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戦士の追悼

 2023年7月12日、東京都内マンションにてタレントのryuchellさんの訃報が入った。
彼は、沖縄出身で自分自身をLGBTQであることを公表し、自分だけでなく彼ら自身がこの世界で自由に生きられるように戦ってきた戦士でもある。
 そんな彼が7月12日に自殺したことが報道され、その翌日となった7月13日でさえもSNSやテレビで彼の訃報についての情報で埋め尽くされている。しかし、私は今回りゅうちぇるさんの死について自殺ではなく戦死であると考えているしそう表現していきたい。

 彼は、そもそも私が中学生の頃からテレビに出ており、同時期ブレイクしていたモデルのpecoさんの彼氏として多くのテレビに出ていた。当時は、はるな愛さんやミッツマングローブさんのようなオネエ系が活躍していたこともあってオネエ系などについてはまだ寛容的だった。しかし、オネエでもなく純粋にpecoちゃんという1人の女性を愛している男性が、化粧をしていたり服装もメンズというよりレディースといった方が正しい服装をしていたことや彼独特の世界線を作り上げられていることが彼の魅力として日本中に影響を与えていった。そして、最終的にpecoちゃんと結婚し、第一子の子供を産んだ。一見すると芸能人同士の結婚によるとても順風満帆に見えるストーリーだろう。しかし、そんな彼のいわゆる独特な世界線は独特であるがゆえにマイノリティすぎたのだ。(そんなマイノリティな人類のことを以下、マイナー人類と呼称する。)
 一例を挙げると、彼らの子供の名前をリンクという名前にしたりその名前をタトゥーを自分の身体に彫ったりなどマジョリティの人類には受け入れ難い行動を取っていた。そして、最後はあんなに愛し合っていたpecoちゃんと離婚してしまった。この行動も世間からは、理解され難い行動であった。
 しかし、これらの行動には彼のしっかりとした考えや理念があった。
・リンクという名前にもしっかりとした意味があるということ
・その名前を自分の体に彫ること
・pecoちゃんと離婚したこと
これらの行動には彼の中にある強い信念と考えがあった。それは、彼の中にあるジェンダーを自分の中で受け入れて、かつ、それを自分自身の影響力を使いあえて公表し、それによって他のジェンダーに苦しんでいる人たちに少しでも生きる希望をもって欲しいという考えだ。
 実際、彼の行動によって今この日本でさえもLGBTQに対して少しではあるが寛容的になってきた。
 そう。彼は、この日本の中にある大きな民意という敵を相手にたった1人で戦った戦士なのだ。
そして、それに対して「嫁と子供を捨てて自分勝手に動いてるやつ」とSNSで叩かれていたが、読者の諸君。気づかないだろうか。

 それらのSNSにおいてりゅうちぇるさんに対する誹謗中傷の言葉はたくさん書かれているにも関わらずpecoさんやその息子に対する誹謗中傷はほとんど見かけないのだ。しかし、りゅうちぇるさんが所属している事務所の役員を見るとpecoちゃんと2人になっている。
 そう。つまり、本当にりゅうちぇるさんはpecoちゃんと最高のパートナーを築き上げ新しい家族という形を作り上げるだけでなく、自分自身の戦いにその家族を巻き込まれないように戦い続けたのだ。これを戦士と言わずなんというのだろうか。
 しかし、そこでこれを読んでいるそこのあなた。りゅうちぇるさんという1人の戦士は少なくともこの日本の考え方を変えた。では、あなたはどうだろうか。

 正直、この日本がここまで歴史を紡いできたのはりゅうちぇるさんのようなマイナー人類として勇敢に戦った戦士たちのおかげだ。現在の日本があるのは彼らのような狂気の世界で戦い続けた戦士たちの屍の上に成り立っている。
 戦国時代であれば、織田信長は日本でいち早く戦場に鉄砲を取り入れて戦国最強と言われた武田軍に勝利し、そして、後に信長が残しそしてそれをさらに強化させた鉄砲隊によって豊臣秀吉はバテレン追放令を成功させ、日本を南蛮の植民地化から救った。幕末の時代であれば、初期の頃、井伊直弼が独断で動いたことによって江戸幕府に矛先が向かず井伊直弼自身に矛先が向いた。それによって、江戸幕府と討幕派の大戦争が起きず桜田門外ノ変という小さな損害で江戸幕府・日本を守った。その後の坂本龍馬や高杉晋作、木戸孝允や西郷隆盛など、多くの戦士の力によって明治維新が築き上げられた。これは、昭和の時代も同じだ。日本史上最高の総理大臣と謳われている田中角栄首相またマイナー人類の中の戦士と言えるだろう。
 しかし、彼らはいつだって大きな敵がいた。それは外からの敵である外国人でも核兵器やテロ組織でもない。日本人という身内なのだ。
 坂本龍馬は、あの薩長同盟の仲介を成し遂げる最中で仲間であり同士でもある土佐勤王党の人々の数多くが同じ土佐人によって処刑された。その中には、幼少の頃より親しかった武市瑞山や岡田以蔵などもいたと言う。その彼らの訃報にも耐え抜き戦いつづけたのが坂本龍馬だ。
 同じ時代であれば、木戸孝允は当時禁門の変によって逆賊扱いを受け、四国艦隊下関砲撃事件で大損害を受け、虫の息となった長州藩を救うために坂本龍馬の案である当時犬猿の仲であった薩摩藩と手を組むことに乗り、紛争した。その中、長州藩を救うために戦っている木戸孝允に対して、同胞の長州藩士は木戸孝允に対して、罵声を浴びせさらには夜中に石までも投げる始末にあったようだ。

 しかし、彼らはそんなとてつもなく強い逆境を乗り越え生き抜き、この国を守り続けてくれた。それでも、そんな彼らの敵であるはずの人々は何もせずただあぐらを描き、何も考えようとしない。そして、彼らが残した結果を持って、まるで自分が成し遂げたかのように語りだすのだ。

 そして、今の時代の戦士たちはどうだろうか。はっきり言おう。当時の彼らに比べれば正直かなり弱くなっていると私は思う。

 公務員や大企業の社員でもなく起業を選ぶ。youtuberをやる。などなど、これらも全てはっきり言ってマイナー人類だ。冷静に考えてみよう。確かに今の時代何が起きるかわからないが、それでも大企業の社員や公務員は安定・安泰なのは事実だ。なぜならこの国はどの組織が運営や行政を行っているのか。あなたの持っているその携帯のキャリアはどこか。あなたの乗っているその車はどこのものか。そう。国の運営は公務員で、現在あなたが持っている携帯のキャリアやあなたが乗っている車など全て現在、大企業と言われる企業が作り出したものだ。ベンチャーではない。若手起業家でもない。だから、まだまだ10年や20年レベルであれば公務員や大企業の社員は安泰だろう。それでもそんな理論を跳ね返すだけの度胸と覚悟を持った人がyoutuberや起業で成り上がってるのだ。そして、いつだってそんな彼らのような戦士が、世の中を変える原動力となるのだ。しかし、それは、いつでも戦死する可能性が潜んでいるもの。そして、そんな戦死を恐れて逃げる者や世の中を変える途中段階にも関わらず戦死してしまう者、戦いを投げ出す者などかなり弱くなってしまっているように感じる。

 戦士として戦うのか、マジョリティ側で身を潜め安全だが退屈に生きるのか。それを決めるのはあなただ。

 そして、その選択肢で戦死を選び、それでも家族を守りながらも戦い続けたりゅうちぇるさんを見習いたいと思うし、同じ戦士として誇りに思う。

 この記事をもって、りゅうちぇるさんへの栄誉を讃え、そして、ご冥福をお祈りします。


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