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それでも投票に行きませんか?

下がり続ける自民党支持率・内閣支持率

 2021年の衆院議員選挙では森友学園、加計学園、桜を見る会、統一教会などに関わる問題が争点となっており、自民党と公明党による過半数を崩せるかと思われたが、465議席のうち自民党が261議席、公明党が32議席を獲得し、自民党だけでも過半数となる与党大勝利に終わった。
 このときに40%台であった自民党支持率が過去最低の14.6%まで落ち込んだ(*1)という報道があったが、依然30%台を維持している(*2)という報道もある。調査手法や聞き方によって数字にバラツキがあるものの、自民党支持率が下がっているのは間違いない。

 内閣支持率が16.9%まで落ちている(*3)ことを併せて考えると、自民党が増税を繰り返そうが、裏金を作りまくろうが、能登半島地震で苦しんでいる国民を前にして国会で笑い合ったり舟を漕いだりしていようが、何をしても自分達にとって利益になると考える集団が少なくとも14%~17%、批判するものの自民党に未練がある集団が少なくとも13%~16%存在し、その合計が30%台の自民党支持率になっているように思われる。

八王子市・京都市・前橋市の市長選挙結果から言えること

 上記14%~17%の自民党支持者と3%程度の公明党支持者は絶対に選挙に行くので、自公推薦候補者は最低でも17%の投票数を最初から確保していると推察されるが、自公推薦の候補者と立民/共産/国民/社民推薦の候補者の2名で争った前橋市長選挙の結果によれば、自公推薦候補者の得票数/当日有権者数が16.95%であったことから、この見立ては概ね当たっているのだろう。
となると、前橋市では絶対的自公支持・投票者の票しか得られず、自公推薦候補者の得票数/当日有権者数が13.63%の八王子市では絶対的自公支持・投票者の自公離れがあったことになる。

 京都市長選挙は立憲民主党と国民民主党が自公に相乗りしたため、八王子市長選挙や前橋市長選挙と比較することができないが、自公/立民/国民推薦候補者の得票数/当日有権者数が15.59%であり、前橋市自公推薦候補者の16.95%よりも低いことから、立憲民主党と国民民主党の相乗りによる得票増は殆ど無く、立憲民主党支持者や国民民主党支持者ですら自公/立民/国民推薦候補者に投票しなかったのではないかと推察される。

選挙結果

 投票率は相変わらず低迷しており、八王子市長選挙が38.66%、京都市長選挙が41.67%前橋市長選挙が39.39%であった。2021年衆議院選挙と比較すると。八王子市は約18%、京都市は約13%、前橋市は約14%の有権者が投票しなかったようである。

 連日の裏金問題報道に嫌気が差したのかもしれないし、裏金問題と市政は別として市長選に関心がなかったのかもしれない。特に京都市においては、日本維新の会が擁立した候補が政治資金パーティー疑惑で脱落し、反維新及び反共産党を旗印に立憲民主党と国民民主党が自公に相乗りしたため投票する気が失せたのかもしれない。

 絶対的自公支持・投票者による確実得票があるため低投票率で対立候補が多ければ自公推薦候補者が当選する確率が高いことは言うまでもないが、今回の選挙では絶対的自公支持・投票者による確実得票は減ることがあっても増えることはない状況であった。
 次選候補者との得票差は八王子市が6,645票、京都市が16,251票であり、当日有権者数に対する比率は、八王子市が1.42%、京都市が1.43%である。数パーセントの有権者が反自公の意思表示するだけで選挙の結果は変わっていただろう。

 京都市の有権者には同情する。共産党が強い地域ではあるものの、私と同様に共産党に投票したことがない有権者も相当数いると思われる。裏金問題で自公に嫌気が差しているタイミングで自公か共産党かの選択を迫られた反共産党有権者の心中は察するに余りあり、敢えて棄権したかもしれない有権者の気持ちも理解できる。それだけに、立憲民主党及び国民民主党の政治姿勢には疑いを持たざるを得ない。

 選挙結果はともあれ、裏金問題に対する自民党の不誠実な対応が問われている最中の選挙であったからこそ、どの市長選挙においても高い投票率であって欲しかった。
 仮に60%以上の投票率でも自公推薦候補が当選したならば、裏金問題とは関係なく市政に相応しい人物が選ばれたと納得せざるを得ないが、60%以上の投票率で野党推薦候補が当選したならば、自公に猛省を促すことができただろう。少なくとも八王子市選出の荻生田氏の選挙後の発言や振る舞いで不愉快な思いをすることはなかっただろう。
 40%程度の投票率で自公推薦候補が当選した場合は、絶対的自公支持・投票者にしてやられたと思わざるを得ないのである。
 八王子市長選挙で自公の応援に回った小池都知事のスタンスも問われるべきだが、小池都知事の応援をもってしても自公推薦候補者の得票数/当日有権者数が自公支持率を下回ったことはせめてもの救いかもしれない。

投票に行かない人たちへ

 支持したい政党や候補者がいないことを理由に投票を棄権したりや白紙投票したりする人がいる。「投票率の低下や白紙投票による無効票数の増加が不支持という意思表示になる」としたり顔で言う人がいるが、決してそうは思わない。投票棄権や白紙投票は投票した人の意思決定に従うという意思表示でしかなく、選挙に勝ってしまえば政治家は投票率や無効票数など一顧だにしないと思われるからである。不祥事がありながら当選した政治家は「禊が済んだ」、「信託が得られた」と言い放ち、チャラになったと考える彼らが同じことを繰り返すのは言わずもがなである。

 日本維新の会は、党代表が「第2自民党」と称した通り、万博で自民党まがいの利権漁りに執心しているように見受けられ、立憲民主党や国民民主党が自公に相乗りしたりするなど、離合集散する野党には定見もなければ一貫性もない。そんな中で選挙に行こうと言われても誰に投票したらよいのか分からないというのが投票棄権している人たちの本音だろう。
 とは言え、裏金問題や統一教会問題はもとより森友学園問題以降、特に顕著となっている政治と行政の馴れ合い、保身のために忖度や超法規的措置を繰り返す反民主主義的行為などは、政治家については落選して「ただの人」になるリスクを負わせない限り、辞めさせることができない高級官僚については組織・人事改革を進めない限り、改めることはないと思われる。

 こんなことを言うと「誰になっても変わらない」としたり顔で言う人が必ず出てきて、「変わらない」のと「変えようとしない」のは違うという議論をする羽目になる。
 確かに綺麗事だけでは済まないし、政治家や高級官僚に群がってくる輩を上手く捌かなければならない中で、朱に染まれば赤くなることもあるだろう。ある程度は仕方がない。それでも理念、良識そして矜持を持っている人ならば一線を越えるのを踏み留まってくれるのではないだろうか。そう信じて、可能性がある人を見極め、育てていこうとしない限り、税金使いたい放題の世襲議員や古参議員、旧態依然で変えることを好まない高級官僚など、心得を忘れて勘違いが甚だしい輩がいつまでも居続けることになる。

 一朝一夕で解決されるものではなく混乱も生じるだろうが、子供の教育と同じだと思えば良い。あなたが先生、彼らが生徒で学級委員を選ぶとしたら、どんな生徒に学級委員長や会計担当を任せたいと思いますか? 抱負もなくただ学級委員長になりたいだけの子、失言を繰り返す子、お金にルーズな子、間違えを認めない子、謝罪できない子、謝罪した傍で薄笑いを浮かべる子などを選びますか?教育の一環として機会を与えることがあるとしても、仏の顔も三度までになるのでは?

 子供がいない人は、どんな人に上司になって貰いたいかを考えれば良い。邪心がある人、部下にやらせるばかりで自分は責任を取らない人、常に命令口調の人、外面が良くて内面が悪い人、上には優しく下には厳しい人、言行不一致の人、とかく長いものには巻かれる人など、顔を思い浮かべられる人が結構いるのでは?
 候補者の顔や振る舞いを見て、どんな質疑応答をしているのかを聞いてみれば、あなた自身の人生経験だけからでも自信を持って適性を判断できると思う。

 もちろん能力は必要であるが、東京大学卒・〇〇省出身などの経歴を見て安易に能力判断するのはいい加減止めて欲しい。学業だけでなく政治家としても優れた人がいると思われるが、すっとぼけた回答をしている裏金議員や記憶がおぼつかない二枚舌議員に成り下がるハズレもいるということは忘れないで欲しい。
 輝かしい学歴や経歴が良識に勝ることは無い。どんなに知能が優れていても良識が無ければ政治家に相応しくない。そのうえ政治理念も無ければ最悪である。「理念なき行動は凶器、行動なき理念は無価値」という本田宗一郎氏の言葉を挙げておく。

 こんな状況下で国民の80%以上が支持していない岸田内閣が何事もなかったかのように憲法改正を唱えている。憲法改正に反対ではないが、理念がなく、傲慢、不誠実、厚顔無恥、そして上流意識を持った人たちが、私利私欲で日本を変な方向に持って行きはしないか本当に心配である。

 候補者や政党の評価が難しく判断に迷うから投票に行かないという人もいるが、当面の選挙の争点は、保身や金儲けのために越えてはならない一線を自ら進んで越え、発覚しても権力を盾にすっとぼけたり揉み消したりするような政治家を残すかどうかでしかない。

投票所に行って投票するだけである。選挙に行かないことについて御託を並べるよりも時間が掛からない筈である。

次の選挙に向けて

 公職選挙法違反で辞職した柿沢未途前法務副大臣の補欠選挙が2024年4月28日に予定されており、最低支持率を更新し続けている岸田内閣の解散総選挙も遅かれ早かれやってくる。どのような考え方で次の選挙に臨むのかを別途整理しようと思っているが、田中眞紀子氏が仰る通りだと思われる。

2023年12月8日記者会見(*4)

世襲は政治資金を引き継がせてはダメ。世襲で出たかったら一回休むとか、選挙区を変えるとかすべき。世襲議員の中にも良い議員はいる。世襲でないから良いということもない。とにかく大事なのは本人の能力とやる気

■有権者が見極めるチャンスとなる立会演説会をやるべき。質問に答えられないような候補者はダメ。立会演説会で候補者も鍛えられる。民主主義の言論はどれだけ分かりやすく命がけで喋るかということ。答弁を差し控えると言うのならば、国会議員になるのを差し控えた方が良い。すっとぼけた言葉の使い方をする議員は辞めて貰いたい。

■主権在民たる国民が選挙に行きたがらなくなっている。自民党はけしからんが、野党がだらしないから自民党に投票するというのがダメ野党を育てるのは国民。それが自分のためになる。自民党は70数年やっているから外交、役人やお金の使い方、役所との付き合い方などにおいて色々なノウハウを持っているのに対し、野党は経験が無いから基本的なところでひっくり返される。やっぱり野党はダメ、やっぱり自民党ねというマインドを変えて、もっと野党にやらせる。潰れてももっとやらせて教える。野党を鍛えて第二政党を作りませんか

■良い政治、日本は凄いなと思われるためには、有権者が頑張らないとダメ

*1 自民支持、過去最低の14.6% 内閣支持は微増18.6%―時事世論調査:時事ドットコム (jiji.com)

*2 NHK世論調査 内閣支持率 政党支持率 毎月の最新情報 | NHK選挙WEB

*3 内閣支持16.9%、最低更新 不支持初の6割台 時事世論調査(時事通信) - Yahoo!ニュース

 *4 【ノーカット】田中眞紀子氏らが緊急会見「今こそ政治改革~政治とカネ」―― 政治ニュースライブ(日テレNEWS LIVE) (youtube.com)


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