見出し画像

【ウマ娘 プリティーダービー 新時代の扉】トウカイテイオーの呪縛からの解放

※レース結果には触れていませんが、キャラの掘り下げはしています。ご注意を。


この映画を見終えたあと、感情の持って行き場に困った。
実を言うとあまりこの映画に期待していなかったからだ。

何故か?

以前私はウマ娘3期を見終えたあとにその感想をnoteに書いた。
その内容を一言で言うならば「良かったけど、2回は見ないかな」と言う感じの感想だった。

「新時代の扉」も、その延長線上の作品だと思い込んでいた。

しかし、あまり期待していなかった「ウマ娘 プリティーダービー 新時代の扉」を何故見に行ったのか。

単純な話、ウマ娘が好きだからだ。
そして、私自身がウマ娘2期の幻影に囚われていたからだ。

「今回こそ、ウマ娘2期を超えてくるんじゃないか」

ウマ娘2期はアニメ史に残る大傑作だと私は思っている。

そして、ウマ娘コンテンツ制作者は、そんなウマ娘2期を何とか超えようと日々ウマ娘コンテンツの為に力を注いでいるはずだ。

そう。
「ウマ娘2期」は、ウマ娘コンテンツにおける評価の基準になっていると思っている。
”ウマ娘2期以上か。それ以下か”

もうそれは「トウカイテイオーの呪縛」と言うべきか。

そんな最強のウマ娘2期を打ち倒すため、今回はジャングルポケットが挑んできた。

私は学生時代に少しだけ競馬で遊んでいた。
丁度ナリタブライアンが3冠を取り終え、マヤノトップガンと泥試合を展開していたころだ。
しかし、本作の主人公であるジャングルポケットが活躍していた頃は既に競馬は止めていた。
ジャングルポケットやアグネスタキオン、マンハッタンカフェは名前しか知らない存在だった。
(ちなみに、私は最強のサラブレッドはシンボリルドルフだと思っている。そんな世代だ。)

つまり、ジャングルポケットに特に何の愛着もなく、また成績等の情報も全く知らずに本作を見に行った。
知っていたのは、テイエムオペラオーがクソ強かったってことぐらい。(ウマ娘RTTTは見ております)

そして衝撃を受けた。

今まで見てきたウマ娘と全く違うウマ娘がそこにあった。
語弊を恐れず言うと、可愛くない。
可愛さで勝負していない。
非常に良い意味で芸術の方向に演出の比重が置かれていた。

監督が別の何かに影響を受け、その要素を取り込んできた事は明らかだ。
圧巻だったのがアグネスタキオンだった。
彼女の存在全てが今までのウマ娘の世界線から超越してきた。

見た目、台詞、演出。
彼女のベクトルの先が可愛いではない。
言うなれば”異様”。
けれども、その存在感はしっかりウマ娘なのだ。

そしてジャングルポケット。
彼女も可愛いとは別の存在だ。
応援したくなるような存在でも無かった。
「最強、最強」と言う姿が少し滑稽だったから。
どう見てもアグネスタキオンの方が強い。
それを認めようとせず、敢えてそこから目を逸らし「自分が最強だ」と言い張る姿は若干痛々しかった。
(トウカイテイオーの無敗の三冠ウマ娘は十分に可能性があったと思うけど、ジャングルポケットはおそらく何度走ってもアグネスタキオンには勝てないんじゃないだろうか・・・)
けれども熱い。
純粋に熱い。
台詞の詳細は忘れてしまったが、「私たちの分まで頑張って走って」と言う少し押し付けがましい期待に対して、彼女は笑顔で「任せといて下さい」と言った。
この一言で彼女を認めてしまった。
昨今、「私は私の為に走る」的な考えも王道的になりつつあるなか、様々な人の想いを背負ってそれを重荷にすることなく、純粋に力に変えていく姿に心を打たれた。

そして、アグネスタキオンの全てが強烈で、これに挑もうとしたジャングルポケットの苦悩が私の脳裏に鮮明に刻まれ(あんなヤツにどうやったら勝てるんだ)、この苦悩の表現が見事だった。

尚且つアグネスタキオンに至っては「怪我さえなければ」とのサラブレッドの宿命のような枕詞に最も相応しい馬であったのではなかったかとの夢を抱かせてくれた素晴らしい描かれ方だった。

実はこの映画を見ている最中、私はずっと涙が流れていた。
嗚咽とは少し違う。
何故涙が流れてくるのかいまいちよく分からなかったのだが、視聴時間の半分ぐらいは何故か涙が流れていた。
感涙ではないと思う。
あの涙は何だったのだろう。

それは、映画を見ている最中に常に感じていた「トウカイテイオーの呪縛」からの解放を私が感じ取っていたからではなかったか。

ジャングルポケットやアグネスタキオン達が躍動し、今まさにウマ娘2期の呪縛から解き放たれようとしている「新時代の扉」の姿をリアルタイムで目の当たりにした、それは、そんな私の驚きと感嘆の涙だったのかもしれない。





(蛇足)
4DXで見た。
お値段3,000円でしたが、ぐわんぐわん動く座席は一つのアトラクションとしてみたら面白かったです。


この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?