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【創作百物語】 一月十日のシェヘラザード 第三夜目『炎猿』


『炎猿』 (くだんを喚ぶまで残り九十七夜) 


 手記

「赤く燃え上がる猿がいる」

 その何かを最初に発見したのは、市内に住む小学生グループだったそうだ。その小学生グループは5名の人物を中心としており、多少の増減があるものの、発見時は4名であったという。
 そのグループ内でも中心人物となる少年を、仮にKくん(8)とする。このKくんたち4名は、その日も近くのN公園でそれぞれ持ち寄った携帯ゲーム機で通信対戦を楽しんでいた。
 途中、Kくんは早々に敗北し、その試合から離脱する。
 彼らが公園でゲームをしていた場所を、おおよそ公園内の中央にあるベンチだとすると、Kくんはそこから南の方向へ歩きはじめた。

 その時、何か目的があって移動したわけではないが、何かに呼び寄せられるように動いていたと、Kくんは焼死する三日前に語っている。
 
 歩道に沿って歩いていると、やがていくつかの木が見えてくる。(後に、現地で私が数えたものだが、南西の出入り口付近には約38本の広葉樹が植えられていた。その内の3本が、完全に燃焼しており、いまだに『K E E P O U T』の黄色のテープで、近づけないようになっている。)
 
 話を戻す。Kくんはその時、一際目立つ木を見つけたと言っていた。それが燃焼した木のいずれかを指していた可能性はあるが、三本の木に、何かを判別できるような特徴的な部分はなかった。(完全に燃焼しており、判断がつかない状態でもあった)

「ダルマだ」

 太い枝の上に留まる炎の塊を見てKくんはそう口にしたそうだ。その時、その生物は体を丸め、最初、自身の頭を内側にしまこんでいた。だから、最初Kくんは「燃える(ように見える)ダルマが木の枝に引っ掛かっている」と思ったらしい。その生物は、体を回すように反転させて、こちらを見た。目は二つ。顔も、猿そのものであるが燃えている。その猿の瞳孔は吸い込まれるほど丸く、太陽のようであったそうだ。

「…おん そばき ぬえ はっしゅう…」

 猿はそう言った。(Kくんに何度も確認したが、ここは曖昧で何を言っていたかはわからなかった)

 Kくんはそこで意識を失い、目覚めた時には病院であったそうだ。
 
 三日後、Kくんは自宅に火をつけ一家全員死亡。玄関付近で火をつける様子を、近所に住むYさん(29)さんが目撃している。

 さらに、二日後、私は炎に包まれた少年が木に留まるのを公園内で発見。

 

今に至る。


『おやすみ』

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