「サークル・オブ・ライフ」(「短歌人」2019年7月号掲載)
サークル・オブ・ライフ 山川 創
簡単に人を嫌えばいつもより軽やかになる肉を刻む手
家のない人が飲み干すコカコーラ駅のホームの横向きの椅子
この場所にいる全員が貧者だと気づいているか監視カメラよ
駅の時計の「調整中」の貼り紙が「撤去予定」に変わっていた日
街じゅうのいたるところに文字があり処刑はすべて文字で知るもの
Too young to die? まさか。銃のない国に生まれてきた私達
笑ってもいいんですねと確認をしてから笑うふりをしている
殴る勇気も殴られる勇気も持たないままの歯車だろう
アナーキーインザ2LDKに憧れながらカップ焼きそば
役割がよくわからないまま座る 前世も来世も信じられない
致死量にはるか足りないコーヒーをICカードで買う夜の道
川沿いの道をなるべく歩かない元気の出てくる曲を聴かない
都会では電車の遅れぬ日はないと伝えただけの電話が終わる
怒りの声大きく上げる我々もなにかの点で多数派である
2000円で2200円分食べる 夜だけどまだ始まってない
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初出:「短歌人」2019年7月号。第18回髙瀨賞佳作。
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