夜が明ける 西加奈子

呼吸をしている間、夜が明けることはない。
それでも、腐らないように抗い続ける。

彼女はこの本を誰に届けたいのだろう。
多くの不幸を書くことで人の不幸を殺してしまうということを自覚しているのだろうか。

登場人物は多く、皆それぞれの闇を抱えていた。
遠峰の人生がたった2ページで纏められてしまったこと、2PACの人生も同じように2ページで纏められてしまったこと、不幸の影を落とした人間たちが深く言及されなかったこと。
まるで、「同じように苦しんでいる人がいて、それぞれの不幸があるんだから」と一纏めにされたような気がして嫌気がさした。
そんなことは分かっているし、助けだって求めた方がいいことは知っている。けれど、田沢や俺のように求めた先に光が指すとは限らないし、どれ程探したって求める場所さえ見つけられないことがほとんどなのだ。森が家に訪ねてくる前の俺のように。

ただ希望が見えるときまで待て、というのはあまりに残酷すぎないか。

追記
心境の描写はとても精密だったし、正常と異常の境界線や二面性についても納得する部分が多かった。
ずっと理解したいと思っていた感情に触れられたことは嬉しかった。


メモ(違う人間がいることを前提として)
・誰かを助けることは自分を救うため 俺 中島 
・誰かを傷つけることは自傷行為 俺
・他者の人生に希望を託すことは卑怯 中島 俺の母親
・負けないで、頑張って、は時に呪いとなる 中島 遠峰
・他者に干渉しすぎるのは自身から目を逸らすため 中島 押見
・強がるのは弱い自分から逃げたいから 俺の父親 中島 押見
・”不明”→自意識から離れること
・表現することと正常に生きることはかけ離れた位置に在る 東国 アキ
・共作 魂を共にすること 東国はその責任から逃げた目を背けたそれは健やかなことかもしれないが、誠実性に欠けている