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倫理としての「ケア」とはなにかー「ケアの倫理と共感」感想

マイケル・スロート著、「ケアの倫理と共感」の感想です。

本書で一番重要だと思った点は、自立・正義・道徳といった大きな概念の中に共感とケアの概念を並び立てて説明したこと、そして、現代多くの人々の行動指針となっている「義務論」や「功利主義」よりも「ケア」が指針とするに相応しいものだと主張していることだろう。

義務論とはざっくり言うと「道徳」に沿って人は行動すべきというものということだが、道徳を重視すぎていて個人のニーズを満たすことができていない場合があるという。
 それが行き過ぎると「男は/女は〇〇すべきだ」とか「子供は〇〇のようにすべきだ」といったような言論につながりかねず、人への共感的な配慮を欠いた行動をすべきではないと筆者は主張する。

また、自由主義に対しても個人が蔑ろにされていると筆者は述べている。
 家族のことを愛しているならば家族の求めに対し、「この行動は自分の自由につながるか」と考えること自体が、共感的配慮が欠けており情のないことの表れだと主張する。

本を読み進める中で、自分がかなり義務論や自由主義に囚われていたのだと自覚することとなった。
 個人の自由や道徳的に正しい行動かどうかを重視するあまり、家族の要望をうまく聞けなかったことが多々あったように思う。
 本書の重要な点はいわゆる道徳や義務は人と人との関係の中で揺らぐものであるということで、その柔軟性を獲得することこそが共感への道なのだと感じた。

特に、誰かが自身の思う道徳を表現し自身の自由を広げようと思うと、犠牲になるのは立場の弱い人、女性・子供・障害者・高齢者になるだろう。私のような働いている男性こそが眼前の人に共感し、自身の信じる道徳や自身の自由にこだわりなく行動することが求められていると思う。


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