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「気候非常事態宣言の国会決議はいろんな可能性を秘めている」福山哲郎議員インタビュー


福山哲郎(ふくやま てつろう)さん

1962年1月19日生まれ。O型。趣味は茶道・野球
好きな言葉は「一日を生涯として生きる」
立憲民主党幹事長/所属委員会 外交防衛委員会、国家基本政策委員会/所属会派 立憲民主・社民/京都府身体障害者団体連合会会長/京都府バスケットボール協会会長/京都芸術大学客員教授(政治学)/学校法人龍谷大学理事/学校法人瓜生山学園理事(京都芸術大学)

https://www.fukuyama.gr.jp/


気候変動の問題に取り組むに至った経緯や、福山さんご自身の気候変動への思いを聞かせてください。

1992年にブラジルのリオデジャネイロで開催された「国連環境開発会議(地球サミット)」がきっかけで、環境問題に取り組んできました。

途上国の貧困や環境破壊について問題意識を持って、内戦中のスリランカで農村開発運動を体験した後で、1997年に京都議定書を採択した気候変動枠組条約締約国会議「COP3」があったんですね。

地元が京都なものですから、現在の気候ネットワークのメンバーに入って、まだ議員にもなってなかったのに、当時できたての民主党に「絶対に気候変動に取り組まなければいけない!」と言って、COP3コーディネーターみたいな役を無理やり作ってもらって、気候ネットワークの皆さんとCOP3のお手伝いをしていました。

そのときに喜納昌吉さんに「花」を歌っていただいて、2万人の市民デモの先頭を歩いた。もう23年前になります。1998年に初当選してから2009年政権交代するまで、ずっと環境委員会に所属して、気候変動問題に取り組んできました。

エコノミー切符で飛行機に乗って、リュックを背負ってCOPの会場に何回も行きました。気候変動に対する各国の考え方を野党議員も知っておかないといけないと参加して、国際会議の空気ですとか、そのときどきのモメンタムを感じることができました。

気候変動問題に対して、自分はどれくらいできるかわからない、でも誰かが見続けていないといけないって思ったんです。ヨーロッパの気候変動の現場に行ったり、モンゴルで砂漠化している現場に入ったり、実はそんなことをしていた10年間でした。


みなさんが気候変動に関心や危機意識を持っていただいていることをすごく嬉しく思っています。一方でこの30年、気候変動問題に政治はどう動いてきたのか、という内心忸怩(じくじ)たる思いも感じています。

もちろん再生可能エネルギーは圧倒的に増えてきたし、ゴミのリサイクルも各国で進んできました。エネルギーを節約するための仕組みも技術もすごく進歩していますが、残念ながらそれらの進歩以上に、CO2を排出してきてしまいました。

11年前、国連サミットで当時の鳩山総理が演説した際、日本が2020年までに1990年比でCO2を25%削減することを目指すと世界に向けて宣言して、国連の場で世界中のリーダーがスタンディングオベーションをしました。

当時のオバマ政権がグリーンニューディール(自然エネルギーや地球温暖化対策に公共投資すること)を掲げて、それがその後のコペンハーゲン合意、それからカンクン合意、そしてパリ協定のベースになっています。

それぐらい日本は気候変動の問題について一定のリーダーシップをとってきたなかで、我々は言ったことを実行するためにFIT法(固定価格買取制度)をつくって、再生可能エネルギーの普及を促進させることを実現しました。

日本が気候変動について世界中をリードしている状況で、COP15 に政府代表団の一人として交渉にあたりました。あのときに比べて、今の日本の状況や日本に対する国際社会からの評価は、本当に残念です。こんなに技術があって、国民にも気候変動に対する理解があって、なんでこんなに後ろ向きなんだと。

グレタさんの演説に込められた政治への強烈な批判は、本当にその通りだと思います。学者や科学者はもう材料は出尽くしたと、あとは政治が決めて、前に進めることが必要だと言っています。

ただ、政治はそのときどきによって極端にぶれるので、それに対して国民や世界中から、ぶれている場合じゃない、それでは間に合わないんだ、という声を上げ続けてくれることが重要なのです。


議連への思いについて教えていただけますか。

この数年、異常気象で日本もたくさんの被害を受けています。毎年観測史上初と呼ばれるような豪雨、台風などが頻発しています。

20年前から言っているんですが、今動かないと、今の子どもたちやこれから生まれてくる未来の子どもたちに責任が持てない。だからこそ今、日本がこれまで掲げてきた温室効果ガスの削減目標を引き上げて、国際社会に約束しなければいけない。

その第一段階が、超党派の宣言をしようというものです。国会が宣言を出すことで、関係する省庁なり政府与党なりにプレッシャーをかけていく。野党でも、この危機的な状況に見合った目標を掲げるように声を上げる。それが今回の気候非常事態宣言をやろう、決議をしようという議員みんなの思いです。

この宣言をとても大切な一歩だと思っていて、今回、鴨下議員や古川両議員に「気候非常事態宣言の議連を一緒にやりませんか」って言われたときには「何をおいても参加させてください。」ってお返事しました。

「たかだか決議じゃないか」とか「具体的なことは言ってないじゃないか」という指摘はあるとは思います。ですが、国民の代表である衆参両院の国会議員が全員でこの決議をすれば、三権分立ですから、政府に対してすごく大きい力になるんです。これはなんとか実現したいと考えています。

それに決議をすることで、国民に対して機運を高めるきっかけにもなります。この決議はいろんな可能性を秘めているので、衆参両院の決議という重みをもって、気候変動に対するメッセージを出したいと思います。



全会一致をするためのロードマップを教えていただけますか。

今日(10/14)も議連の中心メンバーが集まって、臨時国会にどう向かうかという打ち合わせをしました。臨時国会では、なんとか議論の俎上(そじょう)に載せられるように、みんなで努力しようと確認しました。

それから決議の内容についても、早急に固めることで一致しました。臨時国会で動き出すためには、それぞれの政党内での理解を深めなければいけないので、今日集まったメンバーがそれぞれの党で理解が深まるように努力しようという確認もしました。

次は各党で国会決議をするような空気、声を上げていくということをやっていきます。臨時国会の会期は短いですから、その短い期間で決議できるように努力をしようということです。



宣言が可決された場合、福山さん自身は党内の政策をどうされたいとお考えですか?

国会で気候非常事態宣言が可決されようが、されまいが、党内では気候変動問題に対してコミットしていくということが確認されています。党内で議論しなければいけないのは、まずは一つ目に具体的な目標です。

それからその目標に合わせて、個別の課題について議論をしていかなければいけない。まずは2050年までに、温室効果ガス排出ゼロに向けて目標を設定する。僕はもう50年ゼロは必須だと思っています。

それから二つ目は、それに対して抽象的にゼロだと言っていても仕方がないので、2030年の目標や2040年の目標を含めたロードマップを作っていかなければいけない。例えば、先ほどのFIT法でも、我々が想定していた以上に再生可能エネルギーは広がったわけですね。つまり社会が動き出せば、日本は技術があるし、国民の皆さんに理解があるので、一気に広がる可能性があります。

だから、30年40年50年といった目標に向けて、ロードマップを作らなければいけない。その中で何をしなければいけないかというと、脱炭素への歩みと断熱、再生可能エネルギーのさらなる拡充、それから各家庭等々での省エネの技術をどう広めていくかを決めることです。

それらを地域分散型にして、地域ごとにどうやってCO2を減らしていくのか整理をしていかなければいけません。さらに立法化も必要です。こういったものを組み合わせる議論を党内で早くまとめて発表していきたいと思います。


ただもう一つ、新たな事態が起こりました。今年はコロナで皆さんすごくご苦労されていると思いますし、日本だけでなく、世界中コロナで経済活動が縮小しています。例えば我々が課題としていた飛行機を含めた国際移動。これは今ほとんどなくなっていて、航空会社の経営が厳しくなり、その存続の議論まではじまっている国がいくつもあります。

これだけ経済がマイナスになっているということは、今年度のCO2の排出量は、おそらくかなり減ると思います。じゃあ次にどういう形で経済を伸ばして、どうバランスをとっていくのか。次のステップで新たな議論が必要になってきます。

コロナで経済がマイナスとなって、それでもCO2が50%減るわけではない。そうすると2050年にゼロにするということは、どういう社会になるのか?経済活動をほとんどしないでいいのか?温室効果ガスを減らしても、幸せの総和が減らない状況がどういうものなのか?を模索しなければいけない。

コロナで先々の社会システムの雛形を見ることになるのかもしれません。私たちはウィズコロナ時代のライフスタイルの変化を迫られています。



気候変動の原因ともなっている「食」ですが、貿易による国同士の資源管理、それに伴う日本の食料自給率についてどうお考えでしょう?


日本の食料自給率が低下していることについては、すごく危機感を持っています。これから異常気象が世界中で広がるなか、各国の食料生産が滞る可能性があります。そうするとお金があっても、日本に輸出してくれる国を確保できない、という将来的なリスクも出てきます。

日本は今すでに食料とかエネルギーは輸入しないとどうしようもない状況になっているのですが、まず食料自給率を上げること、それから今の農業政策については見直して、それぞれの農業をどう発展させていくのか、国内の生産量を維持するにはどうしたら良いかを議論する必要があると思います。

我々が政権を担っていたとき、制度として所得を保障することによって農家の担い手とか、農家のみなさんの生産意欲を高めようということをやってきました。これからもやっていかなければいけないと思っています。

日本は貿易しなければいけない国ですが、コロナでまたそのことがどうなるかわからなくなっています。さらに、途上国にとっては貿易がなかったら外貨を稼ぐ手段がなくなるので、余計に格差が広がったり、国民が貧しくなったりしますので、そのバランスをどうするのかを考えなければいけません。

すごく難しい問題です。一言では申し上げられないんですけれど、問題意識としてはよく理解できます。



環境と開発の世界委員会から1987年に出された「OUR COMMON FUTURE」のレポートで

「軍縮 と 軍事予算を環境保全に振り分ける」ということが明記されています。これは可能なのでしょうか。


軍事予算を減らして環境保全予算にすればいいというのは、やれればそれがベストです。しかし、アジアの安全保障の状況や各国が軍事費を増強していることを踏まえると、日本だけが軍事予算を減らすことでリスクが高まると考える人も多いと思います。

だからまず重要なのは、安全保障をより平和に、そしてより安定的な方向に向かって進めることです。

環境か軍事かの二者択一で議論することができないので、なかなか難しい話はありますが、将来的に環境リスクの方が軍事的なリスクよりも大きい、もしくは同等ということになれば、環境に予算を回すという意思決定が政治の中でできる可能性があります。

ですが、例えば今増大している軍事費の7割を削減して、環境に回すような状況になれば、環境に対してはプラスになりますが、国際社会全体で共有されているかといえば、今はそういう状況には残念ながらなっていません。



武器を持ち続けるコストやリスク、そこにかける資源や労力の無駄を考えると、

戦争や紛争を起こす原因を分析して、未然に防ぐ方にお金を使った方がいいのではと思いますが、いかがでしょうか。


軍事費の増強を是としている訳ではありません。今、世界中で気候変動による災害等が紛争の原因にもなっています。

異常気象への対策をやることによって、世界の紛争を未然に防げる可能性がこれまで以上に高まっていると思います。そこは将来の紛争の予防や平和構築に向けて大切な視点だと思っています。

しかし、紛争が起こるのは貧しい国ですので、そういう国で環境に予算を振り分けられるか、ということも含めて考えなければいけません。先進国は、途上国との関係でどのように対応するかということについても、国連の中で議論をしなければいけないと思います。



読者のみなさんにメッセージをいただけますでしょうか。

今日は久しぶりに気候変動の問題をこうやって正面からお話しする機会をいただいて、本当に嬉しかったですし、力も湧いてきました。皆さんのような方がいらっしゃることが希望だと思いますので、気候変動に向き合ってきた者として、この先もやり続けたいと思います。

その一つの成果として、気候非常事態宣言を早く国会で決議できるよう、微力ですが努力していきたいと思います。

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