日常から物流を学ぶ〜寿司屋で学ぶトヨタ生産方式①「自動化」
はじめに
「物流」は、日常的なことからイメージして理解を深めると良いとお伝えしてきました。
今回は食事の場面から考えてみます。
私は、寿司が大好きです。よく回転寿司に食べにいきます。
そこで、寿司を題材にしてトヨタ生産方式の「自動化」と「ジャスト・イン・タイム(JIT)」について簡単に説明をしていきます。
物流業界では『JIT物流』とい言葉が多く聞かれるかと思います。
しかし、生産工場に関わる物流に触れていないと理解しづらい部分もあると思います。
私たちの日常の生活では、トヨタ生産方式を応用した事例が多くありますので、そこからトヨタ生産方式の概念と具体例を理解することができます。
2回に分けて、今回は「自働化」についてです。
トヨタ生産方式の2つの考え方
トヨタ生産方式とは
「異常が発生したら機械が直ちに停止して、不良品を作らない」という自働化の考え方と、
「必要なものだけを流れるように停滞なく生産する」考え方であるジャスト・イン・タイムの2つの考え方が柱になっています。
物流業界では「JIT物流」という言葉が、身近だと思います。
「自働化」
人がこだわりを持ってやってきた匠などの「手作業」をベースに、生産ラインをつくり込んでいくことで作業を簡単にしていきます。
誰がやっても同じ水準の作業になるようにした上で、さらに改善を繰り返し、実際の生産工程に落とし込んでいきます。
それにより設備は簡単な仕組みで安く、変動に対応できるシンプルでフレキシブルなラインに進化していきます。
寿司屋のタイプ
まず寿司屋には、
老舗のカウンター越しの寿司
握られた寿司が回る回転寿司
職人がみえるハイブリットな回転寿司
完全オーダー性の回転寿司?
寿司は名職人の手仕事を味わうものと、機械・設備で効率的にリーズナブルに味わえるものがあり、それぞれに付加価値があります。
回転寿司屋の工夫
回転寿司の食感の変化
以前の回転寿司のシャリの食感は、シャリが押し固められていましたが、
現在では、口に入れた時に飯粒がほどける食感を楽しむことができるようになってきました。
これは、改善により寿司職人の握る動作「小手返し」などをの技術を設備に移植していくことで実現されてきたことによります。
誰がやっても同じレベルのものが出来上がるように工夫をし続けています。
名職人の勘・コツ・手加減などを知恵や工夫によって改善し続けてきた結果です。
回転レーンの動き
レーンに乗って、寿司皿が回ってきます。または、お客様と裏の厨房をつなぐシャトル便もあります。
寿司皿の配送という仕組みで渋滞や停滞が起きれば自動で動きを止めて知らせる仕組みがあります。
これにより、以前は多くみられた寿司皿に後ろの寿司皿が乗っかるなどという光景は見なくなりました。
また、滞留時間が長くて、品質に影響が出る皿は、RFIDなどにより、一定時間で自動回収される仕組みがあります。
回転寿司のフレキシブルな対応
営業中の時間帯には、お客様が集中する時間と閑散とした暇な時間があります。
フル設備でフルの人員体制では効率的ではありません。
お客様の賑わう時間に合わせて
「少ない時間帯はレーンを縮小して稼働する設備や人員を縮小する。」
など変動に合わせてタイムリーにフレキシブルに生産ラインを変動しています。
物流での活かし方
トヨタ生産方式の「自動化」というと
生産ラインの機会・設備をイメージして、物流とはそんなに関係ないなと思いがちですが、そうではありません。
物流の仕事は、「しくみ」づくりとその運用だと思っています。
物流現場の培ってきた知恵を生かして工夫を加えて、それを「しくみ」として仕事につなげます。
「しくみ化」する事で、サプライチェーン上にある物流拠点機能が正常に機能する事になります。
物流センターは人✖️設備✖️システム
受入、仕分け、保管、集荷、梱包、出荷など人が行ってきた手作業をベースにソーターやピッカー、自動搬送機などに活かしています。
検数作業がシステム照合機能になるなど、人によるチェックが、システム化されて誤格納、誤出荷などといった、人によって起きていたヒューマンエラーをシステムと設備によって、未然防止につなげています。
このシステムや設備機能の元となっているものは作業者の手作業であり、ノウハウを活かして開発されています。
データ化されているものはシステム照合やセンサーである程度のエラーを防ぐことができますが、データー化できていないものは、人の判断が重要になります。
物流センターでの「自働化」の活用
物流センターでは、人、システム、設備、などで連携して成り立っています。その上で、重要なことがあります。
異常検知して、止める機能は「人」が行うのです。
作業者全員が「異常」を知る。(いつもと違う=異常)
「異常」を感じた、見つけたら、作業を「止め」、判断ができる人を「呼び」、判断できる人が来るまで「待つ」という「しくみ」をルールとして、全員に周知し、迷わず行動ができるようにする。
これにより全員がセンサーになり、「異常」を検知し、自動で止まり、作業不具合を流さない「しくみ」が出来上がります。
また、システム化されているから大丈夫と考えてはいけません。
エラーチェック機能が正しく働くか?センサーが汚れて誤検出しないか?
この作業前のチェックを確実に人が行うことで、「道具」が正しく働くということを忘れてはいけません。
「自動化」の考え方を理解して活用することで、ミスや事故のない物流センターになってきます。
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