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悲しき浪人悲譚


この話は、私小説である。また、当時その日に書いたものである。
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夢の中にいた。くさい言い回しかもしれないし、使い古された言葉でもあるかもおしれないが、「甘酸っぱい」夢の中に。
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私はリアリストだ。「もしも」、や「~していなかったら」なんて言葉が大嫌いだ。そしてそういった言葉遣いを多用する人種も。ーーーーーーーーー「なんであの時受かった私立大学にいかなかったの?いい大学じゃない。」
「もしまた落ちたらどうするの?」
こういった言葉は私の耳を劈く。私の中の全細菌、寄生虫、ウイルスまでもが大暴れする。
すべて流れていった過去なのに。すべて私の人生なのに。
今日も発狂する。体が震え、負のオーラが周りに満ちていくのを実感する。またそれを母へぶつける。

悲愛の明石 須磨で亡霊となりたかった。

地獄の四月。私はまだ、一握りの希望を握っていた。この世で一番はかないものであるとも知らず。

運命かなんてどうでもよかった。ただただ、ただただ苦しかった。今思い出すだけでも嗚咽を伴う。木を見ただけで嘔吐したサルトルと似た感情になれたいたのだろうか。
人は失恋やさみしさに吐き気を伴う。それは空腹時に吐き気を伴うように、自分自身が空っぽであることを痛いほど認識するからである。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー今際の日を過ごした。思いつくままに、行先も考えないままに、電車に乗り、ただ西へ向かった。途中で瀬戸大橋を高速バスでわたることが目的となる旅。こんなたびもあっていいじゃないか。その帰り須磨に巡り合った。というより須磨とは前から会っていた。光源氏を読んでいた私は須磨という単語に深く精通していた。しかしそれはふと電車の駅としてあらわれた。
この須磨は光源氏が配流された場所である。私も世間から配流された身。運命を感じずにはいられなかった。----------------------------------------------------------------------夜の海、二人で海辺を歩いた。海に落とすふりなんかもした。いやだ。もう書きたくない。。

その日は終わる。

返信の遅いラインを待つ。相手はもう大学生。仕方ない。ああ須磨で亡霊になってしまえばよかった。
この世界から宙に浮いた僕は「死」の意味を探した。
今、社会的に私は死んでいる。
人は死を繰り返し、死を消費する。僕は1年間でその死を一度消費した。



僕は恵まれている。

世界を見渡せば自分より窮した生活、厳しい家庭環境に身を置いている人は何人も存在する。それなのに、自分は自分が一番悲劇の渦中にいると錯覚する。そんなめでたい存在が僕だ。それを理解はしてもなお思う。須磨で死んでおきたかった。

自分の哲学  合理化

その日は終わりまた地獄の日々が始まる。Lineを待つ。でも来ない。勉強は手につかない。集中したいのに孤独が襲う。Lineを見る。返信は来ていない。世界が無味に感じる。ああ、須磨で死んでおけばよかった。
0時30分。須磨でしんでおきたかった。そう私の日記には殴り書きがなされてある。
この時期、自分は自分の死をしようと哲学をしていた。今になればばかばかしいが当時の私にとっては大マジ。本当に自分の死を正当化しようとしていた。具体的方法はとらないまま。脳内では死んでいた。こんな時期もあった。生きているのは自分、苦しんでいるのは自分、未来にある希望よりも今の絶亡の方が大きい。そう信じていた。希望に生きる現在の私はそんな過去の自分からできている。不思議だ。とても。外国に逃げてしまえばいい。そんな意見もある。しかしそれはただの空論。絶亡した人間は何もできない。絶望は周りを真っ暗にする。世界は決して開かれない。ただ時のみが解決をする。

絶望の恋。

その人のことを考えると、胸が苦しくなる。左胸が締め付けられる。結婚して2人で過ごす、のがどんなにうらやましいか。想像するだけで、胸が張り裂けそうになる。それと裏腹に顔をのぞかせるどす黒い暗黒の未来。視界に入るデスクライトと机上の物が自分に暗い未来を告げる。

奮起

夢はもういい。現実を見ろ。塾に3年も通わせてもらった。自分をころして勉強に逃げ続けた。僕の過去が告げる。やるしかないんだ。
僕は夢を告げる。あなたとの二人の死を。

現実

須磨で死にたかった。息がしづらい。つらい。もう死にたい。あなたに会いたい。そんな夜もあった。




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