![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/81306751/rectangle_large_type_2_e428e64b8bc6ceb99e1d0932b94aeb81.png?width=1200)
故郷〜女子の生き様〜
「とうとう、この街から私は追い出されるのだ」と、勝手に思った。父が亡くなり、社宅に住めなくなった私たち家族は、都会から田舎に引っ越すことになった。
友達がお別れ会をしてくれた。しかし、私の中では、この子たちと2度と会うことはないだろうなと感じていた。
恋人でも友人でも、トカゲの尻尾切りのように、縁がばちんと切れる瞬間が見えるときがある。そこまでの関係だったなと思うことが何回もあった。
私は誰も友達のいない土地で、ひとりぼっちになった。
そこで、いろいろな職につき、自分なりに精一杯働いた。
そんな中、東日本大震災が起きる。
見覚えのある風景が激しく揺れるニュースの映像を見た。
ニュースで死者の情報が発表された。見るかどうか、迷ったが、見た。
そこには私が考えつく、友人、知人の名前はなかった。ホッとした。しかし、現実に亡くなった方はたくさんいるので、喜んでいいことなのかわからなかった。
SNSで友達を探した。そして、見つけた。友達は大震災のさなか、子どもを産んでいた。なんだか、それが嬉しかった。
何一ついいことなんてなかったと思った故郷だったが、遠く離れてみると、いいところもあったんだなと思えるようになった。
どんなところに移り住もうと、私の故郷が変わることはないのだなと思った。
クリスマスにみんなでケーキを作って、クラッカーを鳴らしすぎて、火薬くさくなったケーキを残さず食べた思い出とか、友達がいない私をお家に呼んで手話を教えてくれた友達とか、何気ない毎日にいい思い出がいっぱい詰まっていた。
現在、コロナ禍でその何気ない日常がおくれなくなっている。そのような子どもたちは「思い出不足」ということが起きていると聞く。
非常事態を知って、私は「幸せな子ども」だったんだなと思った。
早くコロナが収束して、何気ない日常を取り戻し、宝物のような思い出をたくさん作ってほしいと思う。
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/81306688/picture_pc_e531e72ffeb0a4feb4c309ad99d9d940.png?width=1200)
↓こちらでも記事を書いています。興味のある方は読んでみてください。
この記事が参加している募集
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?