カルテット

脚本:坂元裕二

――― 家族
”一般家庭=幸せな家族” というイメージがあるが、実際のところは家族に柵のない人の方が少ないのかもしれない。
そして、家族の問題は必ずしも正面から向き合う必要もない。真紀とすずめは定位家族(生まれ育った環境の家族)から自分を切り離して生きている。定位家族から逃げても良い、という選択肢を提示することは多くの人の心を救うだろう。自分が選んだわけではない強制イベントには、リタイアボタンが必要だ。

――― 夢 仕事 趣味
愛しいもの、魂が輝く瞬間、この世で一番の幸福。それに出逢うことは奇跡である。
”働きながら音楽をやったら趣味になってしまう”
これは屋敷が売りに出されることについて話し合った夜に別府が放った言葉だが、少し違和を感じた。
音楽を仕事にするほど、彼らが血眼になって鍛錬をしている描写が特に無かったからだ。
その後も夢にするのか趣味にするのかという話し合いが時々行われていたが、この作品で重要視されている問題ではないという印象を受けた。
私個人としても、好きなことや自分の魂が輝くことをやり続けることに、仕事か趣味かを分ける必要はないと考えている。
必要だから、ただ、やる。ご飯を食べることが生きる上で欠かせないのと同じ様に。


――― まさか 秘密
秘密を明かすことは、時に信頼のサインとなる。
知らないもの、得体の知れないものは怖い。人は知りたがる生き物で、興味のあることを知ると幸福感を得る。
その衝動の中で、知らなくても良いと割り切ることはとても勇気が要る。
もう、いいよ。と言い合った真紀とすずめの関係性は、とても強固で崇高な愛のカタチに見えた。