【保存版】全企業が知るべき健康診断の知識(社労士+医師監修)
こんにちは、クリニックTEN渋谷です。当院は渋谷駅徒歩1分、完全WEB予約制で待ち時間ほぼ0分の「次世代かかりつけクリニック」として、2021年のオープン以来1万人以上の方々にご利用いただいています。
こちらの記事では、人事労務・総務担当者の方からよくお問い合わせのある「企業の健康診断」について、かんたんに解説します。健康診断を行ううえで、知っておきたい前提知識から必要な手続きまで紹介していきますので、新しく担当になった方やはじめて健康診断の手配を行う方はぜひご確認ください。
【監修(医師):石黒 剛】
【監修(社労士):土橋 由紀子】
企業における健康診断の前提知識
まず、企業における健康診断の前提知識を解説していきます。
健康診断は企業の義務
従業員の健康診断は、定期的に実施しなければならないと法律で義務付けられています。健康診断を行わなかった場合、50万円以下の罰金が科せられることも。一人でも社員を雇っていれば、健康診断の実施は必須になります。
とくに創業まもなく従業員を雇用した企業は、健康診断を忘れがちなので注意しましょう。
健康診断の対象となる従業員
企業が実施する健康診断は、すべての従業員が対象となるのではなく、以下の条件に当てはまる労働者のみが対象となります。
社会保険の加入対象かどうかが目安になります。そのため、正社員にくわえて、条件にあてはまる契約社員やアルバイト・パート従業員にも健康診断を実施する必要があります。
企業の健康診断で検査が必要な項目
企業での健康診断には、必須の検査項目があります。また、業務の種類によっては、特殊な健診を受ける必要があるケースも。
まずは、自社が実施すべき健康診断の種類をおさえましょう。
企業が実施する健康診断には、大きく分けて「一般健康診断」と「特殊健康診断」があります。
一般健康診断は「特殊健康診断」の対象者以外の、社会保険の加入対象となる従業員が受ける必要があるもの。実施のタイミングは雇入れ時と定期(1年以内ごとに1回)です。
一般健康診断に必須の検査項目として、以下が指定されています。健康診断先のクリニックを選ぶときは、以下の項目が受けられるか確認しましょう。
定期の健康診断の実施時期はとくに指定がなく、従業員ごとに異なっていても問題はありません。しかし、業務負担を考えるとなるべくいっぺんに行うことをおすすめします。
一般健康診断で注意すべきポイントは以下です。
特殊健康診断は、放射線業務や有機溶剤を使用する現場での業務など、法で定められた「有害業務」を行う従業員が受けるものです。該当する業務は、以下をご確認ください。
次に健康診断を実施するまでの流れを確認しましょう。
企業の健康診断、3つの実施方法
健康診断の実施方法には、以下の3つがあります。
会社指定のクリニックでの受診
集団健診を実施
従業員各自で受診(事後に経費精算が必要)
従業員数や就業形態などを考慮し、自社にとって最適な方法を検討しましょう。基本的には、管理業務の手間を考え、会社指定のクリニックで受診してもらうのをおすすめします。
企業の健康診断やることリスト
次に、健康診断に際して、人事労務など健康診断の担当者の方が行う必要のある業務を紹介していきます。
1. 健康診断の対象となる従業員リストを作成する
前述した対象条件に従って、健康診断を受けるべき従業員リストを作成します。
2. 健康保険組合にヒアリングする
従業員の年齢や性別によって、健康保険の補助対象となる健康診断の項目は変わってきます。そのため、適切な健診プランを決めるには、自社が所属する健康保険組合へのヒアリングが必要です。
3. クリニックを選び、予約する
必要な健診項目を把握したあとは、クリニックを選んでいきます。健診項目が満たされていればどのクリニックでも問題ありませんが、従業員の負担を考え、できるだけオフィスの近くにするのがおすすめです。また、従業員分の予約枠がとれるかどうかも確認しましょう。
※クリニックの選び方については記事後半の「企業の健康診断、よくある13の質問と回答」の項目で解説します。ぜひご覧ください。
4. 従業員に健診日を伝え、受診してもらう
クリニックが決まり、健診日の調整が完了すれば、各従業員に健診日を通知します。問診票の記載や検便などの事前準備が必要なものに関しても、あわせて告知しましょう。
5. 結果をクリニックから企業が受け取る
健診が終わると、全従業員の健診結果が企業に届きます。(従業員によって受診日が大きく異なる場合は、複数回に分けて郵送されるケースもあります)健康診断の結果は個人情報です。注意して管理しましょう。
6. 従業員に結果を通知する
健康診断の結果を、各従業員に渡します。有所見がみつかった場合は、医師に相談し、必要であれば人事異動、時短勤務、残業時間の削減といった業務上の措置をとりましょう。
7. 結果を健康診断個人票へ記載する
50名以上雇用している企業は定期健康診断の結果は、労働基準監督署に提出しなければなりません。提出が遅れたり、提出が漏れたりすると行政指導の対象となるため、注意が必要です。
提出書類は、以下のリンクからダウンロードできます。
健康診断個人票
定期健康診断結果報告書様式
企業の健康診断、よくある13の質問と回答
Q1. 健康診断を受けるクリニックに指定はある?
健康診断先に指定はありません。「法定健診」を実施している医療機関やクリニックであればどこでも受診できます。
また、加入している健康保険組合によっては、費用補助が受けられる提携クリニックもあります。(協会けんぽであれば、協会けんぽ加盟クリニックがこれにあたります)
自社が加入している健康保険組合で受けられる補助があるか、提携しているクリニックはどこか組合に確認してみましょう。より費用を抑えて健康診断を実施できる可能性があります。
Q2. 健康診断先のクリニックはどう選べばいい?
健康診断先のクリニックを選ぶ際には、以下の点を確認しておきましょう。クリニックを一度決めてしまうと、その後変更するには多くの手間がかかります。慎重な判断が必要です。
Q3. 定期健康診断を実施するのにおすすめの時期は?
比較的すいている時期は、1〜3月、7~8月。予約が取りやすく、待ち時間は短く、急な日程変更があっても希望が通りやすい、おすすめの時期です。クリニックによっては、この閑散期に料金が割引されている場合もあります。
一方、健康診断を実施する企業が多く、混みがちなのは4~6月、9〜12月。新年度や下半期に差し掛かるこの時期は、予約が取りづらかったり、健康診断の待ち時間が長かったりすることがあります。
Q4. 健康診断の料金相場は?
健康診断の料金の相場はおおよそ1万円前後です。クリニックによっては、4000円など低価格で提供している場合もありますが、必須の検査項目を満たしていないなど法令遵守していない可能性も高いため、確認しましょう。
Q5. 健康診断の費用は誰が負担する?オプション検査は?
法令に定められた健康診断の費用は、企業に負担義務があります。しかし、再検査の費用については企業に負担義務はなく、従業員が負担します。
通常胃カメラや子宮頸がん、乳がん検査などの項目は法令が定める検査項目には含まれていません。オプションとして追加できますが、これらの費用については従業員が負担するのが基本です。
人間ドックについても、オプション検査と同じく従業員の自費負担とする企業が多いです。ただし、健康保険組合や地方自治体が補助金を給付してくれる場合や福利厚生に含む場合には企業が負担するケースもあります。
主な例として全国健康保険協会(協会けんぽ)の補助があります。協会けんぽの補助金の対象は以下の検査項目です。
Q6. 健診日の賃金は?
健診中の賃金の支払いについては、法律では定められていません。一般的には、多くの企業が業務時間中に受診させ、賃金も支払っています。
Q7. 健康診断を福利厚生費として処理するには?その要件は?
従業員の健康診断にかかる費用は、福利厚生費として処理できます。しかし、以下3つの要件を満たす必要があります。(人間ドックも以下の条件に当てはまれば、福利厚生費として処理できます)
健康診断の対象となる全従業員が受診する
健康費用は企業が直接診療機関に支払う
健康管理上必要とされる程度の範囲内の費用である
※一般的に実施されている一人あたり1万円程度のものであれば、要件に当てはまります。
Q8. 福利厚生に含めるべきオプション検査は?
多くの企業の福利厚生に含まれ、企業負担で行われている検査は「がん検診」です。これは、日本人のがん発症率が非常に高いため。 国立研究開発法人国立がん研究センターの調査では「一生のうちにがんと診断される確率」は男性65.0%、女性50.2%というデータがあり、2人に1人はがんにかかるとされています。
しかし、一概にがんといっても、乳がん、胃がん、子宮頸がんなど種類が多く、年齢や性別によっても発症率や早期発見による効果が変わるため、闇雲にすべての検査を福利厚生に含めるのはおすすめしません。
福利厚生に含める検査項目を検討する際は、以下を参考にご覧ください。これらの項目は、米国予防医学委員会が無症状者への検診として推奨しているもので、早期発見による影響が大きい項目と言われています。
Q9. 健康診断結果の保存期間は何年?
健康診断の結果は、企業で5年間保管する必要があります。
Q10. 健康診断結果の保管方法は?
健康診断結果は、書面のほか、データでの保管も可能です。「書面だと場所をとるし、管理が面倒」という方は、結果をデータで送付してくれるクリニックを選ぶといいでしょう。
Q11. 従業員の健康診断結果を見ていいのは?
健康診断結果は個人情報のため、基本的には見ていいのは従業員本人のみ。ただし、有所見があった場合などは、従業員本人の許可を得て、その従業員を管理するマネージャーや事業部長や健康診断を実施する人事労務などの担当者といった関係者が確認できます。これは、有所見がある場合、医師と相談のうえで就業制限などを行う必要があるため。
そのため、管理職であれば誰でも結果を確認できるというわけではありません。あくまで、有所見のあった従業員を管理している人物のみです。情報を開示する範囲は必要最小限にすることが求められます。
Q12. 有所見があった場合の企業の対応は?
従業員の健康診断結果に有所見があった場合、企業は、受診先の医師に必要な業務上の措置について聞く必要があります。これは企業の義務です。
医師に相談すると、業務上の措置について「必要・不要・就業禁止」などと判断されます。業務上の措置が「必要」と判断された場合、企業は、人事異動、時短勤務、残業時間の削減などを行います。「就業禁止」の場合は、休職させる必要があります。
再検査の案内があれば、従業員に通知しましょう。再検査は義務ではありませんが、会社が適切な処置を講じなければ安全配慮義務違反などの責任が問われる可能性もあります。できるだけ受診を勧奨し結果を報告してもらうことが望ましいでしょう。
Q13. 社員が健康診断を受けないor受診を拒否している場合は、どうすればいい?
企業は従業員に対して健康診断の受診を、業務命令として命じることが可能です。いつまでも健康診断を受けない社員や受診拒否する社員には、理由を聞いたうえで「健康診断は企業の義務であること」「業務上の命令であること」を伝えて、受診してもらうようにしましょう。
最悪のケースになりますが、それでも受診を拒否する社員に対しては、口頭注意や叱責、出勤停止や減給などの懲戒を行います。
最後に、法令に沿った健康診断が受診でき、企業の人事労務担当者の調整業務の負荷も少なく、Web予約が可能な健診クリニック『クリニックTEN渋谷』を紹介します。
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