Y川

山川です。短歌同人「gekoの会」と結社「短歌人会」所属。第5回詩歌トライアスロン受賞。

Y川

山川です。短歌同人「gekoの会」と結社「短歌人会」所属。第5回詩歌トライアスロン受賞。

最近の記事

「サークル・オブ・ライフ」(「短歌人」2019年7月号掲載)

サークル・オブ・ライフ            山川 創 簡単に人を嫌えばいつもより軽やかになる肉を刻む手 家のない人が飲み干すコカコーラ駅のホームの横向きの椅子 この場所にいる全員が貧者だと気づいているか監視カメラよ 駅の時計の「調整中」の貼り紙が「撤去予定」に変わっていた日 街じゅうのいたるところに文字があり処刑はすべて文字で知るもの Too young to die? まさか。銃のない国に生まれてきた私達 笑ってもいいんですねと確認をしてから笑うふりをし

    • 「いちろくみそひと同期会」について適当に

      「いちろくみそひと同期会」というネプリに参加しました。 2016年に短歌を始めた人々が、五首連作を寄稿しています。 詳しくは主催のとわさき芽ぐみさんのツイートをご覧ください↓ https://twitter.com/o10waMEGMEG/status/1009751258129825792 ここでは、ネプリの歌の中からなにか言いたいと思った(≒いいと思った)歌を引用し、なにか言います。 カウンセリング  妖精が飛び降り自殺するときの音だったのか(淡島うる「バッファ」)

      • 短歌連作「シティーライツ」

        シティーライツ 山川創 切り刻むことはできないから今日は耕すだけにとどめておこう 革靴を裸足で履いて外に出て自壊していく快速電車 異星人だらけの街で吸われゆく煙草のように眠りについた 薬などいらぬ暮らしに恵まれて世界が終わるまでの退屈 平凡な傷を付けられ平凡な通院歴を一つ増やした 人々の弱い気合で成り立った空間にまた散らばれ硬貨 間違えて点いてしまった街灯にもたれかかって日没を待つ 寒い朝人を死なせる妄想は鳥が羽ばたく妄想になる 散らかしてしまった部屋に新し

        • ネプリ「gekoの会 vol.5」を配信しています

          短歌ネプリ「gekoの会 vol.5 〜大事なお知らせ編〜」を配信しております。 同人4名の十首連作と、相互一首評を掲載しています。 今回は一首評に熱が入ったので一枚に収まらない分量になりました。 セブンイレブン→予約番号【85YRTSC2】 ※「2枚を1枚にする」、「長辺とじ」を推奨 ファミマ、ローソンなど→ユーザ番号【A4Y98QD4BC】 セブンイレブンは2/11中、その他は2/12の午前8時頃までの配信です。 こちらも参照のこと↓ https://twitt

        「サークル・オブ・ライフ」(「短歌人」2019年7月号掲載)

          短歌連作「声の海」

          声の海 山川創 冷たくて乾いた空気肺腑へと入って少し暖められる 少しだけ距離を縮めて腰かけてあなたの暗示を解くのは私 歩いている途中で雨がみぞれへと変われば少し元気になれた 両方の出口に選挙演説がいる駅 ぶきを、ぶきをください 多分もう起き上がれない人形に座って歌うコミックソング 息をするのがだんだん下手になってきて全存在が黙殺される サドン・デス レディ・ゴー ただの一瞥があれば十分すぎる確かさ 歓声と悲鳴が同じスピー

          短歌連作「声の海」

          ネプリ「gekoの会 vol.4」配信中です

          明けまして宣伝です。 「gekoの会 vol.4 〜短歌道場お疲れ様でした編〜」を配信しております。 同人4名の10首連作と短文です。年始の暇つぶしなどにどうぞ。 セブンイレブン→予約番号【43562268】 ※A3、2枚を1枚推奨 ファミマ、ローソンなど→ユーザ番号【A4Y98QD4BC】 セブンイレブンは1/5中、その他は1/6の10時頃までの配信です

          ネプリ「gekoの会 vol.4」配信中です

          短歌連作「ブラックアウト」

          ブラックアウト 山川創 血を吸ったことがないから渡れない悪意の川も善意の川も 暖かな家に帰れるはずだったけれど打ち上げられて 三日月 垂直に立っていたから垂直に落下しながら眼鏡をなくす やすやすと傷つけるならひけらかすためにはすごく便利だろうな 人ごみの中から聴こえる断末魔もっとスピントしてくれないか にこやかな顔でお面をかぶったら誰にも気づかれないにこやかさ 駅までの道でたくさん行き倒れなんてロックな日常だろう 暗闇で棒立ちのまま隣人の嗚咽を聴いて朝まで

          短歌連作「ブラックアウト」

          2017年10月の短歌&告知

          ※文章中一部敬称略 【新聞歌壇掲載歌】 にるゔぁーな、にるゔぁーなって鳴く猫が道のむこうで浮かんで消える(毎日新聞「毎日歌壇」 10月2日掲載 加藤治郎・選 特選) リアリズムのフルコースです代金は棺桶の中でいただきます(日本経済新聞「歌壇」 10月21日掲載 穂村弘・選) 【その他】 読まれないために記した漢字ともキリル文字ともつかないなにか(歌会たかまがはら2017年10月号採用歌 阿波野巧也・選、天野うずめ・選。テーマ「読」) 【告知など】 告知その1。水沼朔太

          2017年10月の短歌&告知

          合同の短歌ネプリ「gekoの会」配信中です

          一応こちらでも宣伝 かりんの丸地さん、貝澤さん、塔の永山さんと発行している短歌ネプリ「gekoの会」の第二弾が配信中です 読書がテーマの五首連作と、各自のこの秋おすすめの一冊を紹介したミニエッセイが掲載されております セブンイレブン→予約番号「6FUGLNSJ」、「二枚を一枚」での印刷推奨 その他コンビニ→ネットワークプリントで、ユーザID「A4Y98QD4BC」 出力期限はセブンイレブンが10/16いっぱい その他コンビニが10/17の午前7時頃です よろしくお願い

          合同の短歌ネプリ「gekoの会」配信中です

          2017年9月の短歌

          ※文章中一部敬称略 【うたつかい2017年秋号掲載歌】 「Living to Eat」 冷蔵庫、ユニットバスと万年床 どこにでもある何かの残骸 さようなら被害者意識こんにちは大盛りラーメン野菜マシマシ 月面で祭りが開かれてる間にサプリメントを一箱空ける どちらかといえば尊敬していない人が作ってくれる朝食 唐揚げになるため生まれたニワトリと生まれた理由(わけ)がわからない俺 テーマ詠「学校」 やすみかた(こくご/さんすう/りか/しゃかい)なんてしらずにはしりはじめた 【

          2017年9月の短歌

          2017年8月の短歌

          ※文章中一部敬称略 【「Re:短歌」掲載歌】 「夜半の電話」より抜粋 面白い話だけして五時間を過ごしてなおも一人の部屋だ これからのことは一つも話さずに減らし続けるミルクコーヒー 聴き取れないくらいの声で歌われる天国に行くためだけの唄 世界から足を離していた夜のおしまいで待っている明烏 「Re:短歌」は千原こはぎさん主催の返歌をテーマとしたアンソロジーです。 上に載せたのは私の歌のみですが、実際には二人一組で四首ずつ、計八首の連作を作っております(そういう趣旨のアンソロジ

          2017年8月の短歌

          2017年7月の短歌

          ※文章中敬称略 犬よりも芸がないから棒立ちのままでひたすら耳をふさいだ(歌会たかまがはら2017年7月号 放送外採用歌 天野うずめ・選。テーマ「手」) 【雑記】 なんらかの形で公開されたの一首だけかよ! と自分でツッコんでしまう少なさ。うたの日にもとうとう投稿しなかったし。 7月29日に大阪にて開催された、虫武一俊さんの歌集「羽虫群」の批評会に行ってきました。 前日には、ずっと行きたいと思っていた葉ね文庫に訪問。来る人来る人、だいたいが詩(自由詩、短歌、俳句)の創作をし

          2017年7月の短歌

          2017年6月の短歌

          ※文章中敬称略 【うたの日に出した歌】 6月9日 往年のロックバンドを見習って再結成を始める家族 (題「ROCK」) 【「みずつき6」掲載歌】 連作「雨の日に夢去りぬ」 戦ったことに対する罰として浴びるにはふさわしい霧雨 Singin' in the Rain あなたを惑わせるためにすべての言葉を使う 知っているやまない雨がないように死なない俺がいないってこと 大雨に脳はすっかり洗われて抗いたいことはなにもない いつかこの屋根を穿つ雨が降るまで弾けない楽器を抱えて眠る

          2017年6月の短歌

          2017年5月の短歌

          ※文章中敬称略 【うたの日に出した歌】 5月10日 本番を想定しての訓練だ悲しみ方がまだ足りないよ (自由詠) 【うたつかい2017年春号掲載歌】 連作「祈らない」 ああこれは祈らねばならぬ出来事と思いつつ打つひたすらに打つ くり返すこのナルシシズム思い出すあの衝動はまるでゴミだね 十倍に希釈されたるやる気にて正しく眼を開いています 感情を失うことは不可能だ Credoの歌詞をすべて忘れた そして君が傷つくことのないように僕は点滅し始めたのだ テーマ詠「お店」 あの

          2017年5月の短歌

          オーバージャンル的

          くるりの岸田繁が、今までに最も衝撃を受けた音楽はニコラス・アーノンクールが振るモーツァルトの交響曲第39番だ、というようなことを言っていた。 山下達郎はAC/DCが好きだ、みたいな例を挙げるまでもなく、作品の方向性と自身の好みの方向性が全然違う人はいくらでもいるに違いない。 以前ある人と、歌集を読むより小説を読むほうが楽しくないか? みたいな話をしたことがあるけど、今もそういう気持ちはある気がする。しかしこれはただの慣れの問題かもしれない。 合唱をやっていると、「合唱や

          オーバージャンル的

          2017年4月の短歌

          ※文章中敬称略 【うたの日に出した歌】 4月4日 いい人になってしまった友達が俺を見つけて大股で来る (題「いい◯◯」) 4月5日 暴力触れたい昼だ春の陽が無駄に優しく降り注ぐから (題「春」) 4月10日 平凡な傷を付けられ平凡な通院歴を一つ増やした (自由詠) 4月16日 雨漏りの止まない夜はあおむけで黒人霊歌(ニグロ・スピリチュアルズ)を歌え (題「黒人」) 4月18日 乾パンの賞味期限が切れていることに喜びつつ廃棄する (題「期」) 【それ以外の歌】

          2017年4月の短歌