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【成瀬は天下を取りにいく】この本を本屋大賞受賞前に読んでいたのなら、私は何を感じていたのだろう。

読んでいてずっと感じていたのが、構成が「ブギーポップは笑わない」に似ているなあって事だった。
深い意味はない。
ただ、一つの事象に対して多角的な面から表現するスタイルが、私は結構好きなのだ。
それが今回は「成瀬あかり」だったって話。

もう一つ思ったのが、「スキップとローファー」の主人公岩倉美津未と成瀬が何か似てるなあって事だった。
いや、実際はあまり似てはいないのだが、共通点がある。

"青春を無駄にしていない"ってところ。

私は挑戦する前から「どうせ無理だろう」と諦めて機を逃す事はできるだけ避けたいと常日頃から考えている。
例えば、「今ダッシュしたら電車に間に合うんじゃないか」「走れ俺」「周りの目なんて気にするな」「絶対に間に合う」「でもギリギリ間に合わなくて、改札に着いた瞬間電車のドアが閉まったら恥ずかしくない?」「その時どんな顔をしたら良いの?」「次の電車で良くない」「駄目だ、間に合う。」「走れ俺」こんなシチュエーションの時、私は出来るだけダッシュする。
いや、たまにはやっぱり間に合わなかった時の周囲の視線が気になって走らない時もある。

最近気付き出した。

「挑戦しろ!」と心の中で叫んでいる自分の声は、公序良俗に反しない限り、それは正義だ。
その声に従うべきだと最近気付いた。

そう言う意味で成瀬あかりが羨ましい。

私は中高生の時に何一つ自分の心の声に従わなかった。
(そんな事はないか。ただそれをここで語るのは止めておこう)
あまり心の声には従わなかった。

お陰で、成瀬あかりが体験していた様な、青春時代に体験出来ていたかもしれない貴重な経験を不意にしたように思える。
そう言う意味では島崎みゆきは、成瀬あかり史を見届けたいとの心の声に従ったお陰で、貴重な友人と貴重な体験を手に入れた。

私は何かを成し遂げたかなあと振り返る。
特に無い…事もなかった。
一つあった。
全国高等学校クイズ選手権の予選に参加した。
親に黙って参加した。
何故か結構○×クイズで正解してしまい、"このまま正解し続けたらテレビに出てしまうかも"とビビって途中でわざと不正解を選び会場を後にした。

結局この経験も今となっては良い思い出だ。

私は成瀬あかりが羨ましい。
けれども決して成瀬あかりと同じ行動はとれないだろう。
ただ、心の声に従って行動を起こしていれば、きっと彼女達と同じ様な想い出をもっと手に入れられたはずだった。

だから何?と言う話でもなく、ただ青春の時間は大事にしておきたいなあと思っただけの話。

ところで、私はこの作品を本屋大賞受賞後に知った。
受賞前にこの本を手に取った人達が正直羨ましい。
私は本屋大賞を受賞した本(=素晴らしい本)と言うレッテルが貼られた状態の成瀬あかりしか知らない。

例えば、私の目の前に本屋大賞受賞前の成瀬あかりが現れたとしたら、私は彼女に対してどの様に接するのだろう。
色眼鏡を通さずに、ありのままの成瀬あかりを見ることが出来るのだろうか。

私の隣の人物はひょっとしたら"成瀬あかり"かもしれない。何だろう。"青春の1ページ"は或いはすぐ隣に、けれどもこちらから近づかなければ存在にすら気付かない、そんな儚げな物なのかなあと、この本を読み終えて、私はぼんやりと考えていた。







(蛇足)
某男子高校生に対して、俺達の成瀬あかりに近づくんじゃないと軽い嫉妬を覚えたのは私だけだろうか。





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