自動フォークリフト開発は期待と疑問がたくさん
国際物流総合展で見た自動フォークリフト
東京ビッグサイトで開催された国際物流総合展へ足を運んだ。
物流効率化において自動化は不可欠な技術であることからフォークリフトの自動化の動向は注目しており、どれくらいのレベルまで自動運転が進化しているのかは関心が高く、期待をしていた。
会場では、大手メーカーが、4トントラックへの自動荷役やAGVやAMRなどの搬送ロボットへの積み降ろし作業も実演されていた。
一部企業で日本初の実運用を開始したという報道も目にしたところである。
あまりにも現実とかけ離れた作業条件
荷姿が揃っていて重量のばらつきもなく、整然とした床面で実演がされているが、実際の作業現場ではそうはいかない。
トラック荷役ではトラック荷台が重量の偏りにより傾斜がかかる場面もあるし、パレットのサイズ、材質、タイプの違いもある。
トラックの車格や形状、停車位置、輸送中のトラックの振動や衝撃などで積荷のずれも発生する。
トラックピットのレイアウトや旋回幅の確保、軒先での照度不足など条件はかなりばらつきがある。
整地されたA地点からB地点までを整理された条件下で行える技術の進歩は素晴らしいが、実際の作業現場では標準化されていない。
パレットの標準化の議論が進んできても荷姿の標準化までには至っていない。
モデルセンターの部分応用だけにとどまってほしくないのである。
それだけ大きな期待をしている。
チルト機能の必要性からみる検討不足
ベンチャー企業の自動フォークリフトの説明や実演も見させていただいた。
自動車の自動運転技術を応用し、「複数のリフトが止まることなく動き続ける」と説明を受けた。
質問してみた。
「これは整地で同一規格の樹脂パレットだけを搬送するものですか?」
「違います。あらゆるパレットを想定しています。」
「スチールパレットなどもですか?」
「はい」
「チルト機能がないのはなぜですか?」
「…」
「通常のフォークリフトが必要としている機能をつけない理由はなんでしょう?」
「想定している条件下では必要としていないからです。」
スチールパレット、メッシュパレットなどの素材の違いや変形パレットを取り扱うと荷ずれも起きるであろうが、具体的な対策は考慮はしていないようである。
現状では、人が動かすリフトの半分以下の生産性と思われるが、スピードを高めることのリスクは検討されていないのであろうか?
また、トラックの荷台の偏荷重や床面や路面の状況による傾きなどもあり、必ずしも水平ばかりではないはずである。
「人に変わって」というのであれば
「人に変わって自動フォークリフトが活躍します。」というのであれば、限られた条件だけで成立していることを素直に認めるべきではないか?
現場の作業者が、荷姿、パレットのタイプ、偏荷重、荷ずれ、路面状況、速度、旋回、加速、減速など様々なことに考慮して作業をしていることをもっと認識すべきではないだろうか?
より良い条件下の部分最適では、省人化はもとより効率化も図れない。
開発過渡期であることは差し引いても、作業現場の安全と貨物に対する作業品質、作業効率を高める生産性を追求する姿勢は必要である。
課題を洗い出してさらに研究を重ねている大手と部分的な機能をアピールするベンチャーの差を強く感じてしまった。
物流業界の人材不足は深刻化している。
この先でベテランリフトマンと呼ばれる方々は一気に減少してくるであろう。今ある大・中・小の様々な物流倉庫、物流センターにおいて自動運転によるフォークリフトの活躍が当たり前になる日を楽しみにしている。
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