離していますが、そこに乳化剤や界面活性剤と呼ばれる物質を添加して、機械的に混ぜることで、乳化剤を介して水と油が仲良く混ざりあい乳化します。この混ぜる機械が乳化装置と呼ばれるもので、用途により様々な種類のものが使われています。しかし、乳化するには乳化剤が必要で装置だけでは安定的な乳化できないという課題があります。

スライド3:一般的な乳化のプロセス

4.乳化剤に頼らない乳化

このスライド4の左の図が乳化剤を使って乳化した粒子のイメージ図です。例えば、化粧水であれば、その有効成分である油の粒が乳化剤で全面覆われた粒子になっており、せっかくの有効成分が直接肌に触れているのでなく、最初に乳化剤が肌に触れることになります。
それを我々は右の図のように乳化剤を使わず”裸の油滴”にできないか?と考えています。加熱処理や添加剤に頼らず、より自然で健康的な方法で乳化を行うことは現在の食品科学の挑戦でもあります。しかし、この”裸の油滴”を数年に渡る長い期間、分離せずに安定的に保存することは現在の技術水準をもってしても簡単ではありません。そこで考えたのが長期保存を必要としない使い方です。つまり、消費する場所で乳化するというアイデアです。例えば、家庭や飲食店などで簡単に乳化できるデバイスがあれば新たな価値が生まれ、新たな使い方が生まれるのではないかと考え、スタートさせたのが、乳化装置を消費現場に近づけるとの意味を込めた「クローザー(CLOSER)」の開発でした。

スライド4:乳化剤に頼らない乳化

5.『CLOSER FINEMIX』の開発

そして新たな技術開発ともにようやく開発に漕ぎつけたのが、この調理用乳化デバイス「CLOSER FINEMIX」です。これはミキサーのように回転するカッターを持たないのが特徴で、ノズルから噴射する水流だけで乳化します。

スライド5:CLOSER FINEMIXの基本仕様

6.クローザーの乳化原理

このCLOSERの乳化原理は、シャワーヘッドなどのテレビコマーシャルで話題のウルトラファインバブルの生成技術を応用した特許技術で、ノズル内を高速の渦流を発生させることで水と油を細かく分散させる方式により、小型化を実現しています。

スライド6:クローザーの乳化原理

7.チョコレート調理用途の紹介

さて、ここまで乳化技術の話をしてきましたが、ここからは、チョコレートを具体例として、CLOSERでどんなことができるかを紹介させていただきます。まず、チョコレートを使った幾つかの実験をご紹介します。

スライド7:チョコレートを使った乳化実験

8.カカオ豆の成分

皆様はチョコレートドリンクを飲まれますか?チョコレートドリンクを楽しむ際に、ザラツキ感や沈殿を感じたことはありませんか?
商品によって割合が異なりますが、ハイカカオのチョコレートではカカオバターと呼ばれる油脂分が50%程度含まれています。ドリンクにした際に残るザラツキ感は、液体とカカオバターが、本来混ざることのない水と油であることに起因すると考えています。

スライド8:カカオ豆の成分

9.カカオバターの乳化実験

そこで、まず1つめの実験は、お湯にカカオバターを溶かしホイッパーで手混ぜしたものと、CLOSERで乳化したものを比較評価です。左の写真は皆様もイメージしやすいと思いますが、ドレッシングと同様、一生懸命混ぜても全く乳化せずすぐに分離します。しかし、CLOSERで乳化したものは白濁して液体と油脂が一体化しているのがわかります。

スライド9:カカオバターの乳化実験

10.チョコレートドリンクの乳化実験

次に、チョコレートドリンクの比較です。同じ材料で作ってもホイッパーで手混ぜしたものと、CLOSERで混ぜたものでは色合いもざらつきも全く違います。カップの淵を見てもザラザラ感の違いが良くわかると思います。また、飲んだ際の風味や舌ざわりも変わります。

スライド10:チョコレートドリンクの乳化実験

11.チョコレートドリンクの顕微鏡写真

さらに、チョコレートドリンクを顕微鏡写真で”油滴”の状態を観察してみました。ホイッパーで手混ぜしたものは顕微鏡で見るとほとんど”油滴”の確認ができませんが、CLOSERで乳化したものは細かい”油滴”が均一に形成されていることが確認できました。

スライド11:チョコレートドリンクの顕微鏡写真

12.チョコレートムースの固まり度

最後に紹介するテストは、ハイカカオチョコレート1に対して2倍量のお湯で溶かし攪拌したものを、冷蔵庫で一晩冷やした状態で、どの程度固まるかの比較テストです。明らかな違いが確認できました。CLOSERで乳化したものは水の分離が全くなく、完全なムースになっていますが、ホイッパーで一生懸命に手混ぜしたものは表面だけが固まっており内部はシャーベットのような状態です。この結果はチョコレート調理において、ムースは勿論、生チョコレートやチョコレートソース、テリーヌ、ボンボンショコラなどにも新たな可能性を感じる実験結果であると考えています。

スライド12:チョコレートムースの固まり度比較

13.クローザーの特徴(チョコレート調理用途)

それでは、これらの実験から具体的にCLOSER FINEMIXのチョコレート用途での特徴を3点に整理したいと思います。まず、
1点目が、
風味が詰まったカカオバターを添加剤や加熱処理を使わず、自然で健康的な乳化を行うことで、カカオが持つ本来の美味しさを引き出します。
2点目が、
ボタン一つで簡単に乳化でき、プロクオリティの質感が簡単に得られます。
3点目は、
ドリンク以外にも、ムースやトリュフ、ソース、テリーヌといった様々なチョコレート調理用途で新たなメニュー開発の可能性が広がります。

スライド13:クローザーの特徴(チョコレート調理用途)

14.新たな用途、新たな価値の広がり

このように手軽に使える乳化装置が我々の生活の身近にあれば、メーカーの工場で使われてきた乳化プロセスが乳化剤なしで店舗や家庭で行うことができ、新たな用途や新たな価値が生まれてくると考えています。

スライド14:チョコレート調理の新たな可能性

15.自然で健康的な乳化の未来

今回はチョコレート用途を事例に乳化の活用をご紹介しましたが、ドリンク系、スイーツ系、ドレッシング・ソース系、出汁・スープ系など様々な調理用途で乳化の活用が考えれます。是非、自然で健康的な乳化の未来を一緒に考えていただければ幸いです。

スライド15:自然で健康的な乳化の未来

ご清聴ありがとうございました。

スライド16:ご清聴ありがとうございました。


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